表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
33/114

28『特殊科三竦み』

~流星学園・3F廊下~


「おい! 居たぞ」

「……杉原だ……」

「あいつが、杉原……」


廊下を歩くと生徒たちがざわつきながら道を開け、使い魔には威嚇され、

すれ違いざまにチラチラ見られている気がする……何だこれ。


「……嫌な雰囲気です」


俺の隣を歩くユイが辺りを睨みながらぽつりと呟く。

ちなみにアリスは俺の胸ポケットの中で縮こまっている。


「……何だってんだ? 一体……」


辺りの様子を伺いながら、俺は長い廊下を進む。

嫌なざわめきの中しばらく進むと、やがて特殊科の教室が見えてきた。




「おはよう、ございます」


教室の扉を開けて中に入ると、教室の中にはスミレ先輩と藤野先輩がいた。

暁先生はまだ来ていないらしいな……


「……おはよ」


「よう杉原。今日は迷わず来れたな」


スミレ先輩は何故かドクロを被っていた。

金髪と黒い仮面と白いドクロという組み合わせ。

……何か可愛いが少し不気味でもある。意味はさっぱり分からないが。


「何でシカバネドクロ被ってんだよスミレ……知りたいことでもあるのか?」


「……今日は誰か来る予感」


「し、しかばねドクロ……?」


俺が首をかしげても藤野先輩はニヤニヤするばかりである。

何なんだよホントに……


「それより杉原ぁ……お前、昨日校庭で白い魔物に押し倒されたとかいうじゃねえか

学園中でもっぱらの噂だぜ? 先生方も朝から緊急の職員会議してたし……

何より、このあたりで白い魔物って言ったら一匹しかいないからな」


「はぁ……」


「お前は知らないかもしれないが、昔この辺りに氷を司る白い魔物が居たんだと。

んでそいつを封じた場所に森が生まれて、降魔の森になったって話……有名だぞ?」


「……」


ふと隣を見てみると、ユイが自分の尻尾を毛づくろいしていた。

…………まさかな……


「降魔の森から魔物が現れたのはずっと昔だけど、

未だかつて白い魔物を見た奴はいないらしいぜ……

変な話だと思わないか? お前の使い魔……真っ白じゃねえか」


「そんな……偶然ですよ。なぁユイ」


「気安く話しかけないでください」


きっぱりと言われた。これは地味に傷つくな。


ところで、スミレ先輩の被っているドクロは何なんだろうか。

あの色合い……何処かで見たような気もするが。


昨日の猫耳といい、スミレ先輩の使い魔と何か関係があるのかもしれない。

スミレ先輩は仮にも特殊科だ。常識的に考えてはいけないのだろう。



等と考えていると教室の扉が開き、暁先生が入ってきた。


「おはようございます、皆さん」


何だろう……暁先生はやけに嬉しそうというか、機嫌良さげである。


「どうかしたんですか? センセー」


「はい、今日は特殊科に新しい生徒が来るんですよ。

言うなれば一日遅れの入学といったところでしょうか」


へぇ……特殊科の生徒が増えるのか。一日遅れの入学なんて聞いたことも無いが

待てよ……入学ってことは俺と同じ一年生なのか?


何か理由があるにしても、特殊科に来るなんて珍しい。

……俺が言える立場じゃないが。


「……なるほど」


スミレ先輩がぽつりと呟いた。


「どうかしたんですか?」


「……とばっちり、喰らわないと良いね」


「……え?」



「さて、それじゃ呼びましょうか……二人とも女の子なので優しくしてあげてくださいね」


「いろいろ説明不足なんですけど……」


暁先生はにっこり微笑んでどこからかベルを取り出し、軽く揺すった。


――ちりりんっ


可愛らしい音が聞こえたかと思うと、教室の扉を吹き飛ばして黒い何かが入ってきた。


「な……っ!?」


ずるりと教室の中に入ってきたのは、巨大な黒い腕だ。

黒い腕は床を這うように俺の前まで伸びてきて……俺に覆いかぶさり、

次の瞬間には何かに切り裂かれて霧散した。


『……!』


「な、何だぁ……?」


「……何をするつもりですか。答えによっては容赦しません」


小太刀を構えたユイが静かに言い放つ。

教室の中に、ひんやり冷たい風が渦巻き……

原型を失った黒い腕はずるずると戻っていった。


困惑する俺をよそに、暁先生と先輩方は平然としている。


すると今度は黒板に『現』という紅い文字が浮かび上がり、

気づいた時には小さな翼の生えた少女が目の前に佇んでいた。


食堂で見た女の子だ……近くで見ても将来有望な美少女である。


「あなたが、スギハラ……?」


「えっ? あ、はい」


「……」


少女はじーーっと俺の顔を覗き込み、吐息が掛る距離にまで顔を近づけてきた。

……あ、甘い匂いがする……っ



「――こらぁ! そいつは私の獲物よ。横取りは許さないわっ」


声がした方を見ると、扉が外れた教室の入り口に黒い服を着た少女が立っていた。

大きく湾曲したアホ毛を揺らし、その水色の瞳は淡く光を放っている。


タイプは違えどこちらも文句なしの美少女だ。



「誰が、誰の獲物だと……?」


片手に小太刀を握ったユイが、ぐっと俺の学ランの裾を掴む。

ペキペキと床や机に薄い氷が張り、教室の気温が一気に下がる。



……何なんだよ、この状況は!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