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エルフ/森の中の幻

 割と何度か言っている事実ではあるが!

 この世界の人間はほぼすべて、スキルによって性格が左右されていた!!

 例えば!

 スキル「ホウキで玄関前のゴミを掃除する」を有する村長は掃除好き!!

 スキル「怒りの鉄拳」を持つミッシェルは拳で物事を解決しようとする!

 スキル「小麦粉使い」を操るパン屋の一人娘ココ(14歳)は小麦粉をこねるのが好き!!

 スキル「隠密」を駆使するマッチュンは、新婚家庭の寝室に忍び込んで、そっとベットの横のテーブルにワインとカップ二つを置いて、小粋に花などを飾り付けることを至高の喜びとしている!!!

 こんな具合に、スキルとはその持ち主の人となりに密接にかかわっているものなのであった!!

 ゆえに!!

 大抵の人間は相手の性格をスキルで判断するものであり!

 それがこの世界の常識であり、エビデンスも取れている揺るがざる絶対法則だったのである!!

 だからこそ!

 エルフ達はあのハイパースペシャル大魔王と同じスキルを持つストフレッドのことを!!

 大体同じような性格であると判断したのである!!!

 しかし!

 スキル「呪術王」はこの世に未だ2例しか確認されていないスキルであった!!

 なので!

 一体スキルがどのように性格に反映されるか、全く分かっていなかったのである!!

 とはいえ、危うく世界を掌握しかけた「ハイパースペシャル大魔王」のインパクトは絶大!!!

 多くの人間が!

 いや!!

 ほぼすべての人間が、スキル「呪術王」を持つ人間は「ヤベェやつ」になると考えていたのである!

 BUT!!

 しかしである!!!

 事実はちょっとだけ、違っていたのだ!!

 スキル「呪術王」の性格への影響!

 それは!!


「基本的にアホ」というものだったのである!!!


 ハイパースペシャル大魔王は「邪悪な意味での救えないアホ」であり!!

 ストフレッドの方は「可愛げのある、許せる感じのアホ」だったのである!

 だが、このことはエルフ達は知らないどころか、考えすら及ばない事実であった!!

 というより、この事実を知るのは神のみ!!!

 当然、「運命を司る神の一柱」はそのことを知っていたが、あえて伏せていた!

 そのうえで、ストフレッドが邪悪な存在であるかのように吹き込み!!

 スキルを使って村を掌握、支配下に置いているかのように匂わせ!

 これを討伐することはほかの神々も納得し、推奨していることだと錯覚するような言い回しをし!!

 あまつさえ、それは他の種族のためになるというような義侠心に訴えかけるようなことをし腐ったのである!!!

 エルフという種族が持つ歴史や気性を悪用したのだ!!

 騙される方が悪い、とばかりも言えないだろう!

 何しろ相手は曲がりなりにも神様!!

 その性根を知らなければ、その言葉を疑うのは難しいであろう!

 特にこの世界に生きるものであれば、常識が邪魔をするが故になおさらなのである!

 ぶっちゃけた話!

 騙されたエルフ達が悪いとは言い難く!!

 シャーチク村も完全に被害者かと言えば、スキル「呪術王」を匿っている以上、地味に後ろ暗いところがあるという状況!

 どっちも一方的に悪いとも言えないし、いいとも言えない!!

 複雑極まる現状で、一つだけ言えることがあるとするならば!


 運命を司る神の一柱だけは殴る!!!


 といったところであろうか!

 そんな厄介な状況になっているとはつゆ知らず!!

 ストフレッドとタップは、隣村であるカローシ村へ向かっていた!

 移動の足は、ヴィッフェンドルフの自宅兼空中戦闘船である!!

 さぞや楽しそうに過ごしているのかと思いきや!

 ストフレッドの表情は、苦悶に歪んでいた!!


「く、るしい・・・! いきが・・・いきができない・・・!」


「スーさんむりだよ! もうやめようって! こんなのよくないよっ!」


「だけど、ここであきらめる、わけにはっ!」


「だいじょうぶだよ、あきらめても! だれも、わるくいったりしないよ! もともと、むりだったんだ! そんないっぱいのくっきーばっかりたべるなんて!」


 カローシ村への道中、ストフレッド達はさっそく買ってきたお菓子を食べることにした!

