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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章【夏休み】
65/114

57『遊戯』

~数時間後~



『何だ。もう終わりか? ほれ、しゃきっとせい』


「人間というものは非力な生き物なのですね」


「う……」


結局、俺は二匹の魔物におもちゃにされ……

数時間も経つ頃には最早動くことすらままならない状態になっていた。


強引に抱きしめられたり、抱きしめろと命令されたり

ひたすら撫でてくれと擦り寄ってきたり、甘噛み食らったり

何故か布団を引きずり出してきて物欲しそうな目で見つめられたりもしたが

それは全力で拒否しておいた。


そんなこんなで数時間。魔物と触れ合うのって……大変なんだな。

とりあえずは課題が終わったことに対して喜ぶべきなのかもしれないが……

何せ魔物の体力は無尽蔵と言ってもいいくらいだ。人とは比べ物にならない。


少し聞いてみると、ユイはあの箱に封じられていたため

力が10分の1未満にまで弱体化してしまっているのだという。

封印が解けた今でも弱体化した力は戻らず、肉体的な力は弱いらしい。


それでも狼の獣人である為、脚力やスタミナは計り知れない上に

そこらの魔物よりは遥かに強い。力が戻ったらどんな化け物になることやら……


満月の夜に見たあの姿こそが、ユイの本当の姿なのかもしれない。


未だ、謎だらけなのは確かである。


「終わったかしら?」


ふと、見計らったようなタイミングで母さんがひょこっと顔を覗かせた。


「私はまだ満足していませんよ」

『同じく。もっと愉しませてくれ』


「勘弁してくれ……」




~混沌の街~


常に人が溢れる大通りとは真逆の閑静な路地裏。

昼間でも薄暗くじめじめしたその場所を、桜、蓮華、クラウスの三人が歩いていた


その傍にはするする移動するプラムと、ひらひら漂うアルメリア。

そして建物と建物の間を這うように進む大薔薇が居た。


「先生の大薔薇って動けるんですね」


「……まぁな」


「せ、先生……あの、私たちはどこへ向かってるんですか……?」


ちなみに他の植物科の生徒たちは留守番である。

桜は状況が良く飲み込めないまま強引に引っ張ってこられたため

未だ、どこに何をしに向かうのかを知らないままでいた。


目的を知らないままでも行動できるというのは、桜の性格ゆえである


「幽霊街という街だ。そこを治める貴族に会いに行く」


「ゆうれ……貴族……!?」


桜は一気に不安げな表情になって俯いてしまう。

それからしばらく特に会話も無いまま三人は路地裏を進み……


やがて、より一層暗いトンネルに出くわした。

夏だというのに日差しは殆ど差し込まず、肌寒い。


トンネルの向こうから微かに聞こえる不気味な叫び声と

ひんやり冷たい空気と雰囲気に、桜は今にも泣きだしそうだ。


「あぅ……こ、怖いです。せんせぇ……」

「確かに……如何にもって感じだね」


「行くぞ」


クラウスはまるで気にも留めず、不気味なトンネルに足を踏み入れる。

べきべきと通路や建物の壁を破壊しつつ、大薔薇が続く。


「ま、待ってくださぁい……っ」


「行くしかないみたいだね……覚悟決めよう」


桜と蓮華は躊躇いながらもクラウスの後を追う。





その後しばらく談笑を楽しみ、気が付けば夕方になっていた。

俺は母さんからお菓子やユイが気に入ったらしい骨ガムをいくつか貰って

荷物をまとめ、帰る支度をし、


屋敷から出ると……母さんと地皇が見送りに来てくれた。

出迎えてくれた少女も居る。


「地皇様、アレを出してあげてくださいな」

『おうよ』


地皇の腰元から生える爬虫類じみた尻尾がうねり、

やがて鱗の隙間から不思議な植物がしゅるしゅると生えてきた。

手のひら大の葉っぱと、細い蔓。綺麗な白い花を咲かせている。


地皇は少し艶のある声と共に植物を引き抜き、俺に手渡してくれた。


「これって……」


「魔蛇太尾よ。本来は爬虫類型の魔物の尻尾に生える植物なの

課題で必要なんでしょう? 持っていきなさいな」


「そうか、ありがとう」



ふと気が付くと……母さんが真剣で、なおかつ少し悲しげな表情をしていた。



「……圭一。テイマーはとても危険な職業なのよ。

使い魔にしようとした魔物に襲われたり、使い魔ごと食べられたり

社会に出れば、危険な場所に出向く機会もたくさんあるわ……

……テイマーを目指すつもりなら、自分の命と使い魔を何よりも大事にしなさい」



「母さん……」


「私から言いたいことはそれだけよ。いつでも帰ってらっしゃい」




トン、と母さんが俺の背中を押し、俺は思わずよろけてしまう。

振り返ると、そこには……静かな林が広がっていた。


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