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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
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35『ボスモン部屋』


「どうしよう……」


ノワールはぽつりと呟いた。


彼女が立っているのはボスモン部屋と呼ばれるエリアである

辺りには怪しい色合いのキノコが生い茂り、白い胞子が溢れ返っている


ノワールは『防』と書かれた半透明の防壁に包まれているおかげで

部屋を埋め尽くす胞子の影響を受けずにいた。


「(この胞子、睡眠作用があるのかも。だったらこれを解くわけにはいかない……

けど……このままじゃ鍵を手に入れるのはちょっと難しい。かな)」


危険を察知し、とっさに外気を遮断したノワールとは違い

身を守るすべを持たないアサギは、もろに胞子を吸い込み深い眠りについてしまった




ボスモン部屋はきわめて強力な魔物から鍵を奪い、2Fへ行く速さを競う部屋だ

ゴールエリアと似てはいるが、極端に違う点がある。


それは、鍵を奪う方法は自由だということ。


例外として特殊科はルールに縛られない特権を持ってはいるが

これにより、全ての学科に平等にチャンスが与えられるということである


ボスモンから強引に鍵を奪うも良し、隙をついて盗み出すも良し

使い魔の力をフル活用して鍵を手に入れ、2Fへ向かう速さを競うのだ。


そのため毎回力自慢の使い魔を持つ生徒が果敢に挑戦するのだが……


ボスモンとして待ち受けるのは当然ただの魔物ではない。


土地神クラスの怪物であったり、名のある山の主であったり、

引退した高クラステイマーの元使い魔、さらには『災害系』の魔物が呼ばれることもある


実際のところボスモンが強すぎて、強引に鍵を奪うどころか

突破することすら非常に難しいのが現状である。




当然のことながら特殊科よりも先に箱庭に入った学科の生徒も少なからず居るのだが、

ノワール以外の生徒は皆、床に伏して昏々と眠ってしまっている。


どうやら部屋に充満する胞子は魔物にも効果が大きいらしく

使い魔である魔物達も、ほとんどが主と共に深い眠りについている


数匹眠っていない魔物もいるが、それぞれが眠る主の傍から離れようとしない。

眠っていない魔物はノワールを含め四体居た。


「あの子達と、話せないかな」


と、ここでノワールはあることに気が付いた。

眠っていないということは、実体を持たない魔物か無機物系の魔物である


ごく稀にノワールと同じように身を守るすべを持つ魔物もいるが

その可能性は限りなく低い。


どちらにせよ、人の言葉を話すノワールが話しかけたところで

会話が成立するとは考えにくいのである


「……どうしようかな」


再びノワールはぽつりと呟き考える。

今、この状況で、どうするべきか。


ふと天井を見上げると、白く濁った空気の果てに光る物が見えた。

その瞬間、何かを閃いたノワールはさらさらと文字を描きはじめる……


――『視』『識』


描いた文字は紅く煌めき、ノワールの瞳に力が宿る。

淡く輝きを放つ彼女の視界には、部屋の状況と魔物の情報が鮮明に映し出された


少女の姿をしていようとも、彼女は高位の魔物なのである



生えている茸の場所。それぞれの魔物の役目や強さ。そして弱点。

ボスモン部屋のすべての情報を掴んだノワールはぐらりと揺れる頭を押さえ

防壁の中から部屋の奥をじっと見つめた


魔睡茸 Lv5 魔睡茸 Lv5

魔睡茸 Lv5 魔睡茸 Lv5

魔睡茸 Lv5 魔睡茸 Lv5


拷魔睡眠茸 Lv500


マシュー Lv1327 『茸を生やす』魔物。夜間は活動不能


「……!」


部屋に生えている茸は全てあの茸帽子の女性によるものらしい。

それぞれが睡眠作用のある胞子を吐き出し、多少なりとも魔力を持っている。


一際大きなキノコはやはり桁違いの魔力を持っているが……


――やはりボスモン。格が違う。


「あははっ 守ってばっかりじゃ勝てないぞ~」


ボスモン・マシューがちゃりんちゃりんと鍵を弄び、楽しげに嗤う。


ノワールは呆然と立ち尽くし、ぐるぐると対処法を考えるしかなかった。

軽くパニックになってしまったノワールは、今さっき閃いた名案も忘れ

あわあわしながら辺りを見渡す


するとノワールの視界には、眠っていない魔物の情報が流れ込んできた



スペクター Lv230 『通過する』魔物。 金属は通過できない

爆撃兵 Ⅳ Lv444 『爆発させる』魔物。 水に触れると起爆できない



リリス Lvℛℌℬℨ 『――――』


「……?」


三体居るうちの一体だけ、読み取れない魔物がいた。


「(私の文字が、及ばない……?)」


じっと見つめたその先に、『悪魔』がクスクスと笑っているのが見えた

ノワールは直感的に近づこうと足を動かすが……


その瞬間、眩暈と共に映し出された情報は消え失せ

……やがてノワールの視界が徐々に霞み始める。


「(あ、れ……時間切れ、かも。こんな時に……)」


それっきり、ノワールの意識は途切れた。

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