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劇場版キメェモンスター ~新たなる旅立ち~

 キメモンバトルとは!


 正式名称を「キメェモンスターバトル」という名前の、ゲームであった!!


 ルールブックの中から、頭部・右腕・左腕・胴体・下半身の五つのパーツを選び!


 自分好みの「キメェモンスター」略してキメモンを作り!!


 戦わせるのである!!!


 パーツにはそれぞれコストが設定されており、パーツコストの総計は、一定以内でなければならない!


 決められたコストを上手くやりくりし!


 いかに強力で!


 自分好みのキメモンを作り上げるかが、勝負の分かれ目なのである!!




 キメモンが完成したら、お互いに規定に沿って作られているか確認!


 いよいよキメモンバトルだ!!


 バトルには、サイコロを使用する!


 サイコロの目はキメモンのパーツに対応しており!!


 1頭部・2右腕・3左腕・4胴体・5下半身となっている!


 6の目はクリティカルヒット!


 自分の好きなパーツの能力を発動させることができるのだ!!


 バトルの時は、お互いに同時にサイコロを投擲!


 出た目の効果を同時に発動させ、相手のHPを先に0にした方の勝ちとなる!!


 キメモンのHPは、それぞれのパーツに設定されており!


 使用したパーツのHPの合計が、キメモンのHPとなるのだ!!


 強力なパーツになればなるほどHPが低く設定されている場合が多いから、バランスが非常に重要である!


 すごく攻撃が強いけど、カス攻撃で死んじゃう!


 HPはめちゃくちゃ多いけど、攻撃が弱すぎて全然勝てない!


 そんな風にならないために、プレイヤーは必死に頭をひねるのだ!!!


 ちなみに、パーツ効果には攻撃のほかにも!


 次の攻撃に威力を上乗せする「チャージ」や!


 HPを回復する「ヒーリング」!!


 相手の攻撃を反射する「ミラー」等!!!


 様々な効果が存在する!


 特徴的でかっこいいキメモンを作って、君もキメモンバトルを楽しもう!!!




 もうキメモンバトルのルールを忘れている人もいるかもしれないので、「劇場版キメェモンスター ~ド辺境農村の守護者 パーフェクト・シャーチク & カローシ・インフェルノ~」から説明文を抜粋なのである!!!


 ついに始まった、シャーチク村“呪術王”ストフレッドと、カローシ村“覇道邁進”ケビンとのキメモンバトル!!

 その戦いは熾烈を極め、四回行ってすべて引き分けという大激戦!

 ここで勝負をつけるべく、第五回戦にはお互い、今まで使わなかった機軸のキメモンを繰り出したのである!!


 しかし!!!


「きょうれつなクロスカウンター!!」


「くぅー! しびれるぜぇー!」


「どっちも、いっぽもひかねぇ!!」


 五度の相打ち!!

 しかし!

 どちらも引く気配は、全くないのである!!


「こうなったら、もうあとにはひけない!!」


「あたりまえだね! まけてたまるかぁあああ!!」


 壮絶なまでの負けん気の強さ!

 並の五歳児であれば、とっくに寝落ちしているであろう程に双方疲労していることは間違いない!!

 それでもお昼寝タイムの誘惑を打ち払い戦い続けるのは、ひとえに!


 コイツにだけは絶対に負けないという、強い想いゆえなのである!!!


「くそ、どうする・・・! このままじゃぁ、らちがあかない・・・! たたかいかたをかえて、リズムをかえるか・・・!」


 ケビンは、テンポを変える策に出ることにしたようであった!

 対するストフレッドはと言えば!!


「てめぇーをまげたら、そこでしまいなんだよぉ! まっすぐ、つらぬいてやるぜ! じぶんってやつを!」


 例え一歩でも、後ろになんざぁ引かねぇ!!!

 本当に恐ろしいのは、歩みが緩んでしまうことでも、足を止めてしまうことでもない!!

 止まっても緩んでもならないと自分が思っているその場面で、自分で自分に言い訳をして妥協してしまうことなのだ!!!


「ここで、二人の判断に差が出たぞ!!」


「いよいよ決着だぁー!!」


「ひゅー! もえるぜー!」


 ギャラリーのテンションは爆上がり!!

