エルフ村で朝食を
「なんでだよ!!!!」
絶叫!!!
美しき光満ち溢れる天界に、絶叫が響き渡る!!
声の主はもちろん、運命を司る神の一柱であった!!!
「なんで教会の聖人がロリになろうとしてんだよぉ!!! ドえれぇ願望隠して生きてたなぁ!!」
神様も知らなかったレベルなのである!!!
いや、他の神様の誰かであれば、知っていたかもしれない!
しかし!!
運命を司る神の一柱は、友達が少なかった!
ゆえに!!
教えてくれる神が誰もいなかったのである!!!
「なんでだよぉおおお! ありえねぇだろあれよぉおおお!! 今までの行いどうなってんだよぉ!」
運命を司る神の一柱が言っているのは、無論、ヴィッフェンドルフのことである!!
せっかく高いポイントを払ってけしかけたのに!
結果は全く予想しえない事態!!
ヴィッフェンドルフが美幼女に成るために村に行くという状況になってしまったのだ!!!
「はぁーあぁー! マジ、これどうすっかなぁー!! どうすりゃアイツラに一泡吹かせられるかなぁーあー!」
そう!
運命を司る神の一柱は!!
まだ、諦めていなかったのである!!!
「シャーチク村の連中め! 俺のことをコケにしやがって!」
言いがかりである!!!
村の連中は全く運命を司る神の一柱のことを、意識していないのだ!!
「どうにかして、あの村焼き払ってやる! エルフの村みたいに!」
エルフの村は焼かれる!!
どこの世界にでもある、共通認識なのである!!!
「とはいえ、もうポイントもないからなぁ。こっちから下界の人間共に接触することもできんし。何かないか、何か」
考え込む運命を司る神の一柱!
その時!!
唐突に閃く!
状況を打開する策を!!!
「そうだ! もうすぐ、アレの時期だったなぁ。ならば向うから呼びかけてくるのだから、ポイントも必要ない。あの条件をちらつかせれば、奴ら飛びつくはずだ。ふふふ、流石だな俺。これは上策じゃねぇか。ぬははは!!!」
勝利を確信するかのような笑い!
一体、どんな策を思いついたのか!!
それは次回以降の、お楽しみなのである!!!
一方!
シャーチク村では!!
「げんきだしなよ、スーさん。よのなか、わりきれないことだって、たくさんあるよ」
真っ白な灰になったストフレッドを!
タップが何とか慰めようとしていたのである!!!
「たしかに、よのなかには、もっとりふじんで、ざんこくなこともあるかもしれない。でも、ぼくだんじだから。だんじだから、じぶんがいままでけいけんした、さいだいきゅうのざせつにうちひしがれるんだ」
男児と書いてだんじと読むのである!!!
「ミッチュンたちにもまける。おぼうさんにもまける。のうみんふぁいとのたいかいも、ぼろぼろ。ぼくのじしんやぷらいども、ぼろぼろだよ」
“光の”ヴィッフェンドルフ VS “呪術王”ストフレッド!!!
光と闇の夢のキメモンファイトの結果は!
ストフレッドの惨敗だったのである!!
超ロマン砲ぶっぱ仕様な、相変わらずのストフレッドのキメモンに対し!
どの目が出ても回復か攻撃、あるいはその両方が同時発動するというヴィッフェンドルフの持久戦型キメモン!!
戦いはニ十ターン以上という長期戦になり!
最終的には、ヴィッフェンドルフのキメモンの大技!!
「この戦いで回復した回数×微ダメージ」を与えるという、「超神聖ダイナミックスペシャル」がさく裂!!!
哀れストフレッドは、短い時間に二連敗を喫したのである!!
「まけたのもショックだったけど、おぼうさんをびしょうじょにさせられたのにも、いきどおりをかんじる」
「なんていうか。まことにいかんなできごとだったよね」
そう!!
勝負に勝ったことにより!
ヴィッフェンドルフは念願の美幼女化を果たしたのだ!!!
彼はこの日のことを絶対に忘れないだろう!!
ちなみに!!!
幼女化したヴィッフェンドルフはなんやかんやあってシャーチク村に住むことになった!
のだが!!
今それはどうでもいいことなのである!!!
