第1話
追いつこうとしても、その先にあるのはずっと遠くにある気がして。だから、手を伸ばしても届かないのは、すぐ追いかけるのをやめちゃう。わたしらしくなく続けてる将棋でも、勝ち方がわかんなくなっちゃうとすぐに投げちゃうし、……『すき』っていうのも、分かんないまま。恋バナとかするときも、「今はいない」で返すだけ。
「はぁ……、どっかにないかなぁ……」
せめて、ヒントだけでも。それさえあれば、なんか見つかるかもなのに。詰将棋の本を解きながら、思わずこぼれた言葉。「何を?」って訊いてくる声に、「一瞬でうまくなる方法、そんなのないって分かってるんだけどねぇ~」なんて茶化して、笑ってもらうことでごまかす。
どうしようもないくらい、好きになっちゃうような人とか、運命すら感じるような、甘くて熱い出会いとか。
……そんなのも、ぽんって来るわけないのも、わかってるんだけどね。女の子同士で、っていうのも、星花だとよく聞くけど、それでだって、あるかどうかなんて分かんないし。仲良くするのならある程度スキンシップとかはあるけど、そういうのと、恋人同士のいちゃいちゃって、全然違うもののはずだし。
わかんない、けど、今すぐ知りたいかって言われたら、そういう気持ちになれるわけじゃない。なんとなく、わたしにはまだ早いんだろうな。いつか、分かるときが来るのかなって。その、『いつか』がいつ来るのかも、全然わかんないけど。
とりあえず、今指してる対局でも覗いてみようかな。見てるのは好きだし、何となくだけど形勢とかもわかってきてるし。のめり込んで見るのは、考えてるのが声に出ちゃうからやめてるけど。
……なんとなくわかっちゃうと、それ以上は踏み込むのがだるくなる。翠ちゃんとかだったら、もっと知りたいって思うんだろうな。わたしよりも後輩なのに、顔だってまだかわいいのに、ずっと大人っぽい、わたしのルームメイト。なんとなく、ちょっと苦手かも。堅苦しいとかじゃないんだけど、とっつきにくいっていうか、ちょっと付き合いづらいっていうか。週末によくお出かけするときとか、知らないものに目をキラキラさせてかわいいんだけど、その中にもちょっとだけ固いとこが残ってる感じ。
嫌いとか苦手とか、そういうわけじゃないよ、言い訳ってわけじゃなくて。でも、……あ、終わりの時間のチャイム、鳴っちゃってるし。
「「「お疲れ様でしたーっ」」」
なんか、ふわふわ浮ついて、分かんないや。わかんなくて、投げ出しちゃいたい。帰ったらそのままベッドに飛び込んで寝ちゃいたいけど、そうもできないのがもどかしい。




