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坊さん・イン・ザ・シェル

 ジレッタイ感じになっているパン屋の一人娘ココ(14歳)と、農家の次男坊ハヤト(16歳)!!

 この二人を速攻くっつけてやろうと走り出したストフレッドとタップの前に立ちはだかったのは、ミッチュンことミッシェルであった!!!

 そう!

 ミッチュンの本名は、ミッシェルなのである!!

 前回、地の文でもミッチュン呼びをしてしまったのだが、どうかご容赦いただきたい!

 なんかミッチュンって、非常にキーボードで打ちやすいのだ!!

 そんなことはともかく!!!

 今回は先に、子供達の様子をお伝えしていくのである!!


「いなかのにんげんは、すぐにけっこんする!!」


「だいたいが、おさななじみだから! てきれいきになると、さっさとくっついちゃうんだっ!」


「ずっとしりあいだから、でーとしてても、ふんいきがかんぜんに、ろうふうふなんだよ!」


「もっと、りょうかたおもいみたいに、むじかくいちゃつきしてもらいたい!」


「そうだ! こっちは、そういうのに、うえてるんだ!!」


 切実な叫びなのである!!!

 そう!

 ド辺境であるシャーチク村では、若者はわりかしさっさと結婚してしまうのだ!!

 何しろシャーチク村には、若者の働き場所がモノゴッツ有り余っている!

 よっぽどえり好みしない限り、働こうと思えばすぐに職にありつけ!!

 かなり安定した収入を得ることができるのだ!

 なにより!

 たとえ農家のような天候に左右される仕事だったとしても、天下の「ゴブリン農業協同組合」がバックについている!

 福利厚生や万が一の時の保険などは、これでもかというほど充実していた!!

 おかげで!

 二年三年程度の天候不順であれば、ビクともしない安定が保証されているのである!!!

 村の中のことは村の中で賄わなければならないが故の、慢性的働き手不足!!

 超巨大権力「ゴブリン農業協同組合」という偉大過ぎる後ろ盾!!!

 この二つが、シャーチク村およびド辺境農村を、メタくそ強力に支えまくっているのである!!

 ゆえに!!!


「わかものは、すきあればすぐにけっこんする!!」


「すれちがったりするきかんが、まったくない!」


「もっとすれちがえよ! もっとじれじれしろよ!!」


 魂の叫びなのである!!!

 自分の好きなもの!

 手を伸ばせば届きそうであるにもかかわらず、実際には存在しないソレ!!

 見えないものを見ようとしても、望遠鏡とかもありゃしねぇ!

 ジレジレ展開を愛するジレジレストにとって、このド辺境は砂漠のような場所なのである!!


「だからって、なんでスーさんをなぐったのさ!」


「そうだそうだ! とめるなら、くちでいってよ!」


 あれだけ派手にぶっ飛ばされながら、ストフレッドは割と元気であった!!

 ド辺境に住む子供は、割と耐久値が高いのである!


「ほら。なぐったほうがはやいし」


 ミッシェルは割と過激派だったのである!!

 もっとも、ここは危険が渦巻くド辺境!

 こういった荒事にも慣れておかないと、割と本気で危ないのだ!

 実際!!

 この間も、なんかよくわからん野生動物の群れに村が襲われたりしているのである!!!


「ならしょうがないかー」


「とにかく! ここをとおすわけには、いかない!」


「そうだそうだ! ようやくめぐりあえたたのしみを、みすみすてばなして、なるものか!!」


「こっちだって! ずっとやきもきしっぱなしじゃ、しんぞうがもたないよ!」


「このとしになると、すれちがいばっかみてると、カロリーしょうひしすぎて、つかれちゃうんだよ!」


 加齢と共に少女漫画とかが読めなくなってきた、中年みたいなセリフである!!!

 実際!

 年齢とともに恋愛ものとかがキツくなってくるタイプの人は、割といたりするのだ!!


「しかたない。おたがいにゆずれないのであれば、たたかうしかないね!」


「のぞむところだ!」


「めにものみせてやる!」


「こっちのせりふだね!」


「いっくぞぉー!!」


 賢明な読者諸君なら、お気付きだろう!!


「「「キメモンバトルだ!!!」」」


 対立した時は、キメモンバトルなのである!!!

 そして!!

 子供達の声がそろった、その時!!


「合意と見てよろしいですねねぇええええええ!?」


 突然!

 天空から声が響いた!!


「このこえは、まさか!!」


「なんでシャーチクむらに!?」


 刹那!

 太陽の中から黒い影が現れ!!

 地上へと降り立った!!!

 黒いスラックスに白シャツ蝶ネクタイ!

 グラサンとマイクを装備した、ポニーテールのおねぇさんである!!


