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イノシシ 繰り広げられる悪行

 ド辺境に生息するイノシシは、基本ボッチである!

 おおよその個体が一定の距離を保ち、縄張りのようなモノを持って生活していた!!

 これには、エサの確保など以外にも大きな理由があるのだ!

 その、理由とは!!

 イノシシは基本、陰キャなのである!!!

 知らないイノシシが近くにいるというだけで、キョドっちゃうのだ!!

 だが、そんなイノシシでも、数匹の集団をつくることがあった!

 たとえば、陽キャがパーリーしたり異性をナンパしてるときである!

 基本的には陰キャが多いイノシシだが、それはあくまで基本の話!

 中には、パリピも存在するのだ!!

 そういう手合いはイイ感じに仲間とか集めて、異性にアプローチ!

 人生を楽しんじゃったりしているのである!!

 では、他にはどんな理由で集団をつくるのか!

 もう一つの理由は、そう!!

 陽キャ嫌いの陰キャが集まり、陽キャの悪口を言うパティーンである!!!

 ちなみに!

 イノシシ達が作る集団で、最も割合が多いのがこれであった!

 基本的には陰キャと言われる、ゆえんであろう!!

 ちなみに!

 陰キャは基本人の悪口を言うとかそういう意味合いではないので!!

 その辺のところはご留意願いたい!

 あくまでごく一部の生物学者とかが持つ!!

 イメージの話なのである!!!


 ここにも、そんなイノシシ達の集団が出来ていた!

 三匹ほどの彼らは、悉くが陰キャ!!

 話題はもちろん、陽キャの悪口である!!!


「はぁー。全くアイツら何でああいうことができるんだろうかぁー」


「まったくだよぉー。公共の利益ってのを考えてないんだよ、ああいう連中」


「食べるなっていうんじゃないのにさぁー、結局、自分の都合しか考えてないんですよぉー、ああいう連中って」


「ほんとほんと。そりゃ辛いだろうけどさ、それってほかのイノシシもいっしょなわけでしょ?」


「自分のことしか見えてないわけですよぉー」


 ド辺境に住むイノシシは、基本的に防毒性能がムチャクチャ高かった!

 そんな彼らでも、耐性を持たない毒がある!!

 毒キノコに分類されるそれを摂取すると、あら不思議!

 むやみに気分が高揚し、テンションがテンアゲ状態になるのだ!!

 その名も「ストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味」!!!

 んなキノコがあるか!

 とお思いになる方もいらっしゃるだろう!

 だが、担当者が酔っぱらった状態で登録しちゃったタイプの、正式な学名なのである!!


 名前からお察しの方も多いだろう!

 このキノコ!

 毒ではあるのだが、イノシシ達にとっての娯楽ともなっていた!!

 普通、野生動物は能力が著しく下がる酩酊状態を避けるものである!

 だが!!

 基本的に襲われることもなく、襲われてもスルーすることでやり過ごすタイプの進化を遂げたイノシシ達は、酔っぱらってもへっちゃらなのだ!

 むしろ!

 やることが無さすぎたりして思考に没頭しすぎ、不安でおなかとか壊しちゃうタイプなので!!

 酒とか飲まないとやっていられないのである!


 違う、酒じゃない、ストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味だった


 とにかく!!!

 実はこのキノコ!

 生える時期や場所が割と限られている、希少品であった!!

 そんなキノコの群生地を!

 近所に住む陽キャパリピ達は占領!!

 食い荒らしまくっていたのである!

 ちなみにこのキノコ!

 イノシシ以外の生物にとってはアホほど有害であり!!

 何ならさっさと食べてもらった方がありがたがられるぐらいヤバい代物であった!

 人間が下手に触ると、三日三晩苦しみ続けるタイプのやつなのである!!

 口にいれたりすると軽く逝けるので、注意が必要だ!!!


「はぁ。ああいう連中、どうにかならないのかなぁ」


「誰かがどうにかしてくれるのを待つんじゃない! 自分で! 自分達でどうにかするという選択肢だってあるということを肝に銘じておいていただきたい!!」


 突然三匹にかけられる声!!

 一体どこからと周囲を探る三匹の前に、声の主が現れる!

 そう!!

 そこにいたのは、運命を司る神々の一柱からスキルを無理矢理添付させられたイノシシ!

 略してスキルイノシシだったのである!!!


「なんだ、あんたっ!」


「私が誰かはどうでもいい!! それよりも、今はストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味の話だろうっ!」


「いや、あんたの話が先だと思うけど」


「キノコの方が大事だああそうだともそうだよっ!!」


 ごり押しである!