 みんなで一緒に買ってきたお菓子を、みんなで一緒に食べる!!

 子供達にとって、旅の醍醐味の一つと言えるだろう!!!

 しかし!!

 そこで、大きな問題が発生してしまっていた!

 ストフレッドが買ってきたお菓子が軒並みパッサパサの粉系のヤツだったため!!

 口の中の水分を全部持っていかれてしまったのである!!!


「くそ・・・! もっていかれた・・・くちのなかの、すいぶんを・・・ぜんぶ・・・!」


 砂漠!!

 岩と砂のみで彩られた不毛の地!

 ストフレッドの口内は、今まさにそんな状況!!

 喉の奥がくっつき、塞がれるような感覚!

 そんな危機的状況のストフレッドに!!

 差し伸べられる!

 救いの手!!


「冷蔵庫に、ミルクが入っているよ。私は操縦で手が離せないから、タップ君、用意してもらえるかな」


 僥倖!!!

 自宅兼空中戦闘船に乗っていたことが、ここで生きる!!

 こうして、ストフレッドは無事おくちの健康を確保!

 安心して残りのクッキーやクラッカーを消費しつつ、カローシ村へ向かうのであった!!


「そんなにいそいでたべること、ないんじゃない?」


「むこうについたら、おかしかえるようにって、おこづかいもらったんだ。だから、はやくたべようとおもって」


「あの、いちおうきくけど。なにかうつもりなの」


「くっきー。あと、くらっかー」


「もうやめなよスーさぁん!」


 お分かりいただけただろうか!

 基本的にストフレッドは!!

 アホなのである!!!




 ストフレッドが新たな危機を迎えんとしていた、その頃!!

 シャーチク村の周囲を、怪しい影が取り囲んでいた!

 言わずもがな!!

 運命を司る神の一柱に唆された、エルフ達なのである!!!


「長老、準備が整いました」


「うむ、そうか。ついにエルフアップルを銘柄作物に申告をするときがやってきたのじゃな。思い返せば、わしのじいさんがはじめてリンゴを植えてから、もうどのぐらいの月日が」


「ちょっ、ちがう、長老、それじゃありません。例の呪われた村の方の」


「あ、そっち? そっちのかんじ? はいはいはい。いや、まあ、それもそうじゃよな。ここまで来てるんじゃし」


「なんでリンゴの方に思考が飛んだのかの方が謎ですが。ここどこだと思ってるんですか。敵地ですよ」


「まだ敵地と決まったわけではないじゃろう。まずは、話し合いからじゃ。呪術王を持つ少年の引き渡しを要求する」


「大人しく引き渡せば、よし。神様にお伺いを立て、いかようにするか決める。でしたね」


 ストフレッドを確保した場合は、運命を司る神の一柱の元へ連れていく!

 これは、運命を司る神の一柱からの指示であった!!

 今までさんざん苦労させられてきたので、自身で直接文句を言ってやろうという心積もりである!


 なら、てめぇーで行きゃぁ良いだろう!!


 そう思う方もいらっしゃるかもしれない!

 しかし!!

 それは神様サイドのやんごとなき事情により、禁止されているのだ!

 ただ、一定の手順を踏んで呼び出されさえすれば、その限りではない!!

 運命を司る神の一柱は、それをエルフ達にやらせようという魂胆なのである!!!

 もっとも!

 それはあくまで次善の策!!

 運命を司る神の一柱が思う最良の状態は、ストフレッドがシャーチク村もろとも焼かれることなのである!!!


「うむ。じゃが、どうしても引き渡すつもりがないというのであれば、仕方がない。腕ずくで呪術王の身柄を確保するのじゃ。もし、生きたまま捕らえるのが難しければ。やむをえまい」


 さらりとヤバそ気なことを口にするエルフ村長老!!

 ぶっちゃけ、スキルの中にはマジでそのぐらいの気構えで当たらないとヤヴァイものも存在するのだ!

 スキル「呪術王」も、その一つ!!

