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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章【夏休み】
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53『お出かけ』


魔物がざわつく中、悠然とお茶を飲む女性。

輝かんばかりに美しかった薄紫の着物は、今や魔物の赤黒い血と肉片に塗れていた


するとどこからか雑巾と木桶を抱えた子供が駆けてきて、

放射状に飛び散った血をせっせと拭き始めた。


白い髪をリボンで束ねた齢10歳程度の少女である。

少女は血の染みた雑巾をぎゅうぎゅうと絞りつつ、女性に話しかける


『紫苑様っ お召し物は如何なさいますか?』


「大丈夫よ」


女性は優しく囁くように言うと、穏やかな微笑みと共に立ち上がり

汚れていない右手で少女の頬をぷにぷにと弄び始めた


『っ……』


「ふふ、かわいいわ」


紫苑と呼ばれた女性はひとしきり少女をぷにぷにすると、

満足したのか上機嫌で屋敷の廊下を歩いて行った。




~流星学園・666号室~




「何故急に山へ行こうなどと……」


「俺の実家は霊山って山の頂上にあるんだ。

そんなに高い山じゃないし、魔物がいっぱい住んでる山だからな……

課題は野生の魔物と遊ぶことだし……丁度いいだろ」


俺の実家は霊山という山にあるのだ。

霊山には魔力を持つ植物が沢山生えていて……降魔の森とよく似ている


昔、霊山には神様が住んでいると教えられたことがあるが

まぁ神様なんてのはそこらじゅうに居るもんだからな。スルーしよう


霊山は割と凶暴な魔物が多いし、人が住めるような場所ではないのだが

何故か俺の家は霊山の頂上にある。


理由は知らない。物心つく前には移住していたしな。

それに……俺がまだ子供だったころから魔物をよく見かけていたけど

襲われたりはしなかったし……親父は知らんが母さんは今も住んでるはずだ。


「えーと……一通りの道具と地図。護身用の武器は……必要ないな」


俺は必要な道具をバッグに詰め込み、上着を羽織る。

アリスをポケットに収め、水分食料OK。よし……大体こんなもんか


「さて……行くぞ」


「付き合わされるこっちにの身にもなってください。いい迷惑ですよ」


ユイは尻尾をパタパタさせながらドアに手を掛ける。

久しぶりの外出だから嬉しいのだろうか、ユイは時々犬っぽくて困る


口ではそっけない事言っておきながらも、ユイの体は正直だ。





「あーもしもしBBA? 夏休み入ったから後輩連れて帰るわ。

あ、それと魔物と触れ合う課題が出たからさ、その辺よろしく頼む」


『お線香用意しておいてねーっ』


《腹空かせて来いやクソガキ共が……ッ》


――ブツンッ


「……よし」


浩二はパタン、と携帯を閉じ、高い空を仰ぐ。



~流星学園・特殊科教室~


「……」


皆帰ってしまった教室の中。暁が教卓の傍に佇んでいた。

教室にはもちろん誰も居ない。


「……どうして皆さん帰ってしまうんですか……

確かに帰っていいとは言いましたけど、私夏休みは特にやることないんですよぅ……」


譫言のように呟く暁の傍には、いつの間にか柊が佇んでいた。

その傍らには数名の小さな女の子も居る。


「暁ー」

「おひさーっ」

「元気だったぁ?」


「暁……貴女が私を呑んだせいで、お嬢様に何かあったら承知しませんよ」


「皆さん……お姉さま。お会いできて光栄です」


暁は柊に向かって深々と頭を下げ、ふっと微笑む。

いつしか、紫色だった暁のメイド服は深青に染まっていた


「さて、この私を一晩も拘束したからには責任を取ってもらいますよ」


「そんな……私が何かしたわけではありませんよ。

それは、お姉さまも良くわかっているはずでしょう?」


「確かに。一定の範囲内に入ると吸収されてしまうのは私も知っています。

けれど、吐き出すのは貴女の匙加減でしょう。早く開放することも出来たはずです」


深紅のメイド、柊は色と真逆の冷たい瞳で暁を睨みつけた

顔のつくりや体つきがほとんど同じな二人ではあるが、性格は少し違う。


「……などと話している暇はありません。お嬢様の元へ行かなくては……」

「じゃあねー」

「また会おうね、暁」


柊は幻影の如く姿を消し、colorも一緒に消えていった。

そして再び教室に一人残された暁は、しゅんと肩を落とすしかなかった





「……」

「……」

『?』


「何故、何も話さないのですか?」

「話すことがないからだよ」


いい感じに舗装された道路を歩く俺とユイ。あとアリス。

公式連盟のバッジをつけたテイマーに会釈し

辺りをふらつく手乗りの魔物をどこか遠くへ放り投げ

写真取らせてくれと迫ってきたケモナーを一蹴し

それでも諦めず、抱っこしていいかなと言い寄ってきた会長を一蹴し


そんなこんなでしばらく歩いていくと、街並みのなかに大きな山が姿を現した。

山の周りをぐるっと囲むように道が作られており、頂上には巨木が聳えている


「まさかとは思いますが、貴方の実家はあの山の頂上ですか?」


「そのまさかだよ」





『……』


巨木に腰掛け、山に踏み入る二人を見つめる人影。

鱗に包まれた尻尾を揺らし……その瞳は穏やかな光を宿している



『……客人か……紫苑に伝えねばな』


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