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瑠璃色教師のFirst Love(2)

 あれから数日。瑞穂は本当に遠慮が無かった。流石に他の生徒がいる時は名前で呼ぶ程度で済んだが、放課後の居残りの時は大変だった。ボディタッチなんて当たり前。キスも……舌を、入れられて。放課後の補習授業は完全に瑞穂のペースに流されている。

 あかんあかん……教師として生徒にしっかり指導しなければ……。

 そしてその日の朝。HRに事は起こった。廊下にいても聞こえるほど教室がざわついていたので胸騒ぎがした。

「おい。何やってんだ。みんな席に着けー……って、あの2人何やってんだ? 瑞穂」

 教室の後方で生徒2人が熱烈キッス。とっさに瑞穂に聞くと、彼女はいつも通りの様子で答えた。

「あ、瑠璃ちゃん。付き合ってるってことじゃない? みんなショック受けてるね〜」

「瑠璃ちゃん言うな。先生だぞ。そうなのか。妃結梨の方は彼氏と別れたばっかだろ?」

「そだねー」

 妃結梨と蘭奈の2人は職員室でも時々話題になる。生徒の間で人気があるというのは以前から知っていて、実は教師の間でも同じなのだ。まあこちら側の場合、彼女たちの人気は何故か女性に限るのだが。そんなわけで噂が耳に入りやすいため、つい先日一方が彼氏と別れたことは当然耳に入っていた。それを聞いて誰もが喜んでいたところなのだが、そうか。もう次の彼氏……じゃなかった恋人が。最近の若者は立ち直りが早いんだな。この後職員室に戻るのが恐ろしい。女性教師の数は全体の半数を超えている。なかなかの人数。これは質問攻めに遭う確率高い。あっちでもショック受けてるだろうな……。

 なにせ、こういう噂って凄まじい速さで広がるからな。

「でもゆりちゃんたちって、前から恋人同士みたいにラブラブーって感じだったよー? ね、立夏」

「ああ。それより先生、HR始めないんすか」

「そーだなー」

 いかんいかん。この後の事が憂鬱でHRのこと忘れてた。でも、そうなのか……もしかして、生徒と教師が恋人同士なんてのはもちろんいけないことだが、女性同士というのは問題にならないのか? いやいや、瑞穂とはまだ恋人ってわけじゃ……って! 違う違うまだとかそういう問題じゃない! 私が瑞穂と付き合うなんてあり得ないから!!

 とにかくあの2人はおいといてHRを始めようではないか。しかしいつも冷静でクールなイメージがある蘭奈があんなに妃結梨にがっついている……恋ってああも人を変えるんだなぁ。っていうかあれ、放っといて大丈夫なのか。窒息死させる気じゃないか?

「そこの2人、ほどほどにしとけよ〜」

「瑠璃ちゃん、瑞穂にはそうは言わないよね〜っ♪」

 な!? いやいや、言ったような。言ってなかったか? ていうか、誤解を生みそうなこと言うのは止めてくれ頼むから。聞かなかったことにしよう。

「みんなもそろそろ落ち着けー」

「ああっ! スルーなんて酷い!」

 お前もスルーするぞ。止めろと言っても絶対付き合わないって言っても、そういうしつこい奴は嫌いだとか言ってみてもスルーだろ。がっついてくるだろ。

 兎にも角にも、不安過ぎる学校生活の1日がスタートしたのである。


 ◆


「先生?! 妃結梨ちゃんと蘭奈さんが教室でキスしたというのは本当ですか!!」

「それってつまり付き合ってるって意味で!」

「どうしましょう!」

「うちのクラスみんな大騒ぎでしたよ!」

「あたしのクラスも!」

「うちもですー」

 はい。予想通り。でも何故だ?彼女らに浮かぶ表情は、輝きを発しています。一方男性陣はというと、思いっきり呆れた表情。あの2人の話題を出るとやたら盛り上がるのは毎度のことだし、またかといったところか。

「素晴らしい組み合わせだわ!」

「誰かに取られるなんて許せないと思ってた誰もが、この人なら仕方ないって感じですよね!」

「あの2人お似合いだし!」

「ああどうしよう! お祝いの品でも送りましょうか!!」

 理解出来ない盛り上がり。そんな状況に同情してくれるのは、悲しくも男性陣なのです。

「小樽先生も大変だなぁ」

「女性陣元気過ぎだろー年甲斐もなく」

「しかしまあ、最近の若者の恋愛はとことん理解出来んなー」

「うちの学校が本当に特殊なんですよそれは」

 1時間目が始まる僅かな時間をこんなに楽しめる先生も珍しいだろうな。ほかの学校からすれば。

 準備しないとな、そろそろ。

「瑠璃せんせー! どこに行くんですか!?」

「どこって、授業の準備ですけど……」

「ええ! まだ時間あるじゃないですかー。先生がいないとこの話は成立しません!」

 いやいやしてますよ十分。あたしは一切、一言もこの場で言葉を発していないはずです。

「また後で聞かせてくださいね!」

 よし、2時間目は授業なかったけど、生徒に紛れて体育にでも参加しよう。最近体動かしてないし、担当教師は男性。ちょうどいい。

「あ! 私ったら1限からあの子たちのクラスじゃない! ラッキー♪」

「いいなー!」

「羨ましい……」

 この先生方の中には、担当の学年自体が違うので、そもそも彼女らを見ることがほとんどできない先生もいる。どうしてほとんど噂話だけが頼りなのにファンになることができるのか。まあ、興味ないけど。おっとそろそろ限界だな。行くか。

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