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虚魔導石再装着

 フルプレさんと領主の交渉は成功裏に終わったらしい。

 脳筋のフルプレさんのことだから交渉事は苦手分野かと思っていたが、とにかくハッタリの効く偉丈夫である彼は意外とタフな交渉は得意らしい。

 まあ、騎士団にはいろいろな人材がいるし、細かいことは脇に控える彼らがなんとかするから、矢面の団長はとにかく怯まず堂々としていられればいいのかもしれない。

「あのフルプレって人、その領主の人より偉いんですよね? 細かい許可なんかいらないんじゃないです?」

 ファーニィが不思議そうな顔をするが、マード翁が首を振る。

「領地の中では領主が一番の決定権を持つ。それはたとえ王様相手でも変わらん。いざとなりゃ別の国についてやる、という交渉札(カード)があるから、領地の中のことに関してはあまり無体なことも言えんのじゃよ」

「そんなもんなんですか」

「要求を呑み、多少の損をしてもまだヒューベル王家の下にいるほうが安全、お得……と領主が思っているうちはええがの。あんまり反感買うと、いざ隣国との戦争になった時にさっさと敵に寝返ったりもする。もっとひどけりゃ単体で独立って手もあるのう。中央がそれを許さないほど強い間はええが、そんなもん流れで変わるからの。筋は通さんといかんのじゃよ」

「人間の国って面倒ですねぇ。エルフの族長なんてお互いだいたい親戚だし、エルフ同士でゴタついてるとすぐ人間が燃やそうとしてくるから、上の決定にはまず逆らわないんですけど」

「エルフ的には人間ってとにかく燃やす奴ら扱いなんじゃな……」

「まあ実際燃やしてきますし。接近しないで私らに嫌がらせするには火矢が最強ですし」

「殺伐じゃのう」

 まあ、とにかく。

 僕の鎧もまたツギハギの左右非対称(アシンメトリー)ではあるけど、一応形は戻ったし、虚魔導石もさっき埋め込んでもらった。

 今回は胸の虚魔導石の周囲に三つ配置した小魔導石が、軽い防御結界を構築する構造になっているらしい。

 別口で魔力充填しないといけないし、中央の石の魔力を流用できないので、数回単位の保険でしかないらしいけど、いきなり割られる危険が下がるのはありがたい。

 そして腕や腰、背中などに点線上に配置した小指のツメ大の小型虚魔導石が、中央の破損時にはそれぞれ頼りになる。

 小さいので個々の容量は中央石の数十分の一ってところだけれど、それでも全部合わせれば中央石と同等程度になる。

 通常は中央石から勝手に小虚魔導石に魔力が分配され、そっちが満タンになったら行き場のない魔力が中央石に貯まる……という方式になっていて、僕は基本、胸の中央石だけを意識して使えばいい。そしてそれがカラになったら、適宜残っているところに手でも当てて吸い上げれば予備装置としては充分機能するだろう、という思考。

「うっかり防御結界用の魔力吸っちゃわないかな、これ」

「一応、防御結界は地属性かかってるから魔力の操作感覚は変わるはずだけど……まあ、慣れで何とかして」

 大雑把だなあ……とは思うが。

 まあ、試みとしては悪くないか。どうせ駄目でも今まで通りだ。胸に攻撃もらわなきゃいいことだし。

「それにしても本当にえらい光るねこれ……」

「布だとちょっと抑えきれないかもね……」

 小さい部屋なら本当に僕が脱ぐだけで照らせそうな光量が胸から出ている。

「革のカバーとか作ろうかな」

「まあ普段は鎧着るからいいんじゃない?」

「寝る時に気になりそうだよこれ。野営中に遠くから獣とか呼びそうだよ」

 点線になった小虚魔導石もそこそこ光っているが、それは普通に服で隠れる明るさ。胸だけすごい。

 それを見ていたアテナさんが首を突っ込んできた。

「いやいや、むしろ推していこう。本気になったら脱ぐといい。絶対相手は恐れおののくに違いない」

「変態じゃないですか」

「むしろ私も真似してそういうのを埋め込みたい。『私を本気にさせたな』と言って脱いでみたい」

「変態じゃないですか」

 なんでこの人美人なのに、こうも感性が残念なんだ。

 さらにリノが真顔で指摘。

「でもコレ、光るの魔力量多い時だから一番明るいのは戦う前よ?」

「……難しいな。確かに鮮やかに光っているところを見せたいが、いきなり裸で敵前に出るのはさすがにかっこ悪い」

「どんな段階でも裸で戦いに臨むのは駄目だと思います」

 というか、その絵面をやりたいだけなら、鎧に光るだけの機能の魔導石つけたらいいんじゃ……。

 いや、言わないけど。僕の鎧がデコられてしまいそうだし。


 空飛ぶ絨毯にリノとジェニファー以外の全員を乗せて。

 見送りに来たマキシムたちとイライザさんたちに別れを告げる。

「ロゼッタさんやシルベーヌさんによろしく。仲良くやってくれ」

「言われるまでもない」

 マキシムは溜め息をつき、横目でハーディを見る。

 なんか明らかにルリさんと距離が近く、周りの目を盗んでいるつもりであからさまにイチャイチャしていた。

 他のメンバーも妙に距離が近いのがそれぞれ。

「前にパーティ内に女がいた時は普通に回っていたんだが……どうしてこうなったんだ……」

 悩ましい顔をするマキシム。

 横でイライザさんが笑う。

「あはは、いいじゃない、いいじゃない。戦いも色恋も冒険譚の華でしょ?」

「……俺は絶対染まらん」

「あら残念」

 さして残念そうでもないイライザさん。

 とはいえリーダー同士でマキシムとは顔を突き合わせることが多く、気に入っているそぶりはある。

 男女で数が同じだからって綺麗に4組カップルになるのも出来過ぎではあるけど、でもこういうのって一組出来ると、羨ましくなって連鎖反応するらしいからな……。

「仲良くやってくれ」

「染まらんと言っている!」

「僕は一般的な意味で言ってるんだよ」

「……くっ」

 なんで悔しそうな顔をするんだマキシム。

 別に君だって彼女作ったっていいんじゃないか。

「兄はあれで面食いですから。エルフのファーニィさんや美人で有名なアテナさんをはべらせているアインさんが、勝ち誇っているように見えるのでは」

「はべらせてるなんて人聞き悪い……」

「いえ、はべってる扱いでいいですが! むしろ積極的に自慢していいんですよアイン様! 有能美少女エルフ下僕持ち!」

「なんかファーニィのそれも久々だなあ」

 取り合わずにリノに合図を送り、ジェニファーを出発させる。

 目指すは王都。そしてロナルド。

 ……王都でも少し情報収集してみようかな。

 ハルドアの「人食いガディ」。

 今は気を散らすべきではないだろうけど……全く忘れるということもできそうにないしね。

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― 新着の感想 ―
・・・・・・ゲーミング鬼畜メガネ(ぼそっ)
[一言] ゲーミングボディ! いや光ってるだけで明滅や色変わったりはしないのかな
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