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やがて復讐という名のエルフ

 ストフレッドとタップのカローシ村行きが!

 無事、大人の人達に!!

 許可されたのである!!!


 本来であれば、五歳児である彼らが道中が危険そのものである隣村に行くことなど、許可されるはずがない!

 しかし!!

 ヴィッフェンドルフが一緒に行くということになり、事態は一変した!


「ヴィッフェンドルフさんが一緒なら大丈夫か」


「そうね。お坊様だし」


「都会のお坊様だからな」


「そのうえ、すごく偉いらしいじゃないか。見た目じゃわからないもんだよね」


「いや、見た目はお前。ほら。アレだから」


「とにかく都会のすごく偉いお坊様で、そのうえデカい船まで持ってるんだもんな」


「安心だよな」


 ド辺境の農村におけるお坊様への信頼度は、常にMAXなのである!!!

 しかも、「都会」から来ているうえに!!

「偉い」とまで付けば、もはや疑う余地は皆無!

 子供を預ける保護者も思わずにっこりの安心さなのである!!!

 ただ、村の外から赴任してきた教会の神父は、若干困惑気味であった!


「いささか不用心な気もしますが」


「教会に携わる多くのものが築き上げてきた信頼があったればこそ、ということだよ。そういった先人達が培ってきたものを、あとに続く我々はけっして裏切ることの無い様にせねばならないね」


 極真面目な表情で言うヴィッフェンドルフ!

 ではあった、が!!

 そのビジュアルは美幼女なのである!!!


 自分から進んでTSロリになった奴がなにいってんだよ!

 先人達もびっくりだわ!!


 そんなことを言いたい神父であったが、ぐっと我慢した!

 見た目こそ美幼女ではあるものの、相手は生きながらに聖人に指定された“光の”ヴィッフェンドルフである!!

 ド辺境に派遣されているようなヒラ神父が口答えできる相手ではないのだ!!!

 &!!

 昨今のジェンダー的なあれやこれやで、なりたい性別になって何が悪いとかそんなようなややこしい話になりそうだったので、日和ったのである!!!

 教会などで勤めていると、その辺のところは色々大変なのだ!!




 そんな訳で!

 ストフレッドとタップは、無事に隣村へ行けることになったのであった!!

 となれば!

 当然、やらなければらないことがあった!!

 おやつの買い出しなのである!!!


「タっつぁん、おこづかいもらえた?」


「うん。とおくにいくから、とくべつだって」


 もらったお小遣いを握り締め!

 友達と一緒に、お菓子を買いに行く!!

 これもまた、遠出をするときの楽しみの一つである!!!

 というわけで!!


「ヴィーちゃんも、おかしかいにいかない?」


「トゥテクワァにいちゃんのおみせなら、さんびゃくイエェンでけっこうかえるしね」


 ヴィッフェンドルフ、戦慄!!!

 己の策略である「自分の家だから、元々置いてあった高いお菓子食べちゃうもんね」作戦を見透かされたが如き提案!!

 よもや、自らの策が見破られたのであるまいか!

 そんな恐怖を覚えるヴィッフェンドルフであった、が!!

 目の前にあるのは、そういった思惑どころか、基本何にも考えて無さそうなお気楽フェイス!

 邪気邪心とはまったく無縁な類の表情なのである!!

 純粋に買い出しへ誘うストフレッドとタップに、ヴィッフェンドルフは大いに怯んだ!!!

 このままでは、作戦計画が頓挫してしまう!

 しかし!!


「ふむ。トゥテクワァ氏の商店か。そういえば、まだ行っていなかったな」


 村には商店が二つあるのだが!

 トゥテクワァが店主を務める店は、比較的子供向けの商品が多かった!!

 生活必需品などは、もう一つの店の方が、充実していたのである!

 そのため!!

 ヴィッフェンドルフは未だにトゥテクワァの店に行ったことがなかったのである!!!

 今までは王都の教会からシャーチク村への転居などで忙しく、行く暇もなかったのだが!

 こうして誘われてみると、むくむくと興味がわき上がってきたのである!!

 駄菓子系のお菓子も売っているのだろうか!

 あるいは、おもちゃなども売っているかもしれない!!

 一度気になりだすと、もはや好奇心はブレーキの壊れた機関車の如く走り始める!


