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劇場版 超装甲ハヤト 天界分け目の農村MOVIE大合戦

 少年は、「ヒーロー」に憧れた!!

 すごいパワーをもって、悪い奴等をぶちのめす!!

 そんな存在になりたいと夢想していたのである!

 しかし、単なる農家の次男坊!!

 何ができるわけでもないのが、現実であった!

 憧れを抱えたまま成長した少年は、ある時無謀な行動力を発揮する!!

 農協のトラックに紛れ込み、都会を目指したのだ!

 そう!!

 家出である!!!

 若干十二歳ではあったものの、そこはファンタジー世界!!

 冒険者ギルドとかで地味に食いつなぐことができたのである!

 能力の扱いにも慣れ、なんとかそこそこのゼニを稼げるようになった、そんな時!!

 魔獣の暴走!

 スタンピードと呼ばれる魔獣災害が発生した!!!

 逃げ惑う人々!!

 民を守るべき兵士達は、敵わぬと見て撤退!

 冒険者達も、我先にと逃げ出していく!!

 そんな姿を見た少年の失望は、凄まじいものであった!

 呆然と立ち尽くす少年!!

 あまりに恐ろしく、魔獣に立ち向かうこともできず!

 かといって、誰かを見捨てて逃げることもできない!!

 どうすることもできず、呆然とする少年の横を、一人の男が通り過ぎていった!

 目の前に迫る、魔獣の群れに向かってである!!!

 それは、うだつの上がらない中年の冒険者であった!

 いつもしょぼい仕事をこなし、酒をかっ食らっているおっさんであった!!


「おっさん、どこ行くんだよ!」


「見りゃ分かんだろ、魔獣ぶん殴りに行くんだよ」


「勝てるのかよ、あんなに沢山いるんだぞ!」


「知らねぇよ、そんなもん。別に負けたっていいんだよ。逃げる時間でもかせげりゃ。正義の味方になるのもわるかねぇさ」


「正義の? 何言って……」


「いいか坊主。コイツは理不尽だ。別に何も悪さしちゃいねぇ、真っ当に生きてる連中がひでぇ目にあいそうになってる。あの連中はそこらの兵隊様や冒険者様と違ってな、必死こいで立派に生きてる。俺はそれが、人として正しい道だと思う」


「正しい、道」


「そういうのをな、本当の正しい義、正義っていうんだ。なのにそれが、理不尽でひでめぇに会いそうになってる。どうにかしてぇ、味方になってやらにゃぁならんと思うだろ」


「味方、って」


「俺にできるのなんざぁ、精々暴力振るって金稼ぐぐれぇだ。ただのクソ野郎だよ。でもな、後ろにいる正義に味方することぐれぇなら出来るんだ」


「だからって、怖くないのかよ!」


「怖えぇに決まってんだろバーカ! でもなぁ、正義の味方になるんだ、カッコつけるんだって思うとなぁ! 不思議と足が前に出るんだよ、男ってのは! バカだからな!!」


 おっさんは笑いながら、魔獣に向かって進んでいった!!

 少年は己の手のひらを見つめる!

 そこにあるのは、ほんのわずかな冒険者生活で、暴力に慣れた手!!

 後ろにあるのは、自分の生まれ故郷と同じ、純朴で懸命に生きる、守りたいと思う人々!

 目の前を行くのは、武器を携え戦わんとする男の姿!!

 味方をするといった正義に背を向けて、理不尽に暴力で挑む男の姿である!!!

 それまで微動だにしなかったはずの足が、一歩!

 また一歩と動き出した!!

 いつの間にか駆けていた少年の全身を、強固な装甲が覆っていく!!!

 なぜか今まで一度も成功しなかったスキル「専用強化外骨格生成」の完全起動が叶った瞬間であった!!

 少年は、「正義の味方に」憧れた!!!

 自分が正義の行いをするわけではなく!!

 身を守る術すら持たぬ、力なき正義に味方をするものに!


 スタンピードを辛くも退け、街には平和が戻った!!

 それと同時に、少年は故郷の村に帰って行ったのである!

 わずか三か月足らずの冒険者生活は、少年を大きく成長させた!!

 そして今!

 村を、そこで生まれ育った純朴な一人の少年を!!

 巨大な理不尽が襲おうとしている!!!


「難しいことはよくわかんねぇーけどな。あのアホがそんな大それたモンなはずねぇーんだよ。なんかやらかしたら、ゲンコツでもくれて叱ってやりゃいいんだ」


 大人達が村長の家に集まっていた、同じころ!

 農家の次男坊、スキル「専用強化外骨格生成」を持つ子供達のまとめ役ハヤトは、エルフ達の元へと向かっていた!!

 自分が味方をすると決めた「正義」に背を向けて!

 守らなければならぬものではなく、戦うと決めた敵を正面に見据えて!!

 けして正しいこととは言えぬ、破壊的な暴力をその手のひらに強く握りしめ!!!


「正義の味方、か。カッコつけすぎかね。でも、アイツらにカッコ悪いとこ見せらんねぇーしな」




 エルフ達の元に、矢文がぶち込まれた!!