 住んでいる場所がシャーチク村であったからいい様なモノの!

 もし、ストフレッドの境遇が、当初、運命を司る神の一柱が企んでいたようなひどいものであったなら!!

 いや!!!

 むしろ、例えそれが「ごく普通の村」であったとしても!

 ストフレッドは国に引き渡され、よくて監禁!!

 最悪、即命を奪われていたことであろう!

 もし引き渡されていなかったとしても、まともな人間としては扱われていなかったはずである!!

 もしストフレッドがそんな環境で生まれ育ったとしたならば!

 恐らくは、「ハイパースペシャル大魔王」と同じ道をたどっていたであろう!!

 むしろ、もっと酷いことになっていたとしても、おかしくはない!

 この世界にとって、スキル「呪術王」とは生物化学兵器を搭載した不発弾のようなモノ!!

 いつ爆発するとも知れない、超危険物なのである!!!

 そんな危険なものを野放しにして、よいものであろうか!

 ならばいっそのこと!!


「命を奪うしか、あるまいのぉ」


 それが、最も安全な策と考えるのが、妥当なのである!!!


 普段のシャーチク村を見ていれば、忘れてしまいそうな事実ではある!

 しかし!!

 ストフレッドの力、スキル「呪術王」が危険な力であることは、間違いないのだ!

 であれば!!

 エルフ達の行動は、間違っているとは言い難い!

 むしろ、ある意味では真っ当ともいえるものと言えるのである!!


「はじめるとするかのぉ。まずは様子見の攻撃を。然る後、矢文を打ち込むのじゃ」


 こうして!

 エルフ達によるシャーチク村攻めが!!

 始まったのである!!!




 突如として現れ、村の一角を襲う複数の巨大なツララ!!

 一束ほどはあろうかというそれらは、すさまじい速度で家々に襲い掛かる!

 しかし!!

 その悉くを、空を舞う氷の盾が迎撃していく!!!


「なんじゃ、なんじゃ。冬には早すぎるじゃろがい」


 スキル「氷雪魔法」の使い手!

 日がな一日村中を手押し車で暴走するのが趣味!!

 工務店のご隠居が、ツララを全て叩き落したのである!!!


 また、別の場所!

 飛んでくる巨大な大岩!!

 あわやそのまま押しつぶされそうな民家の前に!

 黒い人影が立ちはだかる!!


「ブーステッド・リボルビング・ナックル!」


 腕部に内蔵されたリボルバー構造の打撃加速装置が火を噴いた!!

 繰り出された拳に上乗せされた破壊力は、大岩を一撃のもとに粉砕する!!!

 村の子供達の良き兄貴分!

 農家の次男坊でありスキル「専用強化外骨格生成」で変身ヒーローっぽいビジュアルになる男ハヤト!!

 たまたま通りがかった彼が、民家を守ったのである!!!


 はたまた、別の場所!

 空を覆いつくすような光の矢!!

 今まさに降り注がんとするそれに、一人の女性が頭を下げる!!!


「おやすみなさい!」


 瞬間!!

 それまで暴力的な光量と熱量を発していた光の矢が、次々に消滅していく!

 スキル「あいさつの魔法」の効果である!!

 腐女子でありつつ、自分も憎からず思っている幼馴染に惚れられているも一切気が付かないという鈍感系主人公属性をも併せ持つ、農家の次女!!!

 新しいネタを仕入れようと村の中を徘徊していたところを、ちょうど攻撃に出くわしたのだ!!


「なにコレ!? ちょ、なにごと!? 害獣!?」


「知らん! とにかく村長だ! 村長に知らせろ!」


「戦えないやつは隠れろ! 出れるヤツは全員迎撃に回れ!」


 突然の攻撃に対し、迅速に動き始める村人達!

 ド辺境に住む農民は、襲撃され慣れているので動きも素早いのだ!!

 村人達は誰に指示されるわけでもなく、非戦闘員は退避!

 戦闘可能人員は、防衛陣を組み上げていく!!

 これぞ村社会ならではの、迅速な即時対応能力!

 普段から避難訓練などを行っているのは、伊達ではないのである!!!