「是非、ご一緒させてもらおう。すぐに行くのかね?」


「うん。ぜんはいそげっていうしね」


「はやくしないと、トゥテクワァにいちゃんねてることあるしさ。そうすると、おこすのたいへんなんだよ」


「トゥテクワァにいちゃん、よるおそくまでしごとしてるからね」


 ド辺境農村であるシャーチク村では、商店だけで食っていくのは大変であった!!

 なので、トゥテクワァはなんかしら副業をしているらしいのである!

 が!!!

 その仕事が何なのかは、誰もよくわかっていないのであった!!

 トゥテクワァは少年漫画とかに時々出てくる、「何の仕事してるか知らんけど、なんか少年主人公たちを助けてくれるにいちゃん」タイプの人物なのである!!!


「これは、ますます興味がそそられるね。早速、連れて行ってくれるかな」


 ついに動き出すヴィッフェンドルフ!!

 その財布に眠った数十枚の万札は、猛威を振るうことになるのであろうか!

 ともかく!!

 こうして、ヴィッフェンドルフの黒い野望!

「一人だけこっそりめっちゃ高いお菓子とか食べちゃうもんね」計画は、もろくも崩れ去ったのである!!

 みんなで一緒に買いに行ったお菓子を、遠出先で一緒に食べる!

 その楽しさの前には、どんな高級お菓子も無力なのだ!!

 友達と共有する楽しい時間は、プライスレスなのである!!!




 一方!!

 ストフレッド達がお菓子を買いに行こうとする、結構前!

 エルフ村は、シリアスなムードに包まれていた!!

 既に、運命を司る神々の一柱の姿はない!

 何やかんやと説明し、帰っていった後なのである!!


「まさか、そんなに恐ろしいことが起こっていようとは」


「新たな呪術王が生まれた、か。ならば、我らエルフは静観してはおれん事態だな」


 エルフにとって呪術王とは!

 因縁浅からぬ相手なのであった!!

 時は、呪術王が暴れまわっていたころまでさかのぼる!!!


「この世はまるっと、俺のものじゃぁああああああぁい!!!」


 まさにフィーバー状態!!

 この世とは我がものと思えばモード全開であった「ハイパースペシャル大魔王」を名乗るネーミングセンスゼロ男こと当時の呪術王!!!

 この丸出しのアホは、アホではあったのだがその力は絶大!!

 世界の半分以上を手中に収め、世界を制するその勢いは、五月雨を集めて速しサービスザンギョー川といった有様だったのである!!!


※サービスザンギョー川とは:ストフレッド達が住む大陸で一番デカくて長い川 カワイルカとかカワザメとかいる


 そんなスーパースペシャル大魔王が三番目ぐらいに手中に納めんとした種族こそ!

 エルフだったのである!!

 なぜ、エルフを狙ったのか!

 元々高い魔力を持つ種族であるエルフは、スキルとかが無くても魔法が使える種族だったからである!!

 スキルこそが物を言うこの世界!

 それに頼らず、安定火力を出せるエルフは強キャラ扱い!!

 ゆえに、それを手駒とすることが出来れば、世界征服に一歩近づくことができるのだ!!!

 メッチャ真面目キャラが多く、内政面で非常に頼りになるゴブリン!

 非常に高いフィジカルと、一門を守るためならば命も投げ出す荒武者として名を轟かせるオーク!!

 既にこの二種族を傘下に収めていたところで、次は魔法系に手を出す!

 ハイパースペシャル大魔王を名乗る当時の呪術王は底抜けのバカではあったのだが、そういう系統のゲームだけは地味に得意だったので、その知識をフルに生かしていたのである!!!

 そんなアレな理由ではじまったエルフ族調略である、が!!

 呪術王の力は、やはり圧倒的であった!!!

 あっという間に武力で持ってエルフを追い詰めると、ありとあらゆる呪いの効果で一方的に追い詰めていったのだ!

 哀れエルフはなすすべもなく、スーパースペシャル大魔王の軍門に下ることなったのである!!

 その時の会話で、悲劇が起きた!!!


「お前らがエルフか。すんげぇ美形ばっかりだし、メッチャ巨乳ばっかりだなオイ。エルフっていうか、エロフって感じじゃん。今日からお前らエロフな」


 メチャクチャなことを言いだしたのである!!!

 お分かりいただけただろうか!!

 そう!

 ハイパースペシャル大魔王は、想像を絶するレベルのアレだったのである!!!

 この貰い事故的なやつにより!!

 エルフ=エロい という、謎の方程式が広まってしまったのだ!