 は? 何言ってんだお前、バーカ! っつーか、ストフレッド出掛けてていねぇーしw まともに調べ物もできないとかwww 情弱すぐるw 無駄足乙いわwww


 メッチャ煽っていくスタイル!!!

 ちなみに、この文面を考えたのは神父であった!!

 一通140文字な矢文文化でいうと、かなり古典的な文体である!

 神父は地味に古風な男なのだ!!


「ふざけやがって! 我等は神様のご意志で動いているというのに!」


「まして、出掛けているなどと! どう考えてもそんなわけないだろう!」


 ド辺境にある農村の外というのは、ウルトラ危険地帯である!!

 子供がお出掛けで村の外にいる確率なんて、超低いのだ!

 もし本当だったとしても!!

 村の外に出る方法なんぞ、農協のトラックぐらいしかない!!!

 あれはレンタル料金がそれなりにお高いので、子供が気軽に借りられるようなものでもなかった!!

 つまり乗っていくことがあるとすれば「結構大きな用事」なので、事前にちょっと調べればすぐにわかるはずなのだ!


「シャーチク村でトラックを借りる必要があるようなことは無かったはず」


「ああ。大体、コッチはしっかり村の外から見張ってたんだ。今日飛んでったのは、国教の異端審問局元局長“光の”ヴィッフェンドルフ猊下の専用戦闘艦だけだ」


「あんなのに一般の村人が乗るはずないもんな」


 偉い人の船に一般村人の子供が乗ってるはずがない!!

 変なところで常識が邪魔をして、判断を誤るパターンのやつなのである!!!


「仕方がないのぉ」


 エルフ村の長老は大きくため息を吐くと、懐から一枚の紙を取り出した!

 中央に円形の魔法陣らしきものが描かれたそれを、びりびりと破り捨てる!!


「全員に通達。目に付いたものすべてを捕縛し、呪術王の力を持つ子供を探し出すのじゃ。多少怪我をさせても、最悪、命を奪うことになったとて仕方あるまい」


 戦闘民族であるエルフは、割と命のやり取りに躊躇いが無かった!

 まして今回は神様の後ろ盾あってのこと!!

 ためらう理由はないのだ!

 無論、運命を司る神の一柱も、そのつもりでけし掛けていたのである!!


「掛かれ」


 長老の指示の元、エルフ達は一斉に動き出した!

 戦闘民族であるエルフ達の猛攻に、村人達はいったいどれほど耐えることができるのだろうか!!

 戦いのゴングは、ついに打ち鳴らされたのである!!!




 エルフ達に戦いを挑もうと向かっていたハヤトであったが、その途中でエルフと遭遇!!

 戦闘状態に突入していた!!!


「くっそ、流石戦い慣れてやがるっ!」


 エルフは常に三人一組!

 スリーマンセルで戦いを挑むものであった!!

 お互いに長所短所を補いながら、確実に相手を仕留めるのである!!!

 この三人組は普段から同じメンバーによって構成され、同じ任務にあたるため息もぴったり!

 それが、二班!!

 つまり六人がかりで、ハヤトに襲い掛かっていたのである!

 流石のハヤトも、これには防戦一方であった!!

 しかし!

 逆の言い方をすれば、六人相手に一歩も引かずに戦っていたのである!!

 これには流石のエルフ達も、驚き至極であった!!!


「バカなっ! 何だコイツの動きは!!」


「俺達は一班で魔獣を狩ることだってあるんだぞ! それをコイツ、二班も相手にしてやがる!」


 圧倒的説明台詞!

 エルフの人達は基本的に読者フレンドリーなのである!!!

 しかし、言い方はアレにしても、内容は全くの事実であった!

 すなわちハヤトは、かなりの実力を持つエルフ六人を相手取り、拮抗した戦いを繰り広げていたのだ!!

 普通に考えても、荒事に慣れた職業傭兵六人とまともに殴り合っているのである!

 もはや、異常事態と言えた!!

 ところが!!!


「何をやっている! 相手は子供一人とはいえ、特殊なスキルの使い手だぞ! 油断するな!」


「俺達も手を貸す! 速攻で終わらせるぞ!」


 さらにもう一班、エルフが戦いに加わったのである!!

 これにより、均衡は一気に崩れ去った!


 三方向から同時に打ち込まれる弓矢!

 躱すよりも装甲で弾こうと判断したハヤトだったが、突然矢じりの先に魔法陣が展開!!

 短く「しまったっ!」と叫ぶ暇もあらばこそ!

 矢の軌道がぐにゃりと曲がり、ハヤトを中心に同心円状で高速で回り始める!!

 魔法陣から洩れる燐光が作り出した光の円が、ハヤトの体に絡みついた!

 振り払おうとするものの、まるで粘性を持つ物のように離れず、その重みで動きを阻害する!!

 腕部リボルバー衝撃装置による衝撃でそれを弾き飛ばそうとするハヤトだったが、刹那!


