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15話

「妃結梨。おいで」

「やだっ!!」

「何で?」

「やなの! もー嫌なの!」

「……おいで」

「いやーあー!」

「…………」


 普段あまり表情を表に出さない彼女の、これほどまでに絶望に満ちた顔を見たことがあっただろうか。面白いので見ていることにする。

 今ゆりは、自分の席でほっぺを膨らませてぶすくれている。若干涙目だ。そして隣の席で蘭奈が、少し顔を青くしていつものように手を広げて待っている。が、諦めてあたしと春華の席へとぼとぼやってきた。


「喧嘩でもしたのか?」

「いいえ」

「じゃあどうしたの?」

「生理前で気が立ってるのよ」

「ゆりちゃんが言ったの?」

「妃結梨の生理日くらい知ってて当然でしょ」

「いやお前それキモいから!」

 恋人だからってそこまで把握してる奴いるかよ……。

「……妃結梨? どこ行くの」

「おトイレ」

 ゆりが1人で行動するなんて…。

 ガチなやつだな。

「あたしも一緒に」

「や!」

 即答。本当に初めてなんだろうなーここまで拒否られたの。

「……体調不良で早退しようかしら」

「ゆりを置いて?」

「……」

 こっちもなかなかだな。


 ◆ ◆ ◆


「元気か?」

「……」

 ちょっとこれ大丈夫なのか?

 保護者どこ行った。

「なあ、俺たちまたより戻さないか」

 おいおいヤバいんじゃないか? でも教師が突っ込む場所じゃないしな。

「大丈夫かな? 瑠璃ちゃん」

「分からんが教師が出る幕じゃあないな」

 次は彼女のクラスの授業なんだが。

「はぁ?」


「「「…………」」」


 あれ。

「瑞穂あいつこんなんだったっけ」

「ううん」

 だよな。

 元カレの方もポカンとしてるぞ。

「ひ、妃結梨?」

「お前が振ったんだろうざいな」


「「「…………」」」


 え。

「瑠璃ちゃん。大丈夫かな?」

「いや。……妃結梨。言葉遣いに気をつけなさい」

「文句ならこれに言ってください!」

 そして彼女は去っていった。

 これはヤバい。

「何かやったのかあいつ」

 教室で蘭奈たちに事情聴取するしかないな。

 人を「これ」扱いするなんて。

「蘭奈。何かあったのか」

「何も無いです」

「妃結梨変だぞ。さっき元カレに絡まれてたけど」

「なに!?」

「あらあら」

「…………生理前で気が立ってるんです」

「気が立ってるっていうかキャラ変わってたぞ」

 確かに精神的に不安定にはなるけどな。あれは行き過ぎだろ。

「ウザいとか、人を『これ』扱いとか、気が立ってたら言うのか?」

「何言ってるんですか。妃結梨がそんなこと言うわけ無いでしょう」

 何故あたしが冷ややか目で見られている。事実を話しただけなのに。

「だろ。何かあったんじゃないかと思ったんだが」

「本当に何も無いですよ」

 その言葉は本当らしい。話しているうちに彼女が戻ってきた。とぼとぼと歩いて蘭奈のもとにやってきて無言で抱きついた。

「大丈夫!? あいつに絡まれたって」

 あれ。あれあれ。

「んぅ〜」

 何かまあ、大丈夫そうだな。いつも通りみたいだし。

 いい加減授業の準備するか。

「や!!」

 振り返るとキスしようと顔を近づける蘭奈の顔を両手で阻止する妃結梨がいた。


 生理前でって言うなら、すぐまた元通りになるだろうさ。


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