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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
53/114

47『扉』



「……」


ノワールは白い通路の最奥に立っていた。


彼女の前にそびえるのはいつ移動するか分からない、不安定な終着点である

大きな鍵付きの扉ではあるが……ノワールに鍵など必要ない。


通路を振り返ってみても、歩く者はいない


「ひょっとして、一番乗り?」


『開』


さらっと描いた文字は扉に溶け込み、音もなく開け放つ

扉の先には再び大きな階段が見えた


『タイム6分37秒か……やるねぇ』

「!?」


『評価点は10満点中8ってところか。さぁ3Fへどうぞ』




真っ白な通路を歩く俺とユイの間には何故か気まずい沈黙が流れていた

ユイがぴりぴりと嫌なオーラを発しているのだ


アリスも大人しいし……ぶっちゃけ俺はどうすればいいのか分からない

ノワールのことも気がかりではあるが……


流石にユイを放置して追いかけるのはまずい。

そこ、一緒に連れてけばいいじゃんとか言うな。


「……」


ユイがふっと冷たい吐息を漏らす。

吐息は粉雪のようにキラキラと光りながら通路に霧散していった


「……成程」


「どうした?」


「こっちですね」


ユイは小さな歩幅で通路を進んでいく。

その手に握られた小太刀はベキベキと氷を纏い徐々に禍々しい感じになっている

周りに渦巻く冷気が異様に怖い


「ユイ……お前、何か苛々してないか?」


「してません。早く行きますよ」


……いつもより冷たいな。

何だろうこの感じ、俺は何もしてないと思うんだが


ユイが歩いた後に薄い氷が張っているのあたり、やはり普段とは何か違う


「なぁ、どうしたんだよホントに」


「……」


ユイがぴたりと足を止め振り返る。

その紅い瞳は深みを増し、宝石のごとく輝いていた


「貴方は私の所有物です!」

「誰が所有物だ「貴方です」」


「……なのに、他の娘のことばかり……」


少し顔を赤らめ、俯きながらユイが呟く。


「はぁ……?」


「……なんでもありません。早く行きますよ」


そういって俺に背を向けた小さなユイの体は

俺が見ているものよりずっと華奢に見えた。


相変わらず謎が多いが、少しだけ……ユイの本音が聞けたような気がする


『What is that?』


不意に、俺の眼前に金色の文字が浮かぶ。

アリスが収まっているポケットに目を向けると、アリスが壁を指差している


壁に何かあるようには見えないが……


『it is this!』


アリスはポケットから飛び降りると白い壁の下部のある一点を小さな手で叩き始めた

どうして見えないんだと言わんばかりにアリスは壁を叩く。


その様子はどこか微笑ましい。お持ち帰りしたいくらいだ。してるけど

しかし幾ら叩いた所で俺には何も見えない。強いて言うなら綺麗な模様があるくらいだ


「そこに……何かあるのか?」


『Yes』


「ユイ、アリスが何か見つけたって」


「……」


ユイは何も言わずに鋭い小太刀を振りかざし、氷塊のごとく壁に叩きつけた。

水色の波紋が白い壁に浮かび、轟音と共に弾け飛ぶ


氷の破片と白い粉塵が通路を埋め尽くし、迷宮が大きく揺れる



気づいた時には白い壁は大きく抉れ、その中心に小さな扉が顔を覗かせていた

アリスは喜び勇んで白い瓦礫をよじ登り、小躍りし始める


「あれか……随分と小さい扉だな」


その大きさは30cmほど。当然ながら俺とユイは入れそうにない。

まるでアリスのような小さい者のために造られたような扉だ


小さいながら立派なその造りは学園に多数存在する扉と同じ物である


『I examine the inside』


アリスは金色の文字を浮かべ、扉の向こうへと行ってしまった

となれば俺とユイは残されてしまうわけで……


「行っちゃったな。どうする?」

「どうしようもありません」


――




白い通路とは一変、どこまでも真っ黒な道をアリスは歩いていた


黒い通路に壁は無く、その道は四方八方に伸び、果ては無い。

紺色の闇が渦巻くその空間は飲み込まれてしまいそうなほど深く、暗い。


明かりは無いが、黒い道はぼんやりと光を放っていた。


そんな中、通路を歩くアリスはきょろきょろと辺りを眺め、ふらふらと歩いている

その瞳はどこか遠くを見つめており、その足取りはおぼつかない

アリスの周りに漂う金色の液体は行き場を失いながらも、彼女の傍を回り続ける。


――クスクス。


どこからか、少女の笑う声が聞こえる……

楽しげな、それでいてどこか寂しげな、幼い声。


『?』


アリスが辺りを見渡すと、深い闇を巡る通路の先には

黒地に銀で縁取られた扉があった。


黒い空間にぽつんと佇むその扉は少し、開いている。


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