 もちろん否定はしたものの、当時のスーパースペシャル大魔王の言葉は絶対!!

 逆らえるものなど居るはずもなく、何なら呪いまで使ってその認識は広められてしまったのである!!!

 どんなにすました顔をしたところで、「えろふwww」とか陰口を叩かれる毎日!!

 否定しようにも、広めているのは絶対権力!

 あまり拒否ったりすれば、不興を買うことにもなりかねない!!

 エルフとは本来、誇り高い種族であった!

 それが、言われっぱなしで強く文句も言えない状況!!!

 とてつもないストレスで、当時は胃に穴が開くエルフが続出!!

 スーパースペシャル大魔王がブチ倒されたのは、このしばらく後のこと!

 その頃には、すっかりエルフ=エロいという図式は浸透!!

 エルフ達は熱い風評被害を抱えたまま、今にいたっているのである!!!


「何やってもエロいみたいなイメージが付きまとうのは、割とマジでシャレにならないんだぞ」


「ああ。そのせいでまともに他種族と交流もできやしねぇ。噂が下火になるまで、なるだけ森に引きこもってるしかないからな」


 衝撃の事実発覚!!!

 そう!

 この世界のエルフが森に引きこもりがちなのは、噂が過ぎ去るのを待っているからなのである!!

 ただ!

 外部との接触を極端に避けているせいで、逆に噂が払拭できず!!

 元々神秘的で美しく魅力的な外見も相まって、むしろ噂に真実味とかが帯びちゃっているのだが!

 当のエルフ達は全く気が付いていないのであった!!!


「そういった事情がなくとも、呪術王は危険だ。であるならば、倒さねばならんのは道理だろう。もちろん積年の恨みはあるが」


「早急に、呪術王を倒す必要があるな」


「それを守っているという村は、まずもって既に呪術王に掌握されていると考えていいだろう。可哀想だが、抵抗するようであれば一緒に倒すしかあるまい」


 すんげぇ物騒なことをサラッと言っていくスタイル!!!

 割と武闘派な子の発言であるが!

 エルフ的には一般的な思考であった!!

 元々様々な魔法をスキル補正なしで結構軽い感じに習得可能な種族である!

 高い戦闘力を持つためか、元来好戦的な種族であったのだ!!

 いうなれば彼らは、戦闘民族エルフ人なのである!!!


「邪悪の化身である呪術王を滅ぼし、呪われた村も同時に浄化する。そして、神様の覚えを目出度くし、その褒美として防火の祝福をお授け頂く。完璧じゃ。完璧なプランじゃわい」


「では、早速準備を始めましょう」


「うむ! 村のものすべてに、戦の支度をするように伝えるのじゃ! 敵はシャーチク村にあり!!!」


 そう!!

 賢明な読者の方々はお気付きであったことであろう!!

 あるいは、ずっと言ってなかったから気が付かれていない方もいらしたかもしれない!

 彼らが言っている「新たな呪術王」とは、ストフレッドのこと!!

 呪われた村というのは、シャーチク村のことだったのである!!!


 かくして、エルフ達によるシャーチク村襲撃計画は動き出したのである!

 一体、ストフレッドは、シャーチク村の運命は!!

 割とガチな戦闘民族の人達が、マジで襲ってくるこの状況を、切り抜ける手段はあるのだろうか!

 それは次回以降を!!

 お楽しみのなのである!!!

区切りの関係で、今回の話は短くなりました

4630文字だそうです

「ザ・ラストメッセンジャー ~イノシシ~」が12881字だったので、三倍近いですね

一話ごとの文字数違いすぎるだろ・・・


前回お知らせしたように、今回のエピソードでこのお話は区切りを迎えます

メチャクチャしょうもない感じで、勢いで突っ走ってる話ですが、終わるまでお付き合いいただけたらな、と思います

なんか、どうせ最後も近いですし、いろいろと感想とかも頂けたら嬉しいな、と思います

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― 新着の感想 ―
[一言] 同じスキルを与えられただけのまったく無関係な男の子とその暮らす村に襲いかかる…… エルフ、エロフからテロフに進化した?
[一言] 確かに呪われた村ではある、主に村長の頭。
[気になる点] 誤)村には笑点が二つあるのだが! 正)村には商店が二つあるのだが! 歌丸師匠と将太師匠の2つですか?(笑) [一言] 毎回楽しみにしています。 頑張って下さい。
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