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21話

 全く。邪魔が入ったわね。今夜は一緒じゃないから、その分可愛がってあげようと……


「……はい」

「蘭奈ちゃん? あらあらお邪魔しちゃったのかしら?」

 妃結梨のおばさん。これは意外だったわ。

「何故?」

「不機嫌オーラ出しすぎよ。あ、えっとね、早めに仕事切り上げて帰ってきたんだけどゆりちゃんいないし、ケータイは置いてあるし、もしかして蘭奈ちゃんのお家かなって」

 自分の身内じゃないだけ良かったけれど、やっぱり邪魔された気分。

「はい、これからお風呂に入ります」

「まぁ♪ やっぱり蘭奈ちゃんのところだったのね。ゆっくりでいいからお風呂済ませたら2人で帰っておいで。今から腕によりをかけてお料理作るから!」

 少し嫌味な言い方をしてしまったけど、むしろ喜ばれてしまったみたい。

「分かりました」

 内心はそうそうに電話を切って妃結梨とお風呂に入りたい。その気持ちでいっぱいだけど、相手がおばさんだからそういうわけにも。

「あ、ついでだから泊まりにこない?」

「いいんですか?」

「もちろんよ。ゆりちゃんもその方が寂しくないだろうし」

 てことは今夜も妃結梨と……。うふふ、良かった。

「あ。あと、ちょっとお願いがあるんですけど……」

「なぁに? 私にできることなら協力するわ」

「実は……」



 ◇ ◇


「蘭奈、遅かったね。誰だった?」

「おばさんよ」

「ママ、もう帰ってきたの?」

「えぇ」

「あちゃあ。悪いことしちゃったかな」

 浴槽に浸かりながら、電話の話をする。

「上がったら二人でおいでって。それから泊まりにおいでって言われたわ」

「ほんと!? じゃあ今日もずっと一緒だね! あ、でもゆり片付け途中でやめちゃったからお部屋ちょっと散らかってるかも」

「大丈夫よ、私は気にしないわ」

 そういうけど、妃結梨の部屋はいつもスッキリしていて綺麗だもの。

 うちの方が物で溢れてる。まあ、目に見えるところには置いてないけど。

「あ、そういえばね、」

 妃結梨を抱き寄せる。ふぅ。

「片付けしてたらあの人とお揃いで買ったネックレス出てきたんだよね。捨てたけどさ、なんか思い出しちゃった」

 あいつは妃結梨の初恋を奪った上に振った。あたしがずっと欲しかったのに。あいつなんかよりずっと彼女を想ってきた。それまで伝えずにいたあたしも悪いっていうのはわかってる。まあ、キスもしてなかったし、貞操は守ったみたいで良かった。それが不幸中の幸いだったわね。

「あたしといるのにそんなこと言うなんて、お仕置きが必要みたいね」

「だよね……今は蘭奈と付き合ってるのに」

「なぁに? お仕置きして欲しい?」

「……」

 意地悪し過ぎたかしら。振り返った妃結梨は、頬を赤くして目を潤ませていた。のぼせたのか、それとも……。

「ゆりは蘭奈が大好きだよ?」

 嬉しい。けれど、その顔を見ると意地悪したくなってしまう。きっとあたしはまだ、満足していないのだと思う。

「あたしは、愛してるわ」

 かああっと顔全体を赤くするのをみて、少しだけホッとする。


 でも、足りない。

 まだあいつの事が彼女の中に残っているのが、許せない。


「妃結梨」

「らな……んっ」


 もっとあたしのものにしなくちゃ。

 あたししか、見えなくなるように。

後半部分、ハッピーシュガーライフとやが君を読んだ直後に書いてます。

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