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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第二章【対抗テスト】
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27『相棒』

「どういうことだ! 特例中の特例だぞ」


「とは言われましても……」


「我々の使い魔と同等、いやそれ以上の怪物が二体も……どうなっているんだ」


流星学園の職員室では、数名の教師が二枚の書類を手に頭を抱えていた。


各学科の担任教師はもちろん、教頭である萩原先生も書類を手にしている。

奥の席には一人優雅に紅茶を飲む校長の姿も見える。


「魔物が生徒として学園内に編入するなんて聞いたことも無いぞ」


「主を持たない魔物を野放しにするわけには……!」


「万が一にでも生徒に危害を加えるようなことがあったらどうするつもりだ」



『ごちゃごちゃうるせぇな……』



職員室の奥から、荒々しくも静かな呟きが聞こえた。

先生方はぴたりと話すのをやめ、声の方へ身を向ける。


奥を見つめる先生方の視線の先には校長と暁先生が居た。


「……ごめんなさいね。この子少し口が悪くて」


校長は視線を気にする素振りもなく、自らの帽子を軽く叩く。


「暁、おかわりを淹れてくれるかしら」


「はい玲紀様」


暁先生はコポコポと紅茶を注ぐ。

先ほどとは一変、静まり返った職員室には異様な空気が流れていた。


「校長はいかがお考えですか?」


「そうねぇ……もっと他に考えるべき生徒がいるんじゃないかしら」


『編入生より新入生だろ? よっぽど恐ろしい化け物が居るじゃねぇか』


校長の声とは違うが、確かに校長の方からその声は聞こえた。


『いいかお前ら……奴らはその化け物を始末しに来たんだ

奴らをこの学園に入れないとして、あの化け物をどうするつもりだ?』


「「……」」


『あの化け物が人に懐いたらそれこそ取り返しのつかないことになる……

そろそろ対抗テストの準備も進めなきゃいけないんだ。騒いでる場合かよ』


「……分かってるわね? 暁」


「はい。彼らは特殊科の生徒です……全ての責任はこの私が」





窓から差し込む柔らかな日差し。右腕に感じる柔らかな冷たい感触。

そしてひんやりと肌寒い部屋の中、俺の頬をぺちぺち叩く奴がいる。


『Good morning!』


ぼんやりと重い瞼を開くと、眼前には金色の文字が並んでいた。


「……おはようアリス。お前早起きなんだな……」


溜め息交じりに呟いて横を見ると、

ひらひらした服を着て、金色の髪を揺らし、青い瞳で俺を見つめるアリスがいた。


20cm位しかない小さな女の子である。

人形みたいだと言いたくなるが、おそらく人形なんだろう。

俺に向かって元気いっぱい手を振る姿は、見ていて気分の悪いものではない。


……やはり動力があるようには見えないし、明らかに自分の意思で動いている。


俺の横で小躍りしてるアリスを軽くつまんで掌に乗せてみる。

アリスは不思議そうな顔をして首をかしげ、可愛らしい微笑みを見せてくれた。


……手乗り少女ってのも悪くないな……

俺はアリスを指で軽く撫でて布団に降ろす。


『Do not you raise this girl?』


俺の右腕を抱きしめてすやすやと眠る毛玉を指差してアリスは首をかしげる。

……ユイはいつの間にか小さくなっていた。


大きいユイはもういないのか。そう考えると少し残念だな……

けど、幸せそうに眠るユイの寝顔はとても可愛い。頬をつねってやりたい。


でもダメだ。とりあえず我慢して起こすか。


「ユイ、ほら起きろ。朝だぞ」


俺は左手で軽くユイの体を揺する。

……が、ユイは俺の右腕を抱きしめるばかりである。


やっぱり冷たいな……いつか凍傷にでもなりそうだ。


「おーい……早く起きろ」


呼びかけつつユイの獣耳を触ってみる。やはりふわふわひんやりしてるな。


「くぅ……ん」


ユイが嫌そうに頭を揺らすので俺は触るのをやめた。


そしてゆっくりと紅い眼を開いたユイは身を起こし……深い、深い溜め息をついた。

はぁー……っと冷たい吐息が俺の体を摩る。


「ん……起きたか?」


「……耳を触らないでください……嫌な感じです」


「あぁ、ごめんな……ほら、抱っこしてやるから許してくれ」


「子ども扱いしないでください……っ」


ベッドから降りた俺は、俯くユイを抱き上げ、洗面所へ向かう。


「ユイ、髪とかしてやろうか? 地味に寝癖ついてるぞ」


俺は顔を洗ってタオルで拭きつつ尋ねてみる。


「……余計なお世話です」


そう言ったユイは目を擦りながら櫛に手を伸ばすが……届いていない。

……微笑ましいなこいつ。


「…………取ってやろうか? 櫛」


「……っ」


ユイは顔を赤らめ、目をそらす。


「け、結構ですっ! ほら、早く教室行きますよ」


ふん、と鼻を鳴らしてスタスタと歩いていくユイ。

ある程度俺から離れたところでユイは立ち止まり、流し目で俺を睨む。


「はいはい……分かってるよ」


『Take me too!』


ふと気が付くと、アリスが床で自分の存在をアピールしていた。

金色の文字も少し大きめだ。


「お前も連れて行かなきゃな……胸ポケットにでも入れていくか」


微笑ましい相棒を連れて、俺は部屋を出る。



教室に何が待っているかなど……このときはまだ、知る由もなかった

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