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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
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98『PROJECT -S-』

とある砂漠の中心では、数百もの武装した兵士がその歩みを進めていた。


部隊の隊長はこう考えていた。


照りつける日差しによる熱中症や脱水症状などを避けなければならない。よって昼間の進軍は不可とされた。かといって気温が急激に落ちる夜間の進軍は兵士に掛かる負担や疲労が大きいため好ましくない。


昼と夜の境目を選んだのは隊長のせめてもの気遣いのようなものであった


「もうすぐ休憩所だ。皆、頑張ってくれ」


『いやいや、頑張る必要はないよ~』


不意に、隊長の身体が暗い夜空に浮かび上がる。

兵士が慌てて武器を向けると、隊長の背には長く鋭く湾曲した毒針。


もがく隊長の身体が徐々に水分を失っていき、やがて動かなくなった


「くそっ出やがったな!」


辺りの兵士が一斉に銃を取り出し、地中より突き出す尾の根元に照準を合わせた


「よくもまぁ陣形のど真ん中に姿を現せたな怪物め! お前は包囲されているぞ」


「特S級外界生物『ダンタリアン』だな。貴様を連行するッ」



『私を捕まえようって……? そいつは困るなぁ』


低い轟音と共に、広々とした砂丘から這い出してきたのは淡く光る大蠍。

暗い砂漠に光る星の如く、その眼は強い光を放っていた


蠍は大きく発達した触肢をギチギチと擦り合わせ、眼をライトの如く光らせた


『私はこれから待ち合わせがあるんだ。明日の晩には境界に行かなきゃならないのさ』





『――悪いけど、死んでもらうよ』




♦♦♦



大陸を分断する大河。

不自然に隆起した河の中央には透き通る鱗が光る


辺りの水たまりや水脈をも飲み込み、大河はその水量を増してゆく。

さらに大河の上を添うように並んだ雲による局地的な豪雨。


大河は今までにないほどに強く、激しく荒れ狂っていた



『どこに行けばいいんだったかな……』


荒れ狂う河の中、二つの瞳がぎらぎらと光を放っていた



『境界、境界……どこだったかね。忘れちまったなぁ』



泡立つ水中で、流れをものともせずに進む大蛇が、光を反射しその姿を露わにする。

鋭く光るその牙が、鱗が、水を操りその流れを作ってゆく




♦♦♦



静かに燃え盛る活火山の火口の中、硬質化した岩石に覆われた卵型の物体にひびが入る。

岩石上の殻をめきめきとこじ開け這い出てきたのは一本の小さな手。


そしてもう一本の手も同じように突き出し、ぐいぐいと殻を押し広げてゆく。


やがて、卵状の物体からは燃え盛る炎に包まれた少女が這い出し、ずるりと溶岩に落下した。

少女は火だるまの如く全身に炎を纏いながらも、火口の中で浴槽の如く寛ぎはじめた


『あ~……アスタロトが呼んでるけど、まぁいっかぁ……あと五分だけ浸かってよーっと』



譫言のように呟いた少女は溶岩に身を浸し、すっと目を閉じた。




♦♦♦



次元の境界にひっそりと佇む巨大な門。

数十メートルはあろうかという高さの門を包み込む巨大な竜巻が轟々と渦巻いていた


吹き荒れる風の中、固く閉ざされた門の前に真っ白な少女がちょこんと座っている


少女の背には大きな翼。邪龍とよく似たその翼とは裏腹に、瞳は金色に輝いていた。

どこか遠くを見つめるその瞳に光は無い。


『ふふ……』


白く美しく光を放ち続けるその身体。埃や塵に塗れても輝きを失うことは無い。





『皆、来てくれるかなぁ……? ふふっ、あははは、ははははははははははは』







何とも気まずい夕食を終え、何だかんだで俺は自室にいた。


いつの間にやら外は真っ暗。

普段はある程度会話がある自室だが、この時ばかりは静まり返っていた。


あまり状況を理解できていないアリスが不安げに俺を見つめてくる。


「はぁ……」


ユイはベッドに腰掛け、さっきから寂しげにため息をついてばかりだ。

夕食を食べた後も何度か話しかけたりもしてみたが、反応はほとんどない。


撫でたりしても寂しげな表情は崩れなかった。


一体何があったというのだろうか。

今まで多少落ち込むくらいのことはあったが、ここまで冷めているのは初めてだ


なんて声を掛けてやればいいのか分からない。

もっといろんな人にこういう場合の対処法を聞いておけば良かった


「……大丈夫か? 今日はなるべく早く寝ような」


「……」


俺はユイを軽く撫でてベッドに寝るように促し、ソファーに横たわる。


「何か悩みでもあるなら言えよ。無理に聞き出したりはしないけどさ……」


何気なく言ったその一言にユイがぴくりと反応したのが視界の端で確認できた。

身体を起こして見てみると、ユイは泣きそうな顔で俺を睨むように見つめていた


「ど、どうしたんだよ」


「……っ」



――

――――


ユイの手から放たれた氷枕が俺の鼻先に直撃。

固く重いその衝撃に、俺はそのまま身を倒してしまう


視界が閉じる瞬間、少し離れたベッドに光る紅い瞳は、ぽろぽろと涙を零しているように見えた







「……言えるわけ、ないじゃないですか」



ソファーで気を失い、倒れたままの圭一の傍で、ユイが小さく呟いた。

さらに何か言いたげな表情で口を開くも、ユイは溜め息と共に俯き、踵を返した



ソファーの下で様子を見ていたアリスは、その寂しげな後ろ姿を引き留める事すらできなかった

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