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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
44/114

38『植物のち悪魔』

テストが中々終わらない!

サクサク進めます


毒々しいキノコが生い茂る部屋の中

床に伏してぐったりしているノワールを覗き込む者がいた。


大きな翼を揺らし、エナメル質のローブが冷たくも美しい女性だ

その艶やかな緋色の髪には巻き角が二本。

そして魅惑的な曲線を描く肢体には、細い尻尾が絡みついている


「ちょっと貴女、大丈夫? ほら……しっかりしなさい」


「うぅ……」


「……どうやら貧血みたいねぇ 随分と不思議な力だこと

連れの子は眠りっぱなしだし……仕方ないわね」


女性はひょいとノワールを抱き上げ、軽く背中を摩る


「さて、と……まずはあの毒キノコさんをなんとかしなくちゃいけないのかしら」


女性はノワールをアサギの隣に寝かせ、ボスモン・マシューを見つめ微笑む

その瞳は艶やかに、鮮やかに、美しく煌めいていた


「ふふ……久々に頑張っちゃおうかしら」



「……なんか妙なのがいるねぇ そう簡単にくたばるつもりは無いよん♪」



~ゴールエリア・終末の間~



《カツテ海王ト呼バレ祀ラレタ、『津波ヲ呼ブ』魔物ノ名ヲ答エヨ》


「……え?」


桜がプラムと共に踏み込んだ部屋はゴールエリア・終末の間であった。

番人の出す問いに答え、見事正解したならば鍵を手に入れ2Fへ行くことが出来る


3つのエリアの中ではもっとも簡単に2Fへ行くことが出来る場所であるため

ほとんどの生徒はこのエリアを目指して進む。


ゴールエリアはいくつかの種類が存在しており

それぞれの部屋は一度立ち入る者が現れたら、無事に突破して2Fへ行くまで

第二波の生徒を受け入れることは無い


桜が踏み込んだゴールエリア・終末の間が空いていたことは、

まさしく桜が持つ幸運のなせる業であるといえよう


「えと、『津波を呼ぶ』魔物って……確か伝説の『災害系』じゃ……?」


《イカニモ。ソノ者ノ名を答えよ》


「えぇと……確か」


『ヴァヤ、サン』


「……えっ?」


桜の足元でプラムが声をあげた。

番人の視線(?)が桜ではなくプラムに切り替わる


《小サキ者ヨ。知識ヲ持ツカ》


『……う』


「ヴァヤサン……?」


桜はプラムの不明瞭な言葉に首をかしげるが……


「……リヴァイアサン……?」



――――



……ふと気が付くと、番人は姿を消し

驚く桜の前には輝く金色の鍵がふわふわと浮いていた


「えと……当たった、のかな……?」


桜はそっと鍵に手を伸ばし……

掌に収まる程度の鍵を見つめ、嬉しそうに微笑んだ


「えへへ……ありがとうプラム」


『……ん』


桜は微笑みつつプラムを撫でるが、プラムは再びするすると移動し

部屋の奥にあった鍵付きの扉をこじ開けようとする


しかし当然鍵が付いているのでこじ開けることはできない

桜は豊かな胸を撫で下ろし、鍵付き扉の前に立つ


「……そうだね、早く先に進まなきゃ」




『おおっと、そうこうしている間に新着情報です

ゴールエリア・終末の間より植物科一年生、山背 桜が2Fに到達!

第4位は植物科が占拠しましたぁ! 得点は85点!

植物科は15年ぶりにBest5入りの快挙を成し遂げました! 今年は行けるか!?

さぁどんどん参りましょう! 今回も特殊科が圧倒的な点差で勝利するのか、

はたまた遅れている学科が追い上げるか。

これからますますヒートアップ間違い無しです!!』


「桜ちゃん……!」


「やったぁ!」

「後輩ちゃん、無事に突破できたか……良かった」

「逸れたかと思ってヒヤッとしたけど、やっぱあの子は将来有望だな」

「きっとまだまだ成長するんだろなぁ」

「どうします蓮華先輩、俺らはもうあの部屋入れないっすよ」


「どうもこうもないよ。行くよ皆! 私たちも早く2Fに行かなきゃ……」



~ボスモン部屋~


相変わらず怪しい茸が生い茂る暗い部屋の中、悪魔がクスクス笑っていた

生い茂る茸は遠慮がちにその傘を畳み、部屋の中には茸の残骸が散らばっている


そして暗い部屋の中、ギャリギャリ蠢く巨大な影。

暗闇に光る水色の瞳。僅かに浮かび上がる異形の刃。

影はまるでストレスを発散するように生い茂る茸を切り刻んでいた


箱庭に響く放送を聞いて、影は軽く舌打ちする


『ふん……アンタがさっさと動かないから先を越されるのよ』


「あらら、四番手は取られちゃったみたいね

それより……貴女、今まで寝てたくせによくそんな事言えるわねぇ うふふ」


『……次はアンタを切るわよ』


「誰のおかげでこうなったのか、良く考えなさいな」


悪魔がパチン、と指を鳴らすと暗い部屋が徐々に穏やかな光を取り戻す

同時に影は煙のごとく消え失せ、微笑む悪魔の傍にはアサギが佇んでいた


「ふふ……可愛いのね。

明るい所じゃ、か弱い女の子なのに……ふふっ あはははは」


「わ、笑うなぁ!」



「う、ぐ……参ったねこりゃ」


潰れた茸の傘に力なく横たわるマシューが、苦しげに呟く。

その体はズタズタになっており、頭の茸帽子も原形を留めていない


「酷いもんだ……あたしに勝てる力があるのにわざと傍観してたなんて……げほっ

覚えときな……この借りはいずれ、必ず……!」


部屋に散らばった茸の破片が、ざあっとマシューを包み込み

茸の塊はくるくる回るうちに段々と小さくなっていき、やがて消えた。


マシューが倒れていた場所には金の鍵がキラキラと輝いている


「油断したアンタが悪いのよ」


「きっと夜の間は活動できないのね……ふふっ」


悪魔・リリスは勝ち誇った笑みを零しながら、金の鍵をくるんと回す


「先に行っていいわよ」


ちゃりん。

アサギの足もとに金の鍵が転がる


「……借りを作るわけにはいかないわ。アンタが先に行きなさいよ」


アサギは鍵を投げ返し、リリスに背を向ける


「いいのよ。私はここの生徒でもなければ、誰かの使い魔でもないわ」

「えっ……」



――ちゃりんっ


静まり返ったボスモン部屋に、鍵の落ちる音が虚しく響く

アサギが振り返っても、そこにリリスは居なかった。

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