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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
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76『蔵の中』




藤野先輩から渡されたメモを手に、俺はユイとアリスを連れて屋敷の裏へ回った。

そして一軒家の如く立派な蔵の巨大な扉をぐっと押し開け……中をそっと覗いてみる


「カビくせぇ……」


「随分と埃っぽい建物ですね。私は入りたくないのですが」


もぐもぐとお茶菓子を頬張りつつユイはそっぽを向く。

ユイはお茶菓子を随分と気に入ったようだ。


ちなみにアリスは白金色の滴を周りに浮かせ、一足先に蔵の中へ入って行ってしまった。


「それにしてもこのお菓子、何故だかとても懐かしい気がしまふ」

「食いながら喋るな抱きしめたくなる」

「やめてくらはい」


そんなこんなで蔵の中へ入ってみると、そこは文字通り広い物置であった。


所狭しと並べられた木箱。ぎゅうぎゅうに何かが押し込まれた見上げるほどの棚。

辺りを支配する微妙なカビの匂いと乾燥した埃っぽい空気。

錆びついた刃物、古びた鎧のような何か。そして木箱の塔に座って手帳を読む女性。


蔵といっても、ただ広いだけの物置であることに変わりはないようだ


「……ん?」


「どうしたのですか?」


「いや、今一瞬女の人居たような……気のせいかな」


俺は辺りを見渡しながら言うが、ユイは不思議そうな顔をして首を傾げ


「どこに女性が居るというのです? ついに頭がおかしくなってしまったのですか」


ユイの言うとおり、蔵の中に女性の姿は無い。

おかしいな、確かに見えたんだが……


「そう、確かこの辺りに……」


俺は沢山の木箱が積まれた場所に目を向けると、そこには古びた一冊の手帳が。

そういや、一瞬見えた女性が読んでたのって……


手に取って見てみると、掠れてはいるが確かに『白銀庭調査記録書』と書いてある

……何だ? これ……






「どうして私たちが森で薪拾いなんかしなきゃならないのよっ!」


「……先輩に言ってよ」


アサギとノワールは屋敷の裏山に居た。


アサギは木々の隙間から差し込む日差しに目を細め、影を触手のように操り薪を拾っている。それに対しノワールは倒木に腰掛け、『薪』と書かれた紅い魔方陣の上に山のように積まれた薪を退屈そうに見つめていた。


「何か面白い物、ないかなぁ」


ふと、ノワールは倒木から生えている毒々しい色の茸に目を付けた。


「ねぇ、葱ちゃん。見て見て毒キノコ」

「葱ちゃんって呼ぶなぁ!」


ノワールは自らの頬をかすめた黒い何かを気にする素振りもなく、

怪しい色合いの茸を指でつんつんと突っついて好奇心に満ちた目を輝かせている。


『気安く触んじゃないよ』「!」


ふしゅう、と白い胞子が吹き出し、ノワールの指に絡む。


「わわ、喋った……何これ」


「何してんのよー?」


少し離れた所にいたアサギが声を掛ける。

するとその声を合図に毒茸は風船のように膨れ上がり、胞子と共に数本の腕を突き出し、

やがて異形の形を成した茸は困惑するノワールを強引に抱き寄せ……


……口のように裂けた空洞から、紫の煙を吹きつけた


「っ……!?」


アサギが対処する間もなくノワールの意識はフッと消え、茸の魔物はニタリと笑った。


『テストの借りを返しに来たよ。闇のお嬢ちゃん』


「……」


黒い刃を両手に持ち、水色の瞳で魔物を睨むアサギ。

その視線の先に佇む魔物はメキメキと萎んでいき、やがて見覚えのある女性へと姿を変えた。


薄い色合いの布に覆われた豊満な肢体。怪しく笑みを浮かべる女性の頭には欠けた茸帽子。




『忘れたとは言わせないよ……このマシュー様をなぁ!!』





「いや……誰よアンタ!?」






とりあえず俺は手帳を鞄に入れ、ユイと協力して頼まれた物を探すことにした

貰ったメモ用紙には


『暁先生の太刀鋏』

『おおきくなるくすりEX』

『惚れ薬 改』


……いやいやいや。突っ込みどころ多すぎるだろ。

細かい事を考えるのは止そう。きっとすぐ見つかるさ


「それらしい薬ならここにありますよ」


ユイが傍の棚から怪しいフラスコを二つ取り出して俺に差し出してきた。


桃色の液体が入った、ハート形のシールが貼ってあるものと、

見おぼえのある赤地に白い斑点がついたキノコのシールが貼ってあるフラスコだ。


……うん。まぁ十中八九それだな。

すぐそばに合ったのかよと突っ込みたくなる気持ちを抑え、俺は残りを探すことにした


「……ん?」


ふと、いくつかの木箱の陰に鋭い輝きが見えた。


ずっしりと重い木箱を押しのけ、蔵の奥へ入っていくと、不思議な形をした刀が一本。

無数のガラクタを貫くように突き刺さっている刀には鞘が無い。刀身が剥き出しだ。


それでも銀白色の刃は錆びることなく、埃っぽい空気の中で怪しく輝きを放っていた。


その形は刀というより……少し湾曲した剣のような、いうならば鋏の片割れのような……


「まさか……」


俺は傍の木箱を退かしてその近辺を探ってみた。

するとやはり見つけた剣とほぼ同じ造形の刃物が出てきた。太刀鋏ってやっぱりこれか


「何ですかその結滞な刃物は」


「多分暁先生の鋏だな。どうやってくっつけるんだこれ……」





やがて接合を諦めた俺はユイとアリスを連れて蔵を出た。

とりあえず頼まれた物は手に入ったし……次は何をすればいいのかな


屋敷に戻ると相変わらず怖いお兄さんたちが行き来しており、気さくに挨拶をしてくれる。

……ぶっちゃけ怖い。


俺は荷物を置いた和室に戻り、ほっと一息。

ユイは山へ行くと言って姿を消し、アリスは昼寝し始めた。


そんなこんなで俺は蔵から持ち出したものを並べてみる。

二本の刃物と、怪しい薬。アリスが持ち出した小さな鍵。それと……古びた手帳。



『白銀庭調査記録書』



俺は、そっと手帳を開いた


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