 会場のボルテージは最高潮に達しているのである!!!


「どうやら、ケビン君はキメモンの設計思想を変更するようだね」


「うん。といっても、マイナーチェンジぐらいだとおもうよ。じゅうりょうきゅうをデザインしてたのに、きゅうにべつけいとうのせっけいは、できないからね」


「そういうものかもしれないね。確かに、複数属性の魔法が使える人間でも、しばらく単一の属性ばかり使っていて、急に別のものを使おうとすると、戸惑うことがある。と、言っていたな」


「どうだろう。それと、おなじようなものなのかな。とにかく、そうかんたんに、きゅうげきなきりかえは、できないとおもうよ」


 すっかり解説要員と化した、ヴィッフェンドルフとタップ!!

 二人が真っ黒でクリームとかが挟んであるクリームサンドクッキーをミルクにダイブさせている間に!

 ストフレッドとケビンは、キメモンを完成させたのである!!

 ここにきてようやく、場の空気に変化が訪れた!

 BGMが、何らかのオープニング曲に切り替わったのだ!!

 そう!

 いよいよ!!

 ラストバトルなのである!!!


「よぉし、いけ! イチゴ・ノーカー!!」


 ケビンが繰り出したのは、重量級キメモン!!

 一撃の火力があるパーツを、低火力重装甲系パーツでカバーした構成だ!

 主力となる攻撃であれば、大抵のキメモンは2発で沈むだろう!!

 サブとして付けた低火力重装甲系パーツを引いたとしても、火力は主力の三分の一ほど!

 通常であれば、かなりヘビーなチューニングと言える!!


「砕け!! ノーソン・カリュード!!」


 対するストフレッドは、一撃必殺紙装甲!!

 基本と言われるキメモンの三分の一ほどの体力に!

 盛り込めるだけの火力を詰め込んだ、「俺が浪漫だ」と言わんばかりの佇まい!!

 ありとあらゆる技術をつぎ込んで作り上げられたそれをを見た瞬間、タップが驚愕の表情で叫ぶ!!!


「あ、あのキメモンはっ!」


「知っているのかね、タップ君」


「まえに、スーさんとはなしてたんだ。じつようせいはかいむだけど、やるとしたら、すごいはかいりょくがだせるって」


 そんな説明をしている間に、ミス・キタアカリによって戦闘開始の合図が高らかに宣言される!!


「それでは、キメモンバトル! レディー! ファイッ!!!」


「あの女性もすごいな。ずっと同じ調子で審判をしている。いや、それどころか、どんどん気分が高まっているかのようだが」


 ヴィッフェンドルフの言う通り!

 レフェリーであるミス・キタアカリのテンションは、長時間複数回のバトルにもかかわらず上がる一方!!

 釣り目ガチなその目は、ギラッギラに輝いているのである!!!


「こんなしあい、めったにおめにかかれないからね」


「それは良い意味かね? 悪い意味かね?」


「どっちだろう。でも、スーさんもたのしそうだし、ぼくもすっごくたのしいし。いいいみじゃないかな」


「その割には、冷静な様だが」


「きょうは、かいせつやくだからね。ほんとうはおもいっきりさけびたいけど。それは、スーさんがかったときに、とっておくよ」


「ストフレッド君が勝つと思っているのだね」


「んーん。しょうぶは、やってみないとわからないよ。だけどさ、スーさんがかつつもりでやってるなら、ぼくもかつつもりでいるんだ」


 友とは、そういうものだ!!

 そう語るようなタップの背中に、ヴィッフェンドルフは眩しいものを見るかのように目を細める!

 かつて、ヴィッフェンドルフにも、無二の友と呼べる男がいた!!

 同じ冒険者パーティとして苦楽を共にしたその男は、「勇者」に指名された王族のアホボンの行いを咎め!

 追い出されるような形で、パーティと王都を後にした!!

 今、再会を果たしたその男は!

 あの頃と何も変わらず、誰の目にも恥ずかしくない生き方をしていた!!!


「良い友達を持ったものだね」


「んー、そうだね。スーさんといっしょにいるとつかれるけど、たのしいよ」


 そんなことを言っているうちに!!

 第一投目!

