EX『もしも』
「……暁先生、まだ本編は100話じゃないですよね」
「部数では丁度100話なのですよ。とりあえずやっていきましょう」
「紛らわしい……読者絶対読み飛ばしますよこの回」
「メタ発言は控えてください」
――『100部記念特別編 -もしも◯◯だったら-』――
「――というわけで、他ユーザー様からこっそり寄せられた色んな『もしも』をやっていきたいと思います。メインキャラ数名のキャラ崩壊や作者の妄想云々全開となっております。ぶっちゃけ色々やりたかっただけですので、さっと流してくださっても結構です。
それでは、作者がふと思いついた茶番にしばし御付き合い下さいませ」
~もしも校長が少女だったら~
流星学園の校長室。豪奢に彩られたその場所には書類が積まれた机と椅子。
そして紺色の魔女と呼ぶに相応しい格好の少女が居た。
「暁ー」
校長はちりんちりんとベルを鳴らす。が誰も来ない。
仕方なく校長は溜め息をついて大きな椅子から立ち上がり、ティーポットが置いてある棚に手を伸ばす。
「っ……」
校長の手とティーポットの距離、およそ30cm。
つま先で立って背伸びしたところで、校長の小さな手は届かない
「……なんで私の手の届く位置に置いてないのよ。全くダメイドなんだから……」
校長は呟きながら大きな椅子をぐいぐいと引っ張り、棚の前まで移動させた。
「よし、これで届くわね」
校長は得意げに平らな胸を張り、帽子の下に金の瞳を光らせる。
靴を脱ぎ、椅子の上で立ち上がり、ついに両手でポットを持ち上げることに成功した。
校長はパッと顔を輝かせ、椅子から降りる
「ふふ、これで美味しい紅茶が飲めるわ」
同様にして棚からカップや砂糖を持ち出し、校長は机に並べてあることに気が付いた。
綺麗な模様が描かれたティーポットは空っぽである。
茶葉はおろか、水すら無い。
「…………」
ただ、呆然と立ち尽くす。
その瞳に、希望は無かった。
~
「ん……」
ふと、校長は自宅のベッドで目を覚ました。
むくりと豊満な体を起こし、紺色の髪をたくし上げる。
白い寝巻に美しい肢体を覆った校長は、ぼんやりと目を擦った。
ベッドの傍らには、大きな魔女帽子と紺色のローブが吊り下げられている。
――ガチャ
「おはようございます、玲紀様。昨晩はよくお休みになられましたか?」
「暁……」
「紅茶をお淹れしましょうか、それともすぐに朝食の用意を……」
「……そうね。とびきり美味しい紅茶を淹れて頂戴」
♦♦♦
~もしユイが無口だったら~
ぺちぺちと、俺の頬を叩く者がいる。
またこのパターンかと内心肩を落としつつも重い瞼を開くと
……霞む視界には見慣れた紅眼。
二つの大きな瞳がじっと俺を見つめていた
「……おはよう、ユイ」
「……」
ぺちんと最後に俺の頬を一叩きしてユイは俺の胸から退き、スタスタと水道へ向かう。
今度は何をするつもりかと見守っていると、どうやら水を汲んできたらしく
少しむっとした表情でコップをぐっと俺の前に差し出してきた。
「……ん」
「何だ、汲んできてくれたのか。ありがとうな」
やはりじっと見つめてくるだけのユイを横目に、俺はコップの中身をぐっと飲み干す。
時計に目を向けるとすでに昼過ぎを指していた。ちなみに今日は休日である
床にぺたりと座り込んでじっと俺を見つめているユイを軽く撫で、コップを机に置く。
するとユイは再び何か言いたげな表情で俺の傍に座り、潤んだ瞳で見つめてきた
「……何だよ」
「……」
ユイはしゅんと俯いて尻尾を弄り始めたので、軽く構ってやることにした。
ふわふわさらさらの髪を撫でまわし、軽く柔らかな身体をそっと抱き上げ背中を擦る
ユイはやがて小さく唸りながら真っ赤になって俯いてしまった
「何照れてるんだよ。ほれ」
俺はユイの赤く染まった大福のような頬を軽く摘まんで引き伸ばす。
ユイは多少嫌そうに身を捩りつつも抵抗らしい抵抗はせず、むしろぐりぐりと擦り付いてくる。
言葉は少なくとも、ユイの尻尾はとても素直だ。
嬉しい時には千切れんばかりに振り動かし、悲しい時には項垂れる。
「構ってほしいならそう言えよ」
「……はい」
ユイは俺の膝上に伸し掛かるように体を寄せ、一言。
「……もう少し、このままがいいです」
♦♦♦♦
――というわけで、いつもとは違う二人の一面を見ることが出来たと思います。
ネタをくれた『葛餅』様と『るしうす』様には心より感謝申し上げます。
相変わらず、感想評価はお待ちしております
それでは、これからも「俺と使い魔の学園生活っ」よろしくお願いします。