「しんりてきだめーじが、かさみすぎなんだよ。おじいさんが、めのまえでおんなのこになったんだよ。ひゆじゃなくて」
「ぼくも、あれはちょっとひいたけどさ」
「そのあと、なんかどうこくしだすし」
慟哭とかいて「どうこく」と読むのである!!
声を上げて、激しく嘆き泣くという意味なので、この場合はちょっと用法が違っていた!!!
が!!!
男児なので多少の間違いは、仕方ないのである!!!
「スーさん、あのばあいは、きょうきらんぶとかがてきせつだよ」
「なんでもいいよ。そのあと、きぶんをかえるためにいどんだ、のうみんふぁいとのしあいでは、さいかいだし」
精神的ダメージによるものだろう!!
ストフレッドは普段ではありえない判断ミスを連発してしまったのだ!!!
「しあいもぼろぼろ。ぼくのこころもぼろぼろ」
「げんきだしなよ、スーさん。ほら、むしとりとかいこうよ」
虫取り!!
近所の森の中に分け入り、強そうな虫をゲットするという、エクストリームなアクティビティである!!!
強力な虫を捕まえた場合には、他の子がとった虫と戦わせたりすることもあった!!
今の時期は「“黒鉄の破壊者”クルセイダー・コガネ」や「“揺蕩い踊る銀幕の”アゲハ・ザ・シルバーエフェクト」などが取れるので、ナウなヤングは森での遊びに夢中なのだ!!!
「そんなきぶんじゃない。そんなきぶんじゃないよ、タっつぁん。今は我を忘れて森を駆け回り疲れて眠るより、己の頭脳的限界に挑戦するときだよ。自分の殻を超えたその先に、新たな世界を見出すべく、もう一度立ち上がるべきときなんだ」
「うわぁ。ひさしぶりに、りゅうちょうにしゃべるスーさんがでてきた。でも、どうするつもりなのさ」
「カローシむらにいく」
「な、なんだってー!?」
カローシ村!!!
それはシャーチク村の隣村の名前である!!
隣村といっても、間はかなり離れていた!
そのうえ!!
道中は山あり谷あり魔獣あり!!!
超危険地帯を通らなければならず、実質行こうと思えばギルドのトラックに頼るか!!
そんな危険をものともしない実力が必要になってくるのである!!!
「いって、どうするつもりなのさ。ていうか、どうやっていくつもりなの」
「ケビンと、たたかいにいくんだ」
ケビンとは!!
カローシ村に住む、将来はイチゴ農家になりたい系のスキル「覇道邁進」を有する少年であった!!!
ストフレッド達とは、ちょっと前に領都で戦い、知り合った仲である!!
彼らとであった詳しい経緯が思い出したい場合は、「第10部」から「第14部」を読み返すのをお勧めしたい!!!
「けびん? あー、あの、カローシむらの。たたかって、どうするのさ」
「かれとは、ひきわけたままだからね。またたたかって、しろくろつければ、かつにしてもまけるにしても、なにかきっかけがつかめるとおもうんだ」
お互いに全力を出し尽くしての引き分け試合!!
あの戦いは今も熱く、ストフレッドの胸に焼き付いているのである!!!
そんな相手との戦いであれば!
勝つにせ負けるにせ!!
ハートに炎を灯してくれること請け合いなのである!!!
「なるほどね。たしかに、いいきっかけになるかも」
これにはタップも納得である!!
あの戦いはシャーチク村の子供達の心に、それだけ強く残っているのだ!!!
「でもさ。さっきのしつもんにもどるけど、どうやっていくつもりなのさ」
隣村とはいえ、ド辺境の隣村!!
安定した交通手段などなく、行くとしたらギルドのトラックをチャーターするしかないのである!
無論!!
そんな金は男児二人に用意できるはずもない!!!
「だいじょうぶ。それにかんしては、ぼくにいいかんがえがある」
いい考えがある!
そういったときには大体碌なことにならないのが、世の常であった!!
もちろん!
今回も碌なことには!!
ならないのである!!!
暗く、深い森の中!
緑色をした海の底深くにも見える、秘された最奥!!
そこに、小さな集落があった!
色が白く!
耳が長く!!
パツキンであり!
女性の胸は巨乳が多いことで知られる種族!!
そう!!
エルフの村だったのである!!!
なぜエルフなのに巨乳なんだエルフは貧乳が原典じゃろがい!!
そう憤慨される方もいらっしゃることだろう!