 ケビンの手は、攻撃力0のミス目!!

 対するストフレッドが出したのは、6の目である!

 しかし!!


「ざんねん、ミスだ!」


「ん? 6の目はクリティカルヒットのはずではなかったのかね?」


「それが、スーさんがいまつかってるキメモンの、とくちょうなんだ」


 クリティカルヒットである6の目が出た場合!

 通常であれば、自分の好きなパーツを選び、発動させることができる!!

 しかし!

 数あるキメモンパーツの中には、例外となるものも存在した!!


「こういりょくであるかわりに、クリティカルヒット。つまり、6のめがでても、えらぶことができないパーツが、あるんだ。スーさんがつかってるのは、そのパーツなんだよ」


 通常であれば、パーツの目と、6の目!

 つまり三分の一で出るはずの最大火力が!!

 パーツの目出でのみ、六分の一の確率でしか発生しないのだ!

 それだけではない!!


「もうひとつ、こうげきりょくじょうしょうけいパーツが、ノーソン・カリュードにはついてるんだ」


「それもまた、特殊なものなのかね?」


「そうだよ。すごく、きょくたんなやつ」


 パーツ自体の威力は0であるものの、他のパーツに影響を及ぼす種類のもの!

 その中でもとりわけ特殊なパーツであった!!

 指定した攻撃パーツが選択されたとき!

 二分の一の確率で、威力が0に!!

 もしくは、二倍という、ぶっ飛んだ火力に大幅増量!!!


「つまり、ノーソン・カリュードがさいだいかりょくをだすには、ろくぶんのいちのちゅうせんのあと、さらににぶんのいちのかくりつを、ひきあてないといけないんだ」


「確率十二分の一、か。相手が三分の一で高価力を発揮するキメモンバトルで、その確率はあまりにも冒険的すぎやしないかね。まぁ、しかし。だからこそ、か」


 そう!

 だからこそ!!

 そこに、求める!

 ロマンを!!!


「ひぃー! ひやあせがでたぜ!」


「シャーチクむらのやつ、なんてイカれたキメモンもってくるんだ!!」


「とりはだが、たちっぱなしだよ!!」


 ギャラリーの歓声の中、睨み合うストフレッドとケビン!!

 苦い表情のケビンに対し!

 ストフレッドの目に宿るのは、獰猛な肉食獣の如き光!!

 まるで、食卓に並ぶ刺身を突け狙うにゃんこのような煌めきに、ケビンは気圧されるのである!!!


「ケビン君が睨み合いで押されているようだね。当然か」


「たしかにひとは、ときにあきらめることで、まえにすすむことができるばあいもあるよ。でも、いまはそういうときじゃない。いじややせがまんを、つらぬくばめんなんだ」


「どうでもいいんだが、君とストフレッド君は時々年齢不相応な言動になることがないかね?」


 そんなことを言っている間に、第二投!!

 ダイスを投げるその瞬間!

 ケビンはストフレッドの顔を見ていた!!

 この厳しい状況!

 辛い戦いの中、どこまでも楽しそうなその表情!!

 なぜ、この状況を楽しめるのか!

 ケビンが辛いということは、ストフレットも同じように辛い戦いのはずなのだ!!

 にもかかわらず、一体どんな差があるというのか!!!

 この時!

 ケビンの脳裏に、突然別の考えが浮かび上がった!!

 あるいは、逆ではないのか!

 ストフレッドからすれば「何故ケビンは楽しそうではないのか」が疑問なのではないのか、と!!


 キメモンバトルとは!!

 たしかに、勝つことも目的の一つではある!

 しかし!!

 自分が考えた相棒と共に戦うことも、間違いなく楽しみ方の一つなのだ!!!

 にもかかわらず、自分は今、勝つためだけに作ったキメモンでバトルをしているのではないか!

 それは自分にも!!

 キメモンにも嘘を吐くことなのではないか!!!


 ケビンが投げたダイスが示したのは、低火力攻撃パーツの目!!

 いつもであれば、攻撃力0の装甲パーツか!

 あるいは、紙装甲の火力アップ補助系パーツで使うはずの目!!

 対するストフレッドが引き当てたのは!!!