「うわぁああああ!?」


 紫電の閃光が迸る!!

 それは、詠唱に時間がかかる雷系統の魔法であった!

 一時的に足を止めさせたことで、詠唱する隙が生まれたのだ!!

 それでも、何とか体を動かそうともがくハヤトだったが!


「「「貰った!!」」」


 残る三人のエルフが、上空へ跳んだ!

 呪文と印によって、三人がかりで魔法を発動!!

 生み出したのは、巨大な氷の槍であった!


「これだけの質量であれば、さしもの装甲も役には立つまい!」


「貫けずとも、潰れて終わりよ!!」


 すわこれまでかと思われた、その時!!


「手札からマジック発動! 高出力ビームシールド!!」


 ハヤトの頭上に、光の壁が現れた!!

 それに触れた瞬間、氷の槍は無残に砕け散る!

 同時に!!

 離れた位置から、一本の矢が飛来する!

 エルフ達に向けられたそれは、中空を切り裂きながら分身するようにその数を増していった!

 一本が二本、二本が四本、四本が八本、十六、三十二!

 あっという間に三桁を超す数へと分裂した矢による強襲に、エルフ達は必死に逃げていく!!

 それによってハヤトを束縛していた魔法が崩れた!

 膝から崩れる落ちるハヤトの前に、駆け付けた二人の村人が立つ!!


「おのれ、何やつ!!」


「うるせぇ! 人んちの村で好き勝手やりやがって!」


「そうだバァーカ! 俺ぁ今日デートだったんだぞ!!」


 そこに立っていたのは、ハヤトもよく知る二人であった!


「トゥテクワァさん! トバスィさん!」


「ったく、無茶しやがって、この単純バカが」


 村にある商店店主トゥテクワァ!!

 子供向けの品を多数備えるまだ年若い青年が有するは、スキル「思念体具現化」!

 イメージを実体化させるという稀有な能力ではあるものの、その強度は想いの強さに左右された!!

 そのため通常はさして強力なものは作りだせないのであるが、トゥテクワァはそれをおもちゃを使うことで強化していたのである!

 先ほど使ったのは、トレーディングカードゲームの一種であった!!

 今もトゥテクワァの手には、カードデッキが握られている!!!


「ここまで走ってくるだけで、息キレちゃったんだけど」


 へらへらと笑う青年は、村で一番の若手狩人トバスィ!!

 手にしたものを何倍にも複製するスキル「複製魔法」を操る男である!

 強力なスキルではあるものの、その持続時間はごく短い!!

 今一使いにくいそれを、トバスィは飛び道具に用いることでカバーしていた!

 弓の名手でもある彼の手にかかれば、一本の矢が数百名による斉射へと変わる!!

 村の外に蔓延る魔獣をも仕留める狙撃の技は、腕に覚えのハンターであった!!!


「姿が見えないから、こんなことだろうと思ったぜ」


「大人達もどうすればいいか意見が割れるだろうから、少しでも時間を稼ごうとか思ってたんだろ、どうせ」


「ったく、バカだねお前は。うちの村に子供差しだそうだなんてヤツが、一人だっているはずねぇだろ!」


「周りをよぉっく見てみなよ。とっくにドンパチ始まってるからさ」


 トゥテクワァとトバスィの言葉に、エルフ達とハヤトが周囲を見回す!

 聞こえてくる爆音!!

 空を切り裂き輝く閃光!!!

 まさにそこかしこで、戦いが始まっているのだ!!

 ハヤトの顔に浮かぶのは、驚きの色であった!


「お前が思ってるよりもな、この村の連中はカッコつけしいなんだよ」


「ま、ちょっと事情もあって、勢い込んでるところもあるけどね」


「え? なんか、あったんですか?」


「話は後々。エルフの人達、怒っちゃったみたいよ」


 トバスィの言う通り、エルフ達は怒りの表情でハヤト達を取り囲んでいる!


「うっしゃ。ハヤト、思いっきり切り込め。後ろは任せろ」


「俺ら後方支援系だしね」


「分かりました!」


 ハヤトはうれしかった!

 ここには、この村には!!

 こんなにも頼もしい人たちがいるのである!!!


「案外な、そこら中にいるもんなんだよ。正義の味方ってのは」


「ひゅー! かぁーっこいー!」


「うっさい! オラ、早く行けハヤト!」


「はいっ!!」


 背中を支え!

 押してくれるその声に!!

 ハヤトは腹の底からの返事を返すのであった!!!

あんま本編関係ないじゃないかって?

うるせぇ!!

書きたかったから書いたんだよ!!!


まあ、あのー、次回ほかの村人達がたくさん出ますんねで

キットダイジョウブデス

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― 新着の感想 ―
[一言] 当方に迎撃の用意あり!
[一言] おっさん!
[良い点] >まあ、あのー、次回ほかの村人達がたくさん出ますんねで wそれ、本編(ストフレッド視点)そっちのけで、辺境の飛んでも魔法(作者よりすでに、実は中央より辺境のほうがヤバいと報告済み)蹂躙戦…
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