 村の主だった面々が、長老の家にあつまっていた!!

 難しい顔で睨みつけているのは、村に打ち込まれた矢文である!

 書かれている内容は、極シンプル!!

 呪術王を引き渡せ、というものである!!!


「ご神託を受けての要求、か。ホントなのか神父」


「いや、神様関連のこと全部神父が知ってると思わないでくださいよ。わかんないですよそんなの」


「適当なこと言ってるんじゃねぇだろうなぁ」


「だったとして、どうやってストフレッドのこと知ったっていうんだよ。神様から聞いたっていうなら、納得できるだろう」


「そこかぁ。ってことは、引き渡さなきゃならないのかねぇ」


 村人達を沈黙が包む!!

 エルフの村とかなんかそんなような小さな団体だったとしても!

 神様の意思で動くとなれば、メチャクチャでっかい権威を持つのがこの世界である!!

 場合によっては、国の命令より重いといっていい!!!

 そうなってくると、シャーチク村的にはいろんな意味で逆らえないというのが正直なところである!!

 しかし!!!


「そうなると、神様のお考えに背くことになるわけかぁ」


「本格的に罰当たりだなぁ、うちの村は」


「しょうがないよ。これもまた人生だ」


 シャーチク村の大人達は、やる気満々なのである!!!

 村に住む子供である!!

 誰が何と言おうが、たとえ当人にウザがられようが!

 村の大人全員で守るというのが、シャーチク村のスタイルなのだ!!

 口では割と弱気なことも言うのだが!

 相手が国なら国にもケンカをたたき売り!!

 神様が文句を言ってくるなら、全力で中指を立てていく!!!

 シャーチク村は、シャーチク村の子供を全力で守るの!

 ほかの連中が何を言おうとと知ったこっちゃねぇ!!

 よそはよそ、うちはうちなのである!!!


「どっちにしろ、今いないしな、ストフレッド」


「え? そうなの?」


「ヴィッフェンドルフ様とタップと、隣村に行ってるぞ」


「なんで?」


「知らん。そういえばなんでだろう」


「聞いてないけど。なんか、どうしても行きたいとか何とか」


「まぁ、よくわかんないけど。それならなおさら、引き渡すなんてできないな」


「本人がいないんじゃね」


「しょうがねぇや。なぁに、どうにかなんべ」


「じゃあ、矢文に返信するか。なんて書くかなぁ」


「矢文って140文字しか書けないからね」


 矢文の最大文字数は、140文字なのである!!!

 何かつぶやいたりするのには問題ないが、言葉の細かなニュアンスとかは伝えにくい、絶妙な文字数なのだ!!


「とりあえず、ふざけんなバーカ、って書いとけばいいか」


「おお、お前文才あるな」


「うんこ書こうぜ、うんこ」


 村人達がやいのやいのと楽しんでいる横で!

 一人神父だけが、首からかけたシンボルを握り締め、お祈りを捧げていた!!


「おおん? なにやってんだよ神父」


「神様もたくさんいらっしゃいますから。一柱ぐらい変わった神様がいて、ストフレッドの身を守ってくださったりしないかなぁ、と思いまして」


「そりゃいいや。俺もお祈りしておこうかな」


「じゃあ、私も」


 次々と、お祈りを始める村人達!

 その時!!

 不思議なことが起きた!!!


「ぎゃぁあああ!!」


「うぉっ! まぶしっ!!」


「なにごとだ!?」


 突如としてすさまじい光量で光り輝き始める神父が持ってるシンボル!!

 その輝き方たるや、村長ヘッドのおよそ12倍!

 村長宅の一室を覆いつくすような光の奔流!!

 いったい、何が起ころうとしているというのか!

 続きは次回以降の!!

 お楽しみなのである!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >長老ヘッドのおよそ12倍! 神の12分の1の輝きかあ 何気にスゴイね、長老ヘッド( ̄ー ̄)b 
[一言] アニキすげえぜ、普通なら主人公。
[良い点] 神相手でも信念を変えない。この村にいるからスーさんもほのぼのしたアホ程度になったんだろうなぁ
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