「で、でたぁー!!」


「こうげきのめだっ!」


「こんなにはやく、ひきあてたのか!」


 最大火力!!

 攻撃パーツであった!

 もっとも、本当にマジでビビるぐらいヤバい攻撃が発動するかは、未知数!!

 二分の一の抽選が必要なのである!!


「ええと、123がでたら、こうげきりょくぜろ」


「456のどれかがでたら、こうげきりょく2ばいだ!」


「いったい、どうなるんだー!?」


 期待と不安の声に包まれ、ストフレッドがダイスを握り締める!!

 その瞳にあるのは、ただキメモンを楽しむ気持ちのみ!!!

 もはや、出る目を見ずとも、ケビンには勝敗の行方が分かっていた!

 勝つことに固執し、苦しみと妥協でキメモンを作ってしまった自分!!

 かたや、そのすべてを楽しみ、ただ己と!

 己の信じたキメモンと共に戦おうとする、ストフレッド!!

 確かに、時に妥協や勝利への執念が必要なこともあるだろう!

 だが!!

 今この瞬間に本当に必要であったのは!

 ただ純粋に、楽しむことであるはずなのだ!!!


「まけたぜ、シャーチクむら。いや、すとふれっど」


 ストフレッドの手から放たれたダイスの目が示したのは!!


 6!!!


「いっけー! ノーソン・カリュード!! りぼるびんぐ・なっくる!!」


 まさに超火力!!

 重量級キメモンであろうと跡形もなく消し飛ばす拳!

 うなりを上げるその一撃が、イチゴ・ノーカーに直撃!!

 HPを0へと誘うのである!!!




 ふたを開けてみれば、第五試合はたったの2ターン!!

 劇的なフィニッシュで、ストフレッドが勝利を飾ることとなった!

 しかし!!

 子供達の心には、もっとも強く印象に残った試合になったのである!!!


「やるな、すとふれっど」


「けびんこそ。なんかいか、まけるかとおもったよ」


 戦いが終われば、お互いの健闘を称え合う!

 握手をする二人の顔は、どこまでも晴れやかであった!!


「おれは、かろーしむらの“はどうまいしん”けびん、っていうんだ。わすれるなよ」


「しゃーちくむら、“じゅじゅつおう”すとふれっど。おたがいにね」


 固く握手を交わす二人に、惜しみない拍手が送られる!

 そんななか!!

 タップだけはあんぐりと口を開け、愕然とした表情を見せていた!


「スーさん、じゅじゅつおうっていえるようになったんだ」


 そう!

 いっつも「呪術王」と言おうとして、舌を噛みまくっていたあのストフレッドが!!

 ナチュラルにスキル名を言えていたのである!!!


「男子三日会わざれば刮目して見よ。ということわざがあるそうだよ」


 今回の戦いを経て、ストフレッドは挫折を乗り越えることができた!!

 小さいながら、確かに一つの成長を果たしたのである!!!

 今後も様々な困難が、彼の前に立ちはだかることだろう!

 だが、歩みを止めない限り!!

 いつかきっと、乗り越えることができるのだ!!!

 ちなみに!

 直近でいうと、今まさにシャーチク村で新たな壁がどったんばったん大騒ぎしているのだが!!

 この時のストフレッドは、知る由もなかったのである!!!

次回、村人がたくさん出てくるとあとがきで書きましたね


あれは嘘でした(

予想外にキメモンバトルが盛り上がったので、村人バトルは次回に持ち越しです

ついでにいうと、次回でクライマックス

次々回で最終回という予定になっております

いよいよこのお話も残すところわずかとなってまいりました

最後まで全力で走り切れるよう、がんばりたいと思います

がんばらないと、次回辺りで息切れしそうなんで


書くの大変なのよこの話・・・!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 指定した攻撃パーツが選択されたとき! > 二分の一の確率で、威力が0に!! > もしくは、二倍という、ぶっ飛んだ火力に大幅増量!!! >「ええと、123がでたら、こうげきりょく…
[一言] タップ君は絶対に買ってますね! なんで上中下巻に分けなかったんだ! 分厚過ぎて持ち歩けないよぉ 枕にしても高すぎる 等々、 お子さま達に大不評の  民明書房刊「キメモンバトル一子相伝チュー…
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