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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
54/114

48『アリス・イン・ブラックアウトワールド』


アリスが踏み込んだ先は黒を基調としたシックな部屋。

とは言っても家具は無く、円形の部屋の中心には原寸大のシルクハットが落ちていた。


鍔の部分が不気味に捲り上がり、禍々しい形を成していた

漆黒というに相応しい色合いのシルクハットである。


鍔の一部が鎖に繋がれ、包帯のような白く細長い布が幾重にも巻かれている


部屋の壁は黒と赤のチェック柄。窓は無く、ぼんやりと薄暗い部屋の中

点々と設置された蝋燭が怪しく揺らめく。


人形であるアリスにもただの部屋では無いことが良くわかった。


アリスはしばらく部屋の中を眺め、誰も居ないことを確認すると

くるりと振り返りドアに手をかける


「待って……出て行かないで」


『?』


不意に少女の声が聞こえ、アリスはきょろきょろと部屋の中を見渡す

しかし部屋の中には誰もおらず、不気味なシルクハットが怪しい光を放っている。


『Who are you?』(あなたは……誰?)


アリスは金色の文字を浮かべて会話を試みる


「お人形さんが遊びに来てくれた……嬉しいな、嬉しいな」


『!』


クスクスと笑う声と共に、シルクハットから白い手が伸びる

白い手はアリスの体を優しく包み、そっと持ち上げた


『Take me down. Who are you?』(降ろしてよ、あなたは誰なの?)


「怖がらなくていいよ……痛くしないから」


少女の声と共にアリスの体はシルクハットの中へ引き込まれ

アリスの視界は真っ暗になってしまった


『What is here? What do you do to me?』(ここには何があるの? 私に何をするの?)


暗転した視界とシルクハットの大きさの比率に混乱してアリスはその場にへたり込む。

人形ゆえに涙を流すことはできないが、それなりに感情を持っているのだ。


「大丈夫だよ。怖くないよ」

『!』


アリスの体がひょいと宙に浮く。

ふと気が付くと、アリスは幼い少女に抱きかかえられていた


少女は、藍色の髪に良く映える大きな金色の瞳でじっとアリスを見つめている。

その幼さが残る体には紅い斑点の付いた闇色のワンピース。

そしてゆったりとした袖には淡く光る鎖が繋がれていた


黒と藍色が混ざり合う淀んだ空間に相応しくない、可憐な少女である


「えへへ……かわいいお人形さん」


少女はアリスを両手で大事そうに抱えて嬉しそうに微笑んでいる

アリスはその屈託のない笑顔に何ともいえない不気味さを感じ、僅かに縮こまる


『Do you not understand English?』(あなたは、英語が分からないの……?)


「君はどこから来たの? この部屋は人間も魔物も入れないようになってるんだけど」


『I entered at the door』(普通に、ドアから……)


少女は何も喋らない(喋れない)アリスを抱きしめ、

文字通り人形と会話するように話しかける。


アリスはただの人形ではない為、返事代わりに金色の液体を浮かべるが

少女はあまり気にしていないようだ


にこにこと笑顔を浮かべる少女はどこか狂気に満ちている


「まぁいっか。ねぇお人形さん、あなたアリスって言うんでしょ?」


『!』


「私はね、妖紀っていうの。よろしくね」


妖紀と名乗った少女はぐりぐりとアリスを撫でまわし、微笑む。


アリスは僅かに感じる異様な気配の正体が分からず、体を震わせていた

誰か、とても強力な『何か』に視られているような……不気味な気配である


ふと気が付くと、妖紀は袖に括られた鎖を憎らしげに見つめていた


「この鎖ね、『ぐれいぷにる』っていう封印術式なの

このせいで()()はこの部屋から出られなくて……だから、貴女が来てくれて嬉しい」



「――ずっと一緒だもの」



その瞬間、淀んだ空間が歪み……

気が付くとアリスは黒い部屋の中、不気味なシルクハットを被った女性に抱かれていた


女性は金色の瞳に怪しい光を宿し、裂けんばかりの不気味な笑みを浮かべている


『Free me from you!』(離して!)


アリスはじたばたともがいて女性の手から逃れようとするが

女性は握る手に力を込め、ぎりりと締め上げる


「大丈夫……怖がらないで? 大人しくしていれば痛くしないわ」


艶のある声で囁く女性のシルクハットと袖には細い鎖。

鎖は壁と直結しており、女性が動くたびにじゃらじゃらと嫌な音を立てた


アリスは本能的に危険を察知し、嫌々と首を振りながら必死にもがく


「ふふ……久しぶりのお客さんだもの。ずっと一緒に居ましょう……?」


歪んだ笑みを零す女性の周りにざらざらと黒ずんだ煙が渦巻く。

渦巻く煙は全てを覆い隠し、やがて消えてゆく――


――――



そして、誰も居なくなった黒い部屋の床には

……滴のような金色の液体が僅かに形を保っていた。


『 H el p m e 』

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