表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
50/114

44『二年生の意地』

「……」


すたすたすた。

すたすたすたすた。


スミレはただ、真っ白な『直線』を進んでいた

三年生の出番が終了した数秒後に復旧した2F迷宮ではあったが

スミレの前に障害物など無いに等しい。


それどころか『灸連寺スミレ』の姿を捕えられるものすら少なかった。


学園の教師はもちろん、生徒や卒業生の姿に次々と移り変わる様は

……まるで幻影である


スミレは次々と姿を変えては立ちはだかる壁をくり抜き、トラップを無効化し

ただひたすらに、まっすぐ進み続けていた。



スミレの使い魔の正体を詳しく知る者は、殆どいない。

それは、彼女自身が隠しているわけではなく、誰にも理解できないのである


ふと気が付くとスミレは姿を消し、代わりに仮面を被った誰かが現れる。


そんな彼女の使い魔の名は『偽りの顔(ダミーフェイス)


仮面の下の素顔を見た者がいないことや、変身しても仮面は変わらないことから

普段のスミレすら、本当の姿では無いなどと実しやかに囁かれている



――ゴンッ


「痛……」


スミレが曲がり角を曲がろうとすると、硬い何かが飛んできた。

それは完全に不意を突き、スミレの側頭部に命中した


「……?」


飛んできたのは拳大の白い塊だ。

スミレは側頭部を擦りつつ、塊を手に辺りを見渡してみる


「当たった!」

「へっ ざまあみやがれ」


どこか遠くに、駆けていく男子生徒が見えた


さらに、すぐ傍の壁には――

『特殊科チート!』


「っ……」





「へへっ まさか当たるとは思ってなかったな」

「見たかあの顔。傑作だぜ」


白い迷路を駆ける二人の男子生徒はしてやったりと笑っていた

それぞれの使い魔が怯えていることも知らず……


――ドンッ


『……っ』


「おい、気をつけろよチビ」


白い通路に、大きな布に包まれた少女が転げた

じゃらじゃらと通路に銀食器が散らばり、少女はせっせと拾い集め始める


「だ、大丈夫か?」


「ほっとけよそんなやつ。行こうぜ」


男子生徒は通路を急ぐ。

倒れた少女のことを気に掛けた生徒もすぐに後を追う。


『……』


頭巾の奥に光る黄色い瞳は、全てを見ていた。

もちろん、それを男子生徒が知るはずもない




『……待て』




「!」

「っ……!?」


男子生徒の動きが止まる。

体を固定された男子生徒は直感的に危険を察知するが、体は動かない。


瞬きすらも、許されなかった。


――『反転(リバース)


視界は反転し、男子生徒二人の視界を埋め尽くしたのは

……禍々しく尖った『銀色』だった。



「……」


すた、すた。


白い通路を、スミレは歩いていた。

壁にぶつかれば曲がり、行き止まりに出たら引き返す。


仮面の下から覗く瞳は潤み、顔も少々俯きがちである


「……大丈夫。いつものこと」


誰に言うでもなくスミレは呟き、通路を進む

そして、再び曲がり角を曲がると……


『……!』

「……?」


まず、スミレの視界に入ってきたのは布を纏った少女。

次に、宙に浮く大量の銀食器。ズタズタになった白い壁。


そして、『脱落者』と書かれた二枚の札だった。


『……♪』


少女はてこてことスミレに歩み寄り、頭巾の下に白い八重歯を覗かせた


「あなたは……」



むぎゅ。


『……♡』


少女は何故かスミレを抱きしめ、満足げだ

とは言っても身長が低いため、少女の頭はスミレの割と豊かな胸の下に埋まってしまう。


「えと……」


スミレはいきなりの事に多少困惑しつつもとりあえず少女を撫でる

少女はぐりぐりと頭巾に包まれた頭を擦り付け、やがておとなしくなった


「(この子、確か五位の……)」


『……?』


「……」


どうしてここにいるんだろうという素朴な質問を掻き消し、スミレは言う


「……一緒に、行く?」


『……!』


布を纏う少女・キャロルは嬉しそうに頷いた



今、俺は何を見たのだろうか。

説明できる人がいるなら出てきてほしい


俺はノワールが押し付けてきた不気味な色合いの飴を拒否し

ユイとアサギの小競り合いを見ていたはずである


合計五人(アリス含む)だったはずなのだが……


「……遅いっ!」


「申し訳ありませんお嬢様。少し道を間違えまして……」


ふと気が付くと、誰かが綺麗なティーカップに紅茶を注いでいた。

その人物は、『真っ赤』な……


「暁、先生……?」



「……これはこれは、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません

私、柊と申します。以後お見知りおきを」


柊と名乗った紅いメイドさんは、丁寧に頭を下げ……

顔を上げたときには、紅かった瞳が琥珀色に染まっていた


人違いか……だと分かっても良く似ている。

高い身長や、それなりに豊満な胸や、透き通る声、たれ目がちの優しそうな瞳。


これで髪や服の色が青かったらもはや見分けがつかないだろう


「お嬢様。私は何をすれば宜しいのですか?」


「ふん。決まってるじゃない」


お嬢様って呼んでる……ってことはあれか。アサギの家で働くメイドさんか

あれ? だとしたらもしかしてアサギって文字通りお嬢様なのか?


「次は私の出番。アンタの力が必要なの」

「畏まりました」


「おい、ちょっと待てよ。関係ない人に手伝わせるつもりか!?」


「ダメなんて言われた覚えはないわよ?」


「確かに言われちゃいないけど……」


二年生の後はついに俺たちの出番だ。

アサギとノワールと、ユイとアリス。それと……柊さん。


さて、どうなることやら……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