 怪しげなものを見る目でスキル猪を見る三匹!

 しかし!!

 次に飛び出した言葉で表情が変わった!!!


「諸君、モテたくはないかね」


「なっ!」


「どういうことだ! 急に!」


「急にじゃない! キノコの話はモテにつながるのだよ!」


「詳しく聞こうじゃないか」


 モテたい!!!

 野生動物であるイノシシ達は、露骨にモテたがるのである!!

 なんかそういうの意識して無い風の方がかっこいいんだよなぁー

 とかそんなの一切ないのだ!!!

 モテなければ死!!

 そのぐらいの覚悟でなければ子孫は残せない!

 弱肉強食!

 ド辺境の恐ろしさなのである!!!


「陽キャ連中はパリピだ。なぜパリるのだろう。モテたいからだ。パリれば女子が寄ってくる。女子との接触機会が増えれば必然的に、番になってくれる相手が見つかる確率も増える。下手な魔法も数うちゃ当たる」


「なるほど、確かに」


「レッツパーリーするには何が必要か! ストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味だ! ストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味があるところに、女子は寄ってくる!」


 女子だってキノコが食いたいのである!

 三匹は深く、深くうなずいた!!

 キノコが生えるあたりで待機していれば、それを求める女子がやってくる!

 食べたいなぁ、と思えば、そのあたりの縄張りを確保してるオスに声をかけるしかない!


「あの、一緒にキノコ食べていいですか?」


 とか聞かれちゃうのである!!

 イノシシのオスとしては、憧れのシチュであった!!!


「それはわかるけど。それがどうしたっていうのさ」


「そうだそうだ。俺達には関係ない話じゃないか」


「関係なくない!!!」


 力強く言い切るスキルイノシシ!

 その圧に、三匹は押し黙る!!


「いいか! ストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味を独占している奴らは悪だ! 君達にだってキノコを楽しむ権利があるそうだろう! それを独り占めしてるような奴らを許していいのかそんなわけがない!! 奴らを排除し、それを楽しむことは権利であると同時に! 悪を退けるという正義の行いなのだ!!」


「退けるっていったって、どうやって」


「あそこに陣取ってる連中って、デカいじゃないか」


 いい縄張りを確保して置けるオスは、基本デカいのである!!!

 デカければ強い!

 強い=デカい!!!

 絶対にどんな生物にも当てはまる、とは言わないが、おおよそ間違いのない図だといっても過言では無かろう!!

 対してこの三匹!

 それほど体格には恵まれていなかった!

 小柄とは言わないまでも、パリピ陽キャでキノコを確保してる連中と比べれば、二割ほど目方が軽そうである!!


「確かに連中はでかい。常に二匹ぐらいで場所を確保している」


「ほらぁ」


「だが、逆に言えば二匹ぐらいしかいないときがあるということ!!!」


「!?」


「考えてみたまえ。連中が一匹当たり10ぐらいなら、君達は一匹で8ぐらい!! 相手が二匹なら、相手は20! 君達三匹は!?」


「8×3で、24……よ、4も勝ってる!!!」


「もちろん私も助太刀しよう! 私の8も加われば、どうだ!!」


「24に8で、32……ま、まさか……相手が三匹でも勝てる!!!」


「その通り!!!」


 そんな単純なこっちゃないわけではある、が!!!

 多勢に無勢が強いのは世の理!!


「三匹が遮二無二かかれば必ず勝てる! 必ずだ!!!」


「で、でも、怖いし」


 黙り込み、三匹を睨みつけるスキルイノシシ!

 すくみ上る三匹だったが!!

 次にかけられたのは、予想だにしない言葉だった!!!


「君達は賢い!!!」


「え?」


「そう! 戦いは危険だ! たとえこちらが優位だとしても、怪我をすることはあるだろう! それを予想し! 警戒し!! 避けようとするものが、賢くなくて何だというのか!!!」


「いや、でも当たり前のことだし」


「あのパリピ陽キャたちはそんなことも予想しえない様な連中だということだ!! でなければ茸のある縄張りを確保できるだろうかいいやできない!!!」


 別にそんなこともないだろうが、力押しで納得させるスタイル!

 普段ならその矛盾や無茶苦茶な点に気が付くことができる程度には頭のある三匹だが!!

 スキルイノシシの異様な熱気に押され、冷静な判断能力を失っていた!

 言われるまま押されるまま「あれ、何かそうかな」みたいな気持ちになっちゃったのである!!!


