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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章【夏休み】
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52『課題と山中』

やけに長く感じた対抗テストを終え、穏やかな日差しに俺は目を細めた


時計を見ると9時25分。

そうだ……今日から夏休みだったか


俺の隣で寝惚け眼を擦る相棒、ユイはしぺしぺと毛づくろいし、ドアに手を掛けた


「……何をしているのですか。早く教室へ行きますよ」


「今日から夏休みだぞ」


「……何を言っているのですか? この時間じゃ完全に『ちこく』ですよ」


「だから夏休みだっての」


ユイはどうやら休みだということを理解したらしく、

瞬時に色白な頬を真っ赤にして俯いてしまった


かわいいなこいつ……


それはそうと、夏休みではあるが特にこれと言って予定は無い。

あらかじめ聞いておいた情報によると夏休みは一か月近くあるらしいし……

夏と言えばのイベントもたくさんある。やりたいことは山積みだ


そういや……課題については何も言われてないけど、どうすればいいんだろうか。

優勝は校長先生だったし、課題免除のボーナスを惜しくも逃してしまったからには

何か面倒な課題があるんだろう。まぁ先生が忘れているだけという可能性もあるが。


ふと、窓辺に目を向けるとアリスがぼんやりと外を眺めていた


「どうかしたか?」


俺が尋ねても、返事は無い。

あの扉の向こうから帰還してから……少し、アリスの様子がおかしい


「……今日は、休みなのですか? それでも一応教室には顔を出すべきです」


ユイが納得いかないような表情で言う。理由は訳分からんが。

どうやらどうあっても自らの無知を認めたくないらしいな


「じゃあ行ってみるか? 誰もいないだろうけどな」





「おや杉原君。遅刻ですよ~」


「……マジで?」


教室には先輩方と暁先生、それとノワールが居た

あれ? 今、夏休みだよな?


「はい。夏休みですよ」


「じゃあなんで集合してるんですかっていうか心読まないでください」

「ほ、ほら! だから言ったじゃないですか」


「いいから座れよお前ら」


俺はいまいち状況が飲み込めないが、とりあえず席に座る。

教室には相変わらずアサギが居ない。

……心配ではあるがあいつのことだから別に平気だろう


「アサギさんは欠席だそうです」


「……それで、どうして皆揃ってるんですか?」


「はい。まだ宿題を出してなかったなぁと思いまして」

「忘れたままでいてください」

「同じく」


暁先生はふっと優しい微笑みをくれた。

まぁ美人ではあるけど……


「ふふ、杉原君が褒めてくれたんで宿題は軽くしてあげますね」


「(先生ってこんなんでいいのか……?)」


「じゃあ使い魔とスキンシップすること。野生の魔物(♀)と遊ぶこと。

それと、魔蛇太尾を各自取ってくること! これでいいでしょう」


……随分とテイマーらしい宿題だな。

野生の魔物と遊ぶってのはそれなりに危険だろうけど……

ってか、魔蛇太尾って何?


「めんどくせぇ……実家帰らねーとな」


藤野先輩が人魂を指でくるくる操りながらぼやく。

もしかしてあれスキンシップか?


「……」


ふと隣を見ると、ユイが睨むように俺を見つめていた


「何だよユイ」


「べ、別に何でもありませんっ」


「ぶっちゃけ用はそれだけなので、帰ってもいいですよ。

杉原君……ユイさんは構ってほしいんですって。スキンシップしてあげてくださいね」


「そんなこと言ってませんッ!」


「言ってるようなもんだけどな」





何だかんだで俺とユイは部屋に戻り、一息。

アリスは窓辺ですやすや眠ってしまっていた


課題は分かったからいいとして……

夏休み……まずは何をしようか。


そういや、ここしばらく母さんと連絡取ってないな。

ユイのことも紹介してないし……せっかくだから一度家に帰ってみようか。

長い休みに入ったのに親に顔を見せないってのはちょっと気が引ける。


……よし。やりたいことは片っ端から片づけていこう。

思い立った日が吉日。さっそく準備だ


「ユイ、アリス、出かける用意をしろ」

「?」

『why?』


「山、行くぞ」





とある山中。

古びた屋敷の縁側で座布団に正座し、一人まったりとお茶を飲む女性がいた。


緩やかに曲線を描く肢体と、艶やかな黒髪。

薄紫の着物に良く映える紅い簪が特徴的なその女性は、

庭に咲き誇る八重桜を見て女神のような微笑みを湛えている。


その様子はどこか妖艶で、誰もが魅入ってしまうほどに美しかった


屋敷には沢山の魔物が蔓延っているが、女性は気にも留めずお茶を啜る。

魔物たちは女性から数メートル離れた柱の影などから様子を伺っていた。


『人の匂いだ……旨そうな匂いだ。食ってやるっ』

『おいよせ! 奴に手を出すな――』




一匹の魔物が女性に飛び掛かってゆき……刹那、肉片と化した。


女性は魔物の返り血に染まった自らの半身を拭おうともせず、お茶を啜っている。



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