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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
55/114

49『術式』


「玲紀様ぁぁぁあああ!」

「静かになさい」


駆け寄ってくる暁を校長は軽く一蹴し、溜め息と共に屋上を見渡す。

二人がいる箱庭の屋上には、数名の生徒と魔物が倒れていた


「ぅ……」


「まぁ、ここまでたどり着いた努力だけは認めてあげるわ」


――ッ

倒れる生徒を冷たく見下ろす校長の背後から透明な魔物が音も無く襲いかかる

その不可視の爪は校長の首を引き裂き――


「ふん、甘いわ」


――は、しなかった。


それどころか校長は少しだけ身を傾け、魔物に後ろ回し蹴りをお見舞いする

刹那、青い魔方陣が浮かび上がり、鈍い音と共に魔物は吹き飛ばされてしまった。


『ギャ……ッ』

「まだ終わりじゃないのよ?」


さらに校長は風のごとく魔物を捉え、どこからか取り出した鈍器を振り下ろす

―『封印術式・夢幻壺』―

ごしゃ。と嫌な音が屋上に響き、校長の足元には黒い壺が転がっていた


「さて、契約者はどこかしら」


「わ、私です……校長先生」


物陰からおずおずと挙手した女子生徒。

校長はその生徒に向かって黒い壺を放り投げた


「割れば解放されるわ。精進なさい」


「は、はい……」



「玲紀様っ、生徒と戯れている場合じゃありませんよ!」


「さっきから煩いわよ暁。少し落ち着きなさい」


「いえあの、例の部屋が……開いてます」


「……」


校長は呆れたように暁を睨みつけ、深いため息を漏らした。






「戻ってこないな……どうする?」

「……私にどうしろと?」


アリスが小さな扉の向こうに消えてから十数分。

ユイと何だかんだ話して時間を潰してはいたが……そろそろ心配になってきた


中の様子は見えないし……というより扉が動かない。

ユイが氷塊をぶつけても俺が蹴り飛ばしても微動だにしない。


まるでこれは……扉の模様が描かれた壁。


結局、追いかけることもできないし

放置して先へ進むわけにもいかない。

かといって帰りを待とうにも帰ってこない。

誰かに助けを求めようにも誰も通りかからない。


「さて、どうしようかな……」


「面倒なことになってきましたね……誰か先生に報告するべきでは?」


『……?』


「先生はどこだよ。入り口まで引き返すか?」


「知りませんよそんなこと」


等と話しているうちにも、時間は過ぎてゆく。

このままでは俺の成績にもかかわる。それは流石にまずい


「……っ!」

――キィンッ


鋭い音と共に、冷気を纏うユイが後ろに飛び退く。

ユイの手には氷に包まれた小太刀。そして紅い眼が睨む先には……


『……♪』


布に包まれた小柄な人物が楽しげに白い歯を剥いていた

頭巾の奥に光る黄色い瞳はユイでは無く……扉の方へ向けられている


あの人は、二年生が出発するとき一緒に行ったはずなんだが……

まぁ所属不明の飛び入りだし、その辺はスルーしておこう


それより……いつの間にこんな近くに来たんだ? まるで気配を感じなかった


『……』


小柄な人物は開かずの扉を興味ありげにぺたぺた撫でまわし、指で何かを描き始めた。

指がなぞった後は青白い線となって残り、やがてそれは方程式のような形を成した


                           ↙  ←

ひらかない→ひらく⤵ ◯⇔×  ×≠0>『反転』>999 ↖

できない⇔できる 開放⤴  ふかのう=かのう⇒⇒⇒⇒↗

      ××◯(××999=0)


「な、何だ……?」


『……♪』


――ガコン。「!」


微動だにしなかった扉が開き、小柄な人物はするんと中へ入って行った

扉のサイズは変わっていない。


「今あの人……何したんだ?」「知りませんよ」





紺と黒が混ざり合う闇色の部屋の中、アリスは蹲っていた。

目を伏せ、耳を塞ぎ、その体は細かく震えている


「どうしたの? ねぇ遊ぼうよ、ねぇってばぁ」


幼い妖紀がクスクス笑いながらアリスの周りをくるくる廻る

しかしアリスはじっと縮こまって動こうとしない。


じゃら、じゃらと鎖を引きずり、妖紀はアリスの傍に屈む


「怖がらないで? ほら、あなたは良い子だもの。良いものあげる」


ちゃりん。『!』

怯えるアリスの傍に落ちてきたのは金色の鍵。


黒い部屋でその重厚な鍵はより一層輝きを増していた


「これはね、ずうっっっっっと前にお姉ちゃんから貰ったやつなの

ここに来る人がたまに欲しがってたけど、誰にもあげなかったものだよ」


『(……)』


「この部屋はね、生き物は入れない特別な部屋なんだよ

人も魔物も入れないし、出られない。だから、私達は出られないの。

ずっと、ずっと……こんなものなければ良いのに」


じゃらり、と自らに繋がれた鎖を見つめ、妖紀は悲しげに呟く

アリスは怯えながらも……妖紀はただ、寂しいだけなのではないかと思い始めていた


「だから、ね? 出て行かないで……ずっと傍にいて」


アリスが無意識に頷こうとした瞬間、異変は起きた。



『……♪』


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