「確かに怖い! 逃げ出したい!! だが、忘れてはならない! 君達があいつらを打倒することは、正義だったはず!! そう! 連中は悪であり、それを滅ぼすことは正義なのだ!!!」


「せ、正義……俺達が……」


「そうっ! 悪に打ち勝つために、恐怖に打ち勝ち立ち上がれ! 君達の権利を不当に犯し! 蔑ろにし!! 不利益を生じさせたのは誰だ!!」


「え?」


「誰だっ!!!」


「え、ぱ、パリピたち?」


「その通り!! 奴らのせいで君達だけでなく、多くのイノシシがストロングキノコ ウルトラマックスゼロシュガー味を食べることができなくなっている!! それを解放し、万イノシシに開放する! それは悪か! 正義か!!」


「正義だ! 正しいことじゃないか!!」


「その通り!!! 怯むな!! 怖気づくな!!! 正義のために立ち上がろう!! そのことに! その必要があることに、今君達は気が付くことができたっ!! 君達は選ばれたイノシシなんだ!!!」


 普段ならば!

 あるいは一匹でいるときであれば!!

 こんな言葉はうさん臭くしか聞こえなかったであろう!

 だが、その場の勢いに飲まれ!

 三匹はなんとなくその気になってきちゃっていたのである!!


「俺達が、選ばれたイノシシ」


「その通り! 君達が正義を行うことに、何のためらいがいるのだろう! 正義を行うことは正義じゃないか!!! ためらわず戦い、悪を倒そう! そして!!!」


「そして?」


「これはあくまで副次的効果であり、ついでのことではあるが!!! きっと勝てばモテる!!!!!」


 三匹のハートにドンピシャ響きまくったのである!!!

 なんだかんだ言って彼らもアニマル!!

 モテるのは至上命題であった!

 ゆえにトドメのモテるという言葉は、心の琴線にドストライクだったのだ!!!


「で、で、でも、勝てるかなぁ」


「安心したまえ! 特訓をすればいい! 戦うための準備をすれば、例え体格に劣ろうとも君達の戦力は必ず増す! そのうえで数の優位を生かして正義を執行すれば、負けるはずがない!!」


「と、特訓かぁ」


 男子は基本、特訓とかが好きなのである!!


「そうだっ! 特訓して強くなり、邪悪をぶちのめしてモテよう!!! さあ、一緒に! モテよう!!」


「「「もてよう」」」


「モテよう!!!」


「「「もてよう!」」」


「モテよう!!!」


「「「モテよう!!!」」」


 こうしてスキルイノシシは!

 三匹のイノシシを絡めとったのである!!!


 まず敵を作り!

 それを打倒すことは正義だと認識させ!

 訓練を通し一致団結させるとともに自分の指示に従う癖をつけさせる!

 然る後!!

 見事敵を打倒させることで、自信をつけさせると同時に!

 自分の言っていたことは正しいのだと確信させる!!

 この一連の流れは、人間などでも割と用いられる類の手法!

 洗脳とかそんな感じのヤツなのである!!!

 無論このスキルイノシシがそんな手法を元々持っているはずがない!

 これらはすべて、あの運命を司る神の一柱が与えたものであった!!!

 とはいえ、こんな超大雑把な方法がそうそううまくいくはずもない!

 にもかかわらず容易く成功したのには、理由があった!!


 スキル「熱血指導」!!!


 なんか熱血風な熱い感じで押せば、指導される側は納得してついてくる!

 ついでに、指導効果により獲得経験値にも+効果があるというスキル!

 真っ当な使い方をすれば、多くの人を幸せにすることができるスキルだろう!!!

 しかし!!

 ひとたび悪用せんとすれば、このスキルは恐るべき一面を見せるのだ!

 良いも悪いも、使うもの如何なのである!!!


 この三匹を皮切りに!!

 スキルイノシシは多くのイノシシと!

 さらには他種族の動物達までも言いくるめていった!!

 軽い訓練と成功体験を与え!

 ある程度自分の言うことを聞く小集団がいくつもできてきたところで!!

 それらを一つに統合!

 巨大な武力集団を作り上げたのである!!!

 スキルイノシシの上手いところは、一つの種族の数は少なくし、多くの種族で集団を作ったところだろう!

 そうすることで、「モテる」という最大の利益を上手く被らないようにし!!

 集団の中で無駄な競争が起こることを抑制!

「他種族ともわかりあえる心が広くてかっこいい俺www」

 という超