しかし!
ここは異世界!!
地球のご事情など、知ったこっちゃないのである!!!
ついでに言うと「エルフ」というのも!!
「現代日本人の感覚で言うと、エルフっていえば一番通りがいい外見と性能」であるからそういう名前になっているのであった!!
現地では「異世界語」が使われているのであり!!
日本語に翻訳する関係上そんな感じになっているのだと、ご理解いただきたい!!!
「長。今年こそは、願いを聞き入れて頂けるのでしょうか」
超美形のお兄さんエルフ!
ちょっと心配そうな顔をしている彼の周りには、同じような顔をしたエルフ達がわんさか!!
美青年と美女が渋滞を起こし、芸能事務所が消し飛びそうな有様!!!
ここは、エルフ村の集会場!!
今は年に一度執り行われる儀式の、打ち合わせが行われているのである!!!
「うむ。今年こそは、エルフアップルを特産品として農業ギルドに認めてもらうべく、最高の品を用意するのじゃ」
「いえ、あの、長。そっちではなく」
「え? どっち?」
「あの、神様の……」
「ああ! はいはいはいはい! ごめんごめん! そっちね! はいはい、いや、うん。そうね。はいはいはい。おほんっ! そうじゃのぉ。今年こそ、気に入って頂ける貢物をし、神様においでいただかねばなるまいのぉ」
エルフ達は、神様を呼び出そうとしていたのである!
この世界において、神様を呼び出すというのは案外珍しいことではない!!
何しろ神託とかを直接伝えに来てくれたりもするぐらいである!
呼ばれれば、気が良くて手の空いてる神様などが、応えてくれることだってあったのだ!!
「神様をお呼びするには、徳の高い僧侶か、あるいはそれに準ずるものの祈り。もしくは貢物が必要じゃ」
「そうですね。この村には徳の高い僧侶なんていませんし。外に出稼ぎに行った連中が得た外貨で買った貢物を使うしかありません」
この村では、年に一度行われるこの儀式のために!
村民の一部を、出稼ぎに出していたのだ!!
そういったモノ達の多くは冒険者などになり、その収入から貢物を準備しているわけである!!!
「村の為とはいえ、若い者たちには苦労を掛けるのぉ」
「仕方ありません。ここには戦えない子供や老人達もいるんですし」
「とりあえず、今年の用意した貢物がこちらです」
村の公会堂にある長机に並べられた、貢物の数々!!
どれもこれも、エルフ達が神様の好みを考え抜き、厳選した品々である!!!
「まずは、十八金製のぶっといネックレスです」
「うむ。良い感じじゃな」
それって鎖?
というようなぶっとさである!
どの角度から見ても光が反射するようにチェーン加工された金の輝き!!
そのギラッギラとしたピカピカっぷりは、もはや高貴さよりも脂ぎったテカリ具合を感じさせるものである!!!
「クロコダイル革のめっちゃ薄いハンドバックです」
「おういえい、おういえい」
それって持ってる意味あるの?
などと聞きたくなるような薄さのハンドバックである!!!
厳選された素材で作ったであろう一品は、物を入れるというより凶器の一種と思わせんばかりの存在感を放っていた!
これを持っている奴がいたら、お近づきになりたくないこと請け合いだ!!
「めっちゃ先が尖がった、白い革製の靴です」
「いいんじゃなぁーい?」
白い革靴って汚れすごない?
っていうかなんでそんな尖ってんの?
武器なの?
というようなことを真面目に突っ込みたくなるようなビジュアルの靴である!!!
恐らく、靴としての実用性は薄いであろう!
これをはいて走ったりなんかしたら、メッチャ転びそうなこと請け合いな形状である!!!
「ふむ。ほかにも幾つかあるが、どれもなかなか神様がお好みになりそうな品々じゃな」
全体的に似たような雰囲気の逸品ぞろいなのである!!!
御出で頂くという神様以外ならば!
恐らくパンチなパーマを当てたニーちゃんとかが好きそうな感じであった!!
「よし。では、皆のもの。儀式の準備を始めるのじゃ!」
「「「おう!」」」
長老の指示のもと、動き始めるエルフ達!!
いったい彼らは、どんな神を呼び出そうとしているのか!
そして、その目的とは!!
次回以降を、乞うご期待なのである!!!




