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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 2編 【水姫祭】
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59『水の街と夜の街』

――水の街レイニィタウン。そこは混沌の街より南に位置している不思議な街である


霧に包まれたその街では常にしとしと雨が降り注ぎ、

多数存在する川にはとても綺麗な水が湛えられている。


街の住民は傘を常備し、街に住まうテイマーも水系の使い魔を連れていることが多い。


雨季の豪雨を無事に乗り越え、大きな事故もなかった年のみ

レイニィタウンでは守り神である水姫を讃える祭りが開かれるという


水姫はかつて豪雨と共にこの地に舞い降り

全てを水底へ葬ったとされる伝説の魔物である


その力に魅了された一部の人間が彼女を祀り上げたところ

意外にも彼女は人間に興味を示し、その力を持って水害を退けるようになったという。



レイニィタウンの最奥に祀られている水姫は時折祠を抜け出し、街へ出る。

()()()彼女に出会ってしまった者は、『水』を奪われてしまうと言われている


奪われた者の末路を知る者は、いない。





――――というわけで、これからレイニィタウンに向かいます。

ここまでで何か質問はありますか?」


「いや……まず状況を説明してください」


ガタンゴトンと揺れる特別な列車の中。

暁先生は紙芝居方式で水姫とレイニィタウンについて説明してくれた


座席には俺とユイ、先輩方、アサギとノワール。暁先生。

……そして何故かキャロルという(らしい)少女が並んでいる。


「……何か質問でも?」


「いやいや。何でキャロル、さん……がいるんですか?」


呼び捨ててしまいそうになるのを我慢しつつ、俺は尋ねてみる。

キャロルというらしい少女はビクッと肩を震わせ、アサギに縋り付いた


どうやらアサギとは仲良いみたいだけど……


「アサギさんがどうしてもと言うので……」


「何よアンタ。気に入らないならそう言いなさいよ!

キャロルは私が連れて来たの。こんなにかわいいのに省くつもり? サイテー」


困ったように微笑む暁先生とは対照的に、アサギはキッと俺を睨みつけてきた。


「別に良いじゃありませんか。受け入れてあげたらどうです?」

「仲間外れ……可哀そう」


さらに魔物娘二人も俺に冷たい目線を向けている。

俺にどうしろっていうんだ。


ちなみに藤野先輩は眠り、スミレ先輩は我関せずと読書に勤しんでおり、

半透明な和服の女性、静華さんは尻尾(?)を揺らして外を眺めていた。


『……』


「……」


アサギの陰から俺を見つめる『少女』の瞳。

フードの下に光るその瞳は、何故だかとても気まずく思えた。




「おい! 水姫様がいないぞ」

「また祠から抜け出してしまわれたのか……今日は水姫祭だというのに」

「連絡を回せ! またミイラが出るぞ!」


叩きつけるような豪雨が降り注ぐ街の中。

怪物と呼ぶにふさわしい使い魔を連れたテイマーが数人、騒がしく駆け回っていた



~幽霊街・黒館~


「それで、わざわざ何の用だい? クラウス」


「とぼけるなファルシオ。お前は知っているはずだぞ」


幽霊街に佇む巨大な館の一室に、クラウスとファルシオは居た。

ファルシオは柊が淹れた紅茶を手にイスに腰掛け、

机を挟んだ反対側に座るクラウスの手には折れた銀のナイフが握られている


「この銀食器に刻まれた紋章……この館の物だろう」


「如何にも。確かにそのナイフは柊が愛用している物と見て間違いないだろうね」


ファルシオはナイフの破片を光に当て、ため息交じりに呟いた


「妖紀様の部屋にこれが落ちていた。どういうことか説明してもらおうか」


「説明しろと言われてもなぁ……僕にもさっぱりわからないよ。

ところでクラウス。久々の再会だし、少し勝負しないか?」


挑戦的な口調で呟いたファルシオのヘルムの隙間から、オレンジの光が覗く。



「いいだろう。手合せ願おうか」



~黒館・客室~


一方、蓮華と桜はそれなりに広い部屋の中に居た。

豪奢なカーテン、埃ひとつないカーペット。ふかふかの大きなベッドまである。

メイドである柊に案内され、この部屋で待ってるようにと伝えられた二人ではあるが、

特に出歩く気にもならず呆然と部屋で座り込んでいた。


「「……」」


外の景色はなんだったんだろうと言いたくなるような明るい室内。

窓の外に広がる淀んだ景色がより一層部屋の輝きを際立たせていた


二人の使い魔であるプラムとアルメリアは大きなベッドで飛び跳ねている


「私たち……どうなるんでしょうか」


「……さぁ」




~混沌の街・路地裏~




――クスクス。


幼い少女の嗤う声が、どこからか響く。

声と共に響く、コツコツと石畳を踏む音。


音も無く浮遊する巨大な影と共に、歩く人影。

怪しい冷気を吐き出すトンネルの前で、二つの影は動きを止めた



「行こう、でぃあぼろ……あの子の住処を壊さなきゃ」

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