「ただいまこのバトルは、正式にキメモンバトルとして認定されました! ですのでわたくし、キメェモンスターバトル委員会公式A級レフェリー! ミス・キタアカリが審判を務めさせていただきます!!」


「りょうとで、しんぱんをしてくれたおねぇさんだ!」


「すげぇ! ほんもののこうしきレフェリーだぞ!」


 子供達のテンションは、ガチ上がりなのである!!


「なんで、シャーチクむらに、いるんですか?」


 そんな中でも、タップは比較的冷静に質問をした!

 といっても、比較的冷静なだけであり!!

 テンションはめちゃくちゃ上がりまくっている!

 それが証拠に!!

 手と足は、バタバタしっぱなしなのである!!!


「なんか表情と行動がちぐはぐだけど、君の疑問も当然ですね。私は趣味で領都周辺の農村を観光して回っているんです」


「え。ってことは、いま、ぷらいべーとなんですか?」


「その通り! たまたま遊びに来たら、お祭りで会った君達がキメモンバトルをしようとしていたので、ジャッジしようとやってきたわけです!」


「はいはいはいはい!!」


「はい、元気がいいそこの少年!」


「ぼくたち、もちあわせがそんなにありません!」


 キメモンバトルのジャッジをレフェリーに頼むには、相応のお金が必要なのだ!!

 だが!


「今回はプライベートですから。無料で構いませんよ」


 笑顔がさわやかなミス・キタアカリの粋な言葉!!

 しかし!

 ここでご厚意に甘えるだけでは、子供達の気が収まらないのである!!


「そういうわけには、いかないよ! そうだ! あとでおやどに、うちのはちみつをもっていきます!」


 蜂飼いのところの娘である!!

 どうせ宿は村に一つしかないので、泊っているところはまるわかりなのだ!


「じゃあ、ぼくは、いえにあるおにくをもっていくよ」


 ストフレッドである!

 彼の父は、村一番の猟師なのだ!!


「うちは、いもかな」


「ぼく、いけでとったさかなをもってくよ」


 子供達がそれぞれに、自分にできることを上げていく!

 それを聞いたミス・キタアカリは!!


「くっ! むり、こういうのもう。マジで効く年になってきたわ……!」


 号泣である!!

 ミス・キタアカリは、なんか素朴な人情とかが胸にしみちゃうお年頃なのだ!


「わかりました! みんなが持ってきてくれるものを対価に、この試合のジャッジをお受けしましょう! それでは、キメモンファイト! レディーゴー!!」


 勢いよく開始を宣言するミス・キタアカリであったが!

 まだルールの確認とかキメモンの制作とかは!!

 全く終わっていなかったのである!!!




 子供達がこれからキメモンバトルを始めようかといった、ちょうどそのころ!!

 大人達は空から降ってきた坊さんに、ビビり倒していたのである!!!


「お初にお目にかかる。私はヴィッフェンドルフ。隠居した老僧だ」


「シャーチク村教会を任されております、スクァートと申します。ええ、本日は」


 ド緊張で声が裏返っている神父を、ヴィッフェンドルフは片手で制した!

 余人が行えば失礼になるような行為であるが!!

 生きながらにして聖人として認められるヴィッフェンドルフが行えば、全く問題ない行動なのだ!!!


「今日は、元異端審問局局長、聖人“光の”ヴィッフェンドルフとして、ここに来たのではない。一人の僧侶として来ている。改まった挨拶は不要に願う」


 ただの僧侶の割りに偉そうじゃねぇか!

 などとツッコミを入れる人間は、一人もいなかったのである!!

 ただ一人を除き、村人達は完全にヴィッフェンドルフの放つ「偉い人オーラ」により、行動不能となっていたのだ!

 無論!!

 神父も「あ、はい」というのがやっとなほど、ガッチガチになっていたのである!!

 その強度たるや、あの小豆を煮たヤツをコッチコチに凍らせたバーと、同じレベルなのだ!!!

 しかし!!

 前記した通り、そんな中でも一人だけ動けるものがいた!!!

 シャーチク村の長!

 村長なのである!!!


「お前、ヴィッフェンドルフか」


「久しいな、リヒト。お前がパーティを去って以来か」


「去った、か。俺はずっと追い出されたもんだと思ってるがな」


 どうやら、ヴィッフェンドルフと村長は、知り合いだったようである!!

 ただ!

 二人の関係は、あまり芳しいものではないようであった!

 どちらもこの話にはあるまじき、超シリアスフェイスで睨み合っているのだ!!


「この村に来る前に調べて、驚いた。まさかお前が村長とはな。いや、まだ生きていた事の方が驚きだったが。なにせ、お互いにいい歳だ」


「農業で体を鍛え、美味い作物を食ってるからな。こっちの方こそ、驚いたわ。まさか回復と照明魔法を使うのがやっとだったお前が、“光の”とはな」


「幸い、スキルには恵まれていてな。コツさえつかめば、そこから先は楽だった。そのコツを掴むのに、散々難儀させられたが」


「何をしに来た」


「呪術王を持つ子供が生まれたそうだな。いや、とぼけても無駄だ。神託があった」


 神託!!!

