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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 2編 【水姫祭】
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70『奴らと一緒』


ちりん、ちりんとベルの音が聞こえた。

透き通るその音はとても幽かで、それでいて確かな音であった。


どこかで聞いたような……そう、確か暁先生のベルだ


「暁が呼んでるわね」


アサギが辺りをきょろきょろと見渡しながら言った。

そしてキャロルはとてとてと路地裏の方へ歩いてゆく。


こいつら……


「何突っ立ってんのよ。置いてくわよ?」

『……』


アサギは冷たい目で俺を睨み、キャロルはちょいちょいと手招き。


「分かったよ。もうお前らには何も言わねぇよ」


俺はなんとなく自分がとても惨めに思えた。

ユイとは逸れっぱなしだし……財布は寂しくなっちゃったし……


それはそうとアサギの浴衣は良く似合っている。

アサギには何よりも黒い服が似合うと思うのは俺だけだろうか。


「な……何よ」


まぁあんまり見てると蹴られそうなので、俺はそっと目を逸らす。


「別に、何でもねぇよ」


「……」


すると何故かアサギは俺の方へスタスタと歩み寄り、じっと見つめ返してきた。


「お前こそなんだよ。あんまり見つめるなよ」


「この服、どう?」


「……はぁ?」


「似合うかどうかって聞いてんのよ!」


……いきなり何だっていうんだ。

ただ今現在、俺とアサギの距離25cm。下手したら吐息が掛るくらいに近い。


少し頬を赤らめ口をへの字に結んで俺をじっと見つめてくる大きな瞳に、俺は思わず身じろぎしてしまう。ぴろぴろと揺れ動くアホ毛がとても愛らしく思えた。


「……似合ってるよ。凄く可愛い」


俺が目線を逸らしつつそう言うと、アサギは何故か俺の腹を殴って路地裏の方へ振り返った。

流石にユイよりは腕力があるらしいが、俺にダメージは無い。加減してくれたんだろうか


「……ふん」



傍で一部始終を見ていたキャロルはまるで自分のことも褒めてくれと言わんばかりに両手を広げてアピールしている。話せないわけじゃないらしいがどうして喋ってくれないんだろうか。


とは言ってもキャロルの身長は俺の胸下くらいまでしかないのでとても撫でやすい。

この辺りはユイに近い物を感じる。そのせいかアサギよりも親しみやすい。


沢山ご馳走してあげたせいか、この祭りの間だけでかなり懐かれた気がする。


「よしよし……」

『♡』


フードの上から軽く撫でてやると、キャロルは小躍りして俺の腹にタックルをかましてくる。

そしてそのままぐりぐりと……ユイが居るときはこんなにアクティブじゃないんだがな。


薄い布製の服だからか、内側の感触が良く伝わってくる。とは言っても、伝わってくるのは少女特有の柔らかな感触では無く、金属質な固いものが幾重にも折り重なったような……そんな感じである。


さらにぎゅうぎゅうと遠慮なく抱きしめてくるため、鋭い何かが刺さって痛い。


キャロルは服の中に何を仕込んでいるんだろうか……


ちなみにアサギも何故かキャロルには突っかかったりしない。そわそわと見守るばかりだ。


「もう、いつまでやってんのよ」


アサギがやりきれない表情で俺の手を引く。右手にキャロル、左手にアサギで両手に花だ。

男としては嬉しいことだが、この場合は何故か不思議な気持ちが俺の胸に溢れていた。




「おや杉原君、両手に花で楽しそうですねぇ」


連れられるままにたどり着いた路地裏は混沌に包まれていた。


飾りを咥えて満足げな暁先生と、沢山の戦利品を抱えた先輩方。

傍らの建物の壁には黒い龍、局地的に渦巻く吹雪の中心には紅い眼が光っている


……なんだこれ。


「……貴方は何をしているのですか」


吹雪がゆっくりと俺の方へ近寄ってくる。聞きなれた甘い声が俺の心を抉る。


「お、俺は悪くないぞ。不可抗力だ! そもそもこれはこいつらが勝手に……」


『……』

「……ふんっ」


キャロルは寂しそうに俯き、アサギは拗ねたようにそっぽを向く。

そして吹雪は紅い眼を潤ませ俺を睨みつけている。



誰か、助けてくれ……



『グルル……』「!」


ふと、耳元で低い唸り声が聞こえた。

俺がバッと振り返ってみると、建物の壁にへばり付いていた黒龍が俺のすぐ傍まで来ていた。

鋭い牙が並んだ口から紅色の煙を漏らし、燃える様な朱色の瞳が俺を見つめている。


身じろぎする俺に構わずぐりぐりと鼻先を押し付けてくる龍。その様子はまるで甘えているような……自分のことも忘れないでほしいとアピールしているような……そんな気がする。


「せ、先生! こいつは……?」


「おやおや、杉原君ったらモテモテですね~」


ダメだこの人聞いてねぇ


「先輩ッ! 助けてくださいお願いします」


「帰りは乗せてってくれるらしいぜ。電車賃浮くな」

「……頑張って」


ダメか。ちくしょう……

先輩は二人そろってぐっと親指を立てている。




まさに四面楚歌。


俺の明日は……どっちだ


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