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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 2編 【水姫祭】
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62『白き帝と呼ばれし者』

レイニィタウン・中央広場。

水色のタイルと輝く噴水が目を引く、住民の憩いの場である中央広場の片隅、

圭一を除いた特殊科の面子は建物に寄りかかるようにして雨宿りをしていた


「アイツどこ行ったのよ……」


「逸れたにしても変だな。センセーが俺達から目を離すわけがない」


広場には相変わらず傘をさした住民が行き交っており、カラフルな傘の色合いが美しい。

しかし、いくら目を凝らして見ても圭一らしき人物は居ない


紅色の傘を持つものが一人も居ないことに対しては、誰もが気にも留めずにいた


「ひょっとしたら、神隠しに遭ったのかもしれませんね」


「……?」


「今の時刻は昼過ぎです。皆さんもお腹が空いてることでしょうし……どこかで昼食でも」


暁先生は懐中時計を取り出し、入れそうな店を探し始める。


「ちょっと待てよセンセー。杉原は――」


「大丈夫ですよ」


浩二の口に人差し指を当て、にっこりと微笑む暁先生。

全てを見透かすようなその表情はどこか余裕に満ちていた。


この時すでにアサギとノワール、そしてキャロルと静華は異質な気配を感じ始めていたが……

……あえて、口に出す者は居なかった。


「杉原君にはユイさんが付いてます。いざとなればあの子が何とかしてくれますよ。

それに『あの方』は悪戯好きなんです。杉原君を傷つけるような真似はしないでしょう」


穏やかな微笑みを浮かべつつ、暁先生は言う。

その言葉はどこか説得力に満ちていて……誰も言い返せるような空気ではなかった。


「……」


「さぁ! そうと決まればどこかで昼食を取りましょうか。

お祭りは陽が暮れた後ですし……街を散策するのもいいかもしれません」


ふと気が付くと、雨は弱まっていた。





「あそこか! やっと見つけたぞ」


濡れた路地の奥。曲がり角の向こうに紅い傘が見えた。

もうなんか慣れた俺は重い足を無理やり動かし通路を走る


結局荷物はユイが持ってくれることになったので体が軽い。

さっきと比べれば数倍マシだ。すでに全身がずぶ濡れだが気にしている暇はない


俺より数メートル先を風のように駆け抜けるユイのおかげで通路は凍り、

僅かではあるが走りやすくなっていた。


「……ッ!」


そして俺より早く曲がり角にたどり着いたユイは紅い眼で目標を見据え、

雨が凍って出来た吹雪を纏いつつ再び走る。


そして俺も角を曲がって直線的な通路の先を見る。

はるか遠くに揺れる紅い傘。少し先を行くユイ。


ここで俺は、少しばかり違和感を覚えた。


「(おかしい……どうして追いつけないんだ)」


俺はともかく、ユイの脚力で捕まえられないなんておかしい。

あの娘が角を曲がったのはほんの十数秒前のはずだ。


確かに、あの娘が魔物なら十秒あればかなりの距離を移動することが出来るだろう。

しかし狼の獣人であるユイが追いつけないというのは明らかにおかしい。


しかも、さっき見たときもこのくらいの距離だった。

これはつまり……あの娘と俺たちの距離が縮まっていないということなのかもしれない


「ユイ、待て!」

「!」


ギャギャギャギャッ! とユイは地面を削りつつも急停止。

渦巻く氷を纏いながらも俺の方を振り返り、スタスタと歩み寄ってきた


「どうしたのですか。早く追わないと見失ってしまいますよ」


「このままじゃ追いつけない。何か方法を考えないと……」


「もぅ、面倒はうんざりです。奴の動きを止めればいいんでしょう?」



そう言ったユイは小さな手を美しく濁った空に向け……



『――大いなる空よ。我に力を』



刹那、俺の視界は純白に染まった。



凄まじい轟音と肌を刺すような冷気が辺り一面を支配し、

透き通る街並みは白く塗りつぶされてゆく……


空は銀の雲に覆われ、降り注ぐ雨は凍りつき荒れ狂う吹雪と化し、

息つく暇もなく川は氷河に。そして建物は氷像となった。



吹き荒れる吹雪の中心には、しなやかな人影。

真っ赤な眼で空を仰ぎ、右手を高く空に掲げていた



―――


――




……ふと気が付くと、俺は辺り一面の銀世界に倒れていた。

体を包む冷たい雪が俺の体温を奪ってゆく。


柔らかい雪は冷たいはずなのに、どこか気持ちよかった


眼前に広がる空は真っ白。

何故だか、とても体がだるい。このまま、眠ってしまおうか……


「いつまで寝てるんですか?」


ふと、閉じかけた視界に見覚えのある幼い顔がひょっこりと現れた。


「……ユイ……?」


「ほら、起きてください。凍死しますよっ」


ユイは俺の体をぐいぐいと押し、雪のベッドから出るように促した。

よく見ると、その肩には切り傷が出来ていた。傷なんて無かったはずなのに……


そして、何とか半身を起こした俺の前にユイはぴっと小さな手を差し出してきた

その手には、キャロルから受け取ったあの紅色の玉がキラキラと輝いている


「それは……」


「私たちは奴に遊ばれていたんです。この球を媒介に……」


そう呟いたユイはふっと俺の背後を睨んだ。



俺が振り返って見てみると、そこには……





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