 この世界では割と神様は近しい存在であり、時折与えられるものである!

 ゆえに、ヴィッフェンドルフの言葉は、村人達に大きな衝撃を与えていた!!

 ヤベェ匂いしかしねぇ!!!

 震える村人達だったが、ヴィッフェンドルフの口から、予想外の言葉が出る!!


「安心しろ。この事は私と、直弟子一人しか知らん」


「いいのか? 他に報せんで」


「報せるわけがない。よく知っているはずだ、お前なら」


 村長の眉間に、深いしわが刻まれる!


「呪いで何ができるか、知っているわけか」


「そうだ。TS! TS! といったか。私が気にしているのは、それだ」


 流石に威圧感に慣れてきたのだろう!!

 村人達は顔を寄せ合い、こそこそと話し始めた!


「スー坊の呪いに、そんなのあるのか」


「あるよ。美少女になるってやつ」


「まさか」


「なんだよ神父。気になることでもあるのか?」


「あの呪いは、性別を変える、見た目を変えるっていうのも大きいけど、一番すごいのは若返り効果だと思うんですよ」


 若返り!!

 それは、時の権力者とかが欲しがる定番のヤツである!

 創作物とかでは弄り倒されているそれも!

 目の前にあればヤバさひとしお!!


「光魔法の中には、実は若返り効果があるものもあるんです」


「マジかよ」


「光魔法すげぇ」


「ですが、ヴィッフェンドルフ猊下は、その魔法を習得していないと言うことになっています」


「なっています、って、どういうことだよ」


「猊下ほどの使い手が、習得していないはずがない。そう、多くの人が見ています。恐らくは、影響の大きさを考慮して、習得していないことにしているのだろう、と」


 多くの人間が欲しがる、あまりに大きな力!!

 そんなものを持っていれば、ヴィッフェンドルフに集まる権力は計り知れないものとなるだろう!

 だけでなく!!

 それを奪い合い、多くの争いが起こるであろうことは明々白々!


「秩序と和。異端審問官であった閣下が最も重要視されているそれらを、乱す恐れがあるわけです」


「異端審問官になるぐらいだから、ルールとかに厳しそうだしな」


「秩序を乱すのであれば、ない方がいい。ってことかよ」


「んん? まてよ? じゃあ、TS! TS! を持ってるストフレッドって、やばいんじゃねぇか?」


 血の気が引いていく村人達!!

 神父の言うことが本当であれば、確かにヤバそうな気配がビンビンである!


「若返りは影響力が強すぎる。だから、自身ですら持たないことにした。それを持つものが現れて。しかも、呪術王という禁忌のスキルが持つ能力の一つとしてあるとなれば。心中穏やかではないでしょうね」


 もし神父の予測が当たっているとすれば、ストフレッドがヤベェ!!

 村人達は引きつった表情で、ヴィッフェンドルフと村長を見た!

 ここまでの会話に要した時間は、一分ジャスト!!

 なかなかの解説要員っぷりである!!!


「ヴィッフェンドルフ。お前、まだあきらめていなかったのか」


「ああ、この歳になるまでな。ゆえに、夢がかないそうだ」


 ヴィッフェンドルフは静かに目を閉じ、大きく息を吸った!

 そして!!

 万感の思いを込めたかのような声音で、言葉をつづける!!!


「美幼女になるという、私の夢が!!!」


 静まり返る村人達!!!

 困惑する神父!!

 ただ村長とヴィッフェンドルフだけが、相変わらずのシリアス顔なのである!!!

 風雲急を告げるシャーチク村!

 ヴィッフェンドルフの言葉の意味とは!!

 待て、次回なのである!!!

意外に長い章になっております、「光の坊さん編」楽しんでいただけてるでしょうか

ちなみに、「光の坊さん編」というのは適当に今考えました

実際は別に章でも何でもないと思います


さて、ついにこのお話も二十話目に突入しました

もう二十話なんだなぁ、と、不思議な気持ちになります

がんばって続けていけたらと思っておりますので、よろしければ今後もお付き合いくださいませ

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― 新着の感想 ―
[良い点] すべて [気になる点] ないよ [一言] この全力疾走感が最高of最高ですね好きですもちろん内容も素晴らしく面白かったです!!!!!!!!!!!!!!
[一言] そーいや、TS! TS!って対象を美少女にするだけで、女でも美少女になるだけで男になったりはしないんだよな… ふと思ったが、「対象」って動物とか石みたいなものも含まれるんやろか?
[良い点] やっぱシリアスなんてなかったんや [一言] あーうんまぁ……… わからんこともない
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