16話
「妃結梨、そろそろ起きなさい。準備するわよ」
「うーん、もうちょっと寝れるよぅ……」
「何言ってるの、まだ全然準備してないでしょ。顔洗ってお着換えもしなくちゃ」
ねむい……。目も開けられずに布団に潜ってたら剥がされました。
「んぅ……」
柔らかいものが唇に触れる。
「んっ、んん……」
「ほら、目覚めた?」
やっと目を開けると、目の前に蘭奈の顔。
「起きたくない」
「だーめ」
「じゃあもっとチューして~」
「準備してからね」
「えー」
と、いうわけで起きます。
まぶたが重い……時計を見ると時間は3時でした。眠いわけですよ。昨日は21時前には寝て今日に備えてたんだけど、こんなに早いんじゃ眠いのに変わりは無い。対して蘭奈は目ぱっちり。すっかり覚めてるみたい。
「蘭奈、何時に起きたの?」
「1時よ」
「何してたの?!」
「料理。連れていってもらうんだから、これくらいしないとって思って」
真面目だなぁ蘭奈は。
「そんなのいいのに。でもきっとみんな喜ぶよ!」
さて、準備しますか……と、言いたいとこなんだけど、ちょっと、ね?
「ね、蘭奈……準備って言っても着替えて顔洗うくらいだし、持ってく物もあとは詰め込むだけだし……」
「往生際が悪いわよ、車の中で寝れるんだから」
「そ、そうじゃなくてっ」
「なぁに?」
うぅ、もう、蘭奈の意地悪……ゆりだってそういう時くらいあるんだもん!
「だっ、だから!」
「ちゃんと言ってくれないと分からないわ」
そんなこと言って! もう分かってるみたいな顔してる!
「だ、だって、今日も明日もみんなで一緒だし!」
「それがどうしたの」
「えと、だから……あ、甘えたいのっ!」
「……」
なっ! うぅ……
「し、シて……?」
そして蘭奈はやっと笑顔になる。
「よくできました」
うー。
「(手加減は出来ないけど)」
何か聞こえたような気がしたけどスルーしときます。
ちゅっ♡
◇ ◇
「ぱぱぁ〜」
「おぅ妃結梨! おかえり!!」
久しぶりにお家に帰ってきたよ!
「本当にいいんですか? 私もご一緒して……」
「ああもちろん!」
蘭奈がいないとゆりも楽しくないもん。
「蘭奈ちゃんにはいつもゆりがお世話になってるから」
と、言うわけで家族旅行に行きますよ!! 温泉とか遊園地とか!!
時間は4時半。県外なので車で朝早く出るとのことです。
「春斗、運転頼んだよ」
「ほいほい」
あ、お兄ちゃんだ。お兄ちゃんは社会人なのでなかなか最近はスケジュールが合わないから、一緒に出掛けるのってほんとに久しぶりかも。昔はよく一緒に遊んでたし、2人でお買い物に行ったりしたけど。
「おー蘭奈久しぶりじゃないか?」
「そーですね」
「何年か振りか?」
「そーですね」
「確か前あった時は修学旅行がどうとかって言ってたような」
「そーですね」
「い〇ともネタはもう古いぞ」
「チッ」
お兄ちゃんと蘭奈はすごく仲が悪いです。と言っても蘭奈が一方的にお兄ちゃんを嫌ってるみたい?
「てかあいつは? 最近見ないな」
あの人とは家族公認だったんですね。はい。そして蘭奈がお兄ちゃんを殴ってます。かわされてるけど。
「ちょっ、おま、いつも以上にガチじゃねえかよ」
「あんなゴミの話しないでください」
「あいつゴミだったのか。案外気に入ってたんだけど」
最後の蹴りがお兄ちゃんにヒットしました。
「車乗ろ〜」
「ってー! 妃結梨! お兄ちゃんスルーか!? 悲しいぞ!」
「蘭奈〜♡」
お兄ちゃんよりも蘭奈のがだーいすきだもん!
「妃結梨、はしゃぎすぎよ」
「だって楽しみだもん! ほら、ママも早く~っ」
「はいはい。うふふ、ママも楽しみだわ! うんとはしゃいじゃお!」
よし! じゃあみんなでしゅっぱーつ!!




