20話
「じゃ、明日ね、蘭奈」
「ええ、迎えに来るから」
今日は実家の方に帰って来ました。1日だけだけどね。あの人のことでいろいろあったせいか、蘭奈はピリピリしてるけど。久しぶりの自室に、物が多くない? と感じたゆりです。みんなが帰ってくるまで掃除してようと思います。あ、別に散らかってるわけではありませんよ? ただ、もっと物を減らせるんじゃないかなーって。手始めに机の中を片付けましょう。
うーんと、トランプ……? 要らないよね、うん。文房具の類いも、流石に小学校の時のは捨てよう。それとー、この箱はゲームか……今度売りに行こうかな。やっぱり、この家にいる時間が少なくなったのもあるけど、遊ぶ物は要らないって感じちゃう。だって、蘭奈がいれば暇なんてしないもん。ずっとギューッてしてるだけで充分。蘭奈がくれたものは捨てられないけど!
「あれ、」
机の奥にあった小さなピンク色の小箱。中を見てみるとネックレスが。あーこれ、もしかして…
「そうだ、記念におそろいの物を買おう」
あれは確か、彼と付き合って一ヶ月経った日。いつも通りの帰り道……
「……ってうわああああ!!」
ゆりは何も思い出したくないのですっっ!
いいですかあの人は、悪人です! そうなのですよ! 今は蘭奈と付き合ってるんだもん! うん……蘭奈に会いたいな。ついさっきまで一緒だったけど。金曜日だし、今夜だけだし。ママたちが帰ってくるまで結構あるよ。片付けはあとでも出来るし! 掃除機だけかけて蘭奈ん家行こっと!
ってことで、これはポイっ!
机の上に置いてあった木箱は、いつも使っているリュックに入れます。これにはアクセサリーとか小物が入ってるんだけど、全部蘭奈からもらったものなの。半分くらいは作ってくれたんだよ。そうそう、この辺に……あった! ここには毛糸とか糸とか裁縫道具。蘭奈に教えてもらって、ハマったから自分で買おうって思ったもの。これもあっちに持ってっちゃお! 片付けっていうより、移動になってるけど……。
これでいいのだ! さ、行こう!!
◇ ◇
バタンッッ!
「はぁ、はぁっ……」
「妃結梨!? どうしたの!」
物音で気付いたのか制服姿の蘭奈が玄関に飛んでくる。ふぅ、つい全力で走っちゃった。
「……いや、お家誰もいなかったからっ、やっぱり夕方までここにいようと思って……で、途中であの人と鉢合わせしちゃったから、走ってきたの」
約1時間ぶりに蘭奈の腕の中です。疲れたぁ〜。
「これからはちゃんと連絡しなさい。危ないから。追ってきたの?」
「ううん。びっくりしてたみたいだけど、何も言ってこなかったし追いかけてくることもなかったよ」
「なら良かった。とりあえずお風呂に入りましょ。あたしもちょうど今入ろうとしてたところだから」
やっぱりここが一番ですなぁ♪
「んー、」
「なぁに? 妃結里ったら甘えモード?」
言葉にするのはやっぱり恥ずかしいので、ぎゅうっと抱きつきます。そのまま軽々と抱きかかえられ、お風呂に向かいます。
「可愛がってあげるわ♪」
蘭奈ってばご機嫌だ。これは覚悟しなきゃ。
プルルルル…プルルルルル……
「あれ、蘭奈電話」
「……」
あ、怒りのオーラが。
でも蘭奈って家族とゆり以外にはほとんど電話しないし、多分かかってきたってことは大事な用なんだよね、きっと。
「出た方がいいよ」
「……そうね。先に入ってて」
「うん」
明らかにお怒りの様子でリビングに姿を消す蘭奈。これは多分、ゆりに被害が及ぶパターン……うぅ。
それにしても、電話、誰からかなぁ?
前回少し長くなるかもって言ったのは、回想シーンがある事を想定してた為です。いざ書こうと思ったら元カレのこととか思い出したくねえ! ってイライラしてやめました←




