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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第一章【学園生活】
24/114

21『タイムラグ・インパクト』

~流星学園・図書室~


「痛ってぇ……何だ今の……」


突然の揺れに翻弄され、俺は図書室の棚に頭を思いっきり強打してしまった。

……地震か? いや、それにしては揺れが短かった。


くそ……スミレ先輩はどこだ? 塵が舞って視界が悪い。


ふと気が付くと、辺りは本が散らばっていたり棚が倒れていたり……

……かなりひどい有様になっていたが、何故か俺の周りは何も落ちていない。



「……怪我はないかしら? 圭一」


深みのある、色っぽい声が聞こえた。

声のした方を見ると、あの時の魔女っぽい女の人がすぐそばに立っていた。

スミレ先輩の仮面とよく似た……いやほぼ同一の黒い仮面を被っている。


「ぇ……?」


「貴方は何を困惑しているの? ほら早く立ちなさい」


魔女っぽい女性は俺の手をグイッと引き寄せ……それから優しく抱きしめてくれた


「……無事で、よかった……」


女性は背が高く、俺はいとも簡単に柔らかな感触に飲み込まれてしまった。

入学式の時と同じ……不思議な香りと温もりを感じる。


「……っ!」


頭の奥がくらくらする……何だこれ。


俺が不思議な感じに呑まれかけていると、

がしゃどくろと呼ぶにふさわしい巨大な骸骨に乗った椚先生が現れた。


「二人とも、怪我はない?……って取り込み中だったかしら」


「大丈夫です椚先生! 今の揺れは一体……」


「今の揺れは何者かによる衝撃の余波みたい。片づけが大変よ全く」


「今のが衝撃の余波!?」


「それより、ユイって言ったかしら? あの娘は誰かに呑まれたみたい。

どこに行ったかは私にもわからない……完全に気配を絶たれたわ」


「…………え?」




~混沌の街・路地裏跡地~


「……?」


ノワールは巨槌を手に首をかしげていた。


彼女の足元の地面は大きく陥没し、辺りの建物は軽く倒壊している。

そして、クレーターの中心には白い鎧の残骸が散らばっていた。


「手ごたえがまるでなかった……空っぽだったのかな?」


ノワールは鎧の残骸を覗きこんだり、軽く突っついたりしてみたが、返事や反応は返ってこなかった



「居たぞ! あいつが犯人だ」


「こっちだ、急げ!」


鎧と槍で武装した集団が、がしゃがしゃと音を立てて走ってくる。


普通に考えて警備の者たちである。


地面を大きく陥没させ、建物を倒壊させるほどの衝撃には、当然轟音が伴う。

……警備の兵士たちが、黙っているはずもなかった。


ノワールはどうして走っているのだろうとぼんやり見つめていたが、

しばらくして武装した集団が自分に向かって走ってきていると気づき


状況を理解した時にはすでにその場から姿を消していた。






「何だ今の」


『揺れたねぇ~……』


「もしかしたらスミレさんと杉原君は図書室の方に行ってしまったんでしょうか」


「だとしたらもうしばらく出てきませんねセンセー」


「今日はもう勉強することありませんし、解散しますか」


『それが良いね。部屋に帰って寝よーっと』


「あいつら夜まで帰ってこないだろうしなぁ……」


「図書室は椚先生の管轄ですし、無事だと良いのですが」


「まー無事でしょうよ。スミレが付いてるなら怪我することはまず無いと思いますし」


『スミレちゃん強いもんね』


「強いってかチートだからな」


『ところで暁先生、入学祝いってなんですか~?』


「俺ら貰ってないですよそんなの。贔屓イクナイ」


「贔屓じゃありませんよぅ……この娘が彼を選んだんですから仕方ないでしょう?」


「生き物なんですか?」


『ずるいずるいっ 私もなんか欲しいぃ』


「じゃ静華さんにはお線香買ってあげますから我慢してくださいな」


『やったぁ♪ 供えて供えて!』


「嬉しいかそれ……?」



~黒館~


「お帰りなさいませ、旦那様」


「やぁ柊、相変わらず美人だね」


「……恐れ入ります」


柊が出迎えたのは、白い鎧を身にまとう黒館の主。

彼の鎧には傷一つなく、その手には食料が詰め込まれた袋を抱えている。


「今日は久々に帰ってきたから買い出しをしてきて、

それで……聞いてくれるか柊、懐かしい子に出会ったんだ」


「左様でございますか」


柊は食料が入った袋を受け取り、やれやれと肩をすくませる。


「あぁ……彼女はとても強くなっていたよ。けど、まだ緩いな」


「旦那様……紅茶をお淹れしましょうか。土産話は書斎でお聞かせくださいませ」


「そうだな、幽玄茶葉はあるかい?」


「ふふ……つい先ほど仕入れましたよ」


柊はくすくすと控えめに笑みを零す。


「……何がおかしい」


「いえ。血のつながりは無くとも親子なのですねと思いまして」


「ふむ……ところで、アサギはどこだ?」


「お嬢様でしたら……白帝を何とかすると言って玲紀様の元へ行かれましたが」


「白帝を? 玲紀の奴……アサギにも声をかけていたのか。

アサギの手に負える様な相手じゃないって言うのに……相変わらず意地悪な女だ」


黒館の旦那様ことファルシオは吐き捨てるように言うが

……その表情はむしろ楽しげである。


「旦那様は如何なさいますか?」


「どうするって……迎えに行くしかないだろう。準備してくれ柊」


「畏まりました」



白い騎士と紅いメイドは、黒館に消えていった。


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