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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
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75『指令』


燦々と照りつける太陽の下、俺を含めた特殊科は何とも古風な田舎町に居た。


辺り一面に広がる自然の風景。広い田畑や昔ながらの瓦屋根の家。

舗装されていない道路。四方を囲む山々。頬を撫でる風が心地いい。


けたたましく鳴く蝉の声がなんとも言えない夏らしさを感じさせてくれる


「あっついわねー……何処よここ」


アサギは降り注ぐ日差しに目を細め、ぐったりと荷物に項垂れる。

へにょりと折れ曲がるアサギのアホ毛はどこか触角のようにも見える。


あのアホ毛を見ていると神経が通っているように見えてくるから不思議だ。


ちなみに俺はユイを抱っこしているのでまるで暑さを感じない。むしろ涼しいくらいだ。


「いやはや、こういった情景は心が安らぎますねぇ」


「色々……綺麗」


「……」


お洒落な日傘を差した暁先生、ノワール、スミレ先輩は穏やかに辺りを見渡している。

こっちは傍にいるだけでのほほんとした空気に包まれる。癒されるな……


『……』


そしてキャロルは何故か屋根付きベンチにちょこんと座ってフードを目深に被っていた。

アサギによると、キャロルはどうも光が苦手らしい。なので昼間はとても弱々しい。


とはいっても、祭のときはそうでもなかった気がするが……


そして夏合宿の主催者、我らが特殊科の三年生である藤野先輩はというと……


「ここまで来たはいいけど、ぶっちゃけだりぃな。あー行きたくねぇ」


「……」


ここまで連れてきておいてそれは無いだろう。

しかし藤野先輩は何かぼやきつつも道を歩いてゆく。


「ほらキャロルさん、行きますよ~」


暁先生がキャロルをおんぶし、アサギとノワールは荷物を手に俺の先を行く。

ユイは時折恥ずかしげに身を捩るが、降ろしてくれとは言わずにもぞもぞ動くばかりだ


冷たくて柔らかくて軽くて良い感じだ。夏場はユイを抱っこして過ごせば快適かもしれない







「うっし、着いたぞお前ら」


藤野先輩が足を止めたのは大きな門の前。

まるで自然公園の囲いのような、立派な門の横には果てしない壁がある。


……これ先輩の家の門なのか?

門の柱には、荒々しい字で『荒天組』と書かれている。


これは……まさかヤバい系の方々のお宅じゃありませんか?

しかし俺以外の皆は気にする素振りもなく辺りの様子を伺っている。


そして藤野先輩は門を蹴り開け、ずかずかと中へ踏み込んでいき……



「「お帰りなせぇやし! 若ッッ!!」」



門を潜った瞬間、俺を含めた皆は言葉を失った。

見渡す限りの広い庭。ずらりと並んで頭を下げる厳つい男性の群れ。


……なんだこれ


「出迎えはいらねぇって言っただろーが。桑原ァ!」

「申し訳ありません。組長が客人に無礼があってはならないと……」


藤野先輩はスーツを着た初老の男性に怒鳴りかかっている。


『皆、元気ィ? 出迎えご苦労様~』

「お帰りなせぇやし。お嬢」

「お嬢! お元気そうで何よりッス」


ふわふわと漂う静華さんは厳ついお兄さん方にひらひらと手を振っている。

ノワールとアサギは呆然と立ち尽くし、ユイは俺の後ろで様子を伺っていた


藤野先輩は何者なんだろうか。というより俺の予想は見事に的中したようだ



「言ってなかったが、うちは少し家族が多いが気にするなよ? いいか絶対だぞ」


「んな無茶な……」




それから数分美しい庭を進み、ようやくたどり着いたその場所は大きな屋敷だった。

俺の実家と比べてもなんら遜色のない……いやうちより立派な造りだ。


背の高い木や竹林に包まれたその場所はどこか風情がある。

微妙に潮の匂いを感じるのは俺だけだろうか……?


「ふぅん、中々大きいじゃない。まぁうちには遠く及ばないわね」


「探検したい……」


「うふふ、いつ見ても藤野君のお宅は立派ですねぇ」


ふふんと平らな胸を張るアサギときらきらと目を輝かせるノワール。

そして豊かな胸の前に両手を合わせて穏やかに微笑む暁先生。


なんとも対照的な……それでいて個性的な面子である。


「『……』」


スミレ先輩はキャロルと無言の会話を続けている。

そして藤野先輩はいつの間にか姿が見えなくなっていた




その後、何だかんだで案内された和室の中に荷物を纏め、皆はどこかへ行ってしまった。

特に何をしろとも伝えられていないので、皆は探検に行ってしまったのだろう。


暁先生は組長に挨拶をしてくると言っていたが……俺はどうすればいいんだろうか


ユイは怖いお兄さんに出された繊細なお茶菓子に夢中だ。


「おう杉原。暇してんな」


不意に和室の襖が開け放たれ、藤野先輩が顔を覗かせた。

その傍らに静華さんの姿は無く、その手には一枚のメモ用紙が握られている。


「他の奴等にもそれぞれ仕事を頼んだ。お前にはうちの蔵から探し物をしてきてくれ。

持ってくるものはこれに書いてある。蔵の場所は家の裏だ」


「……探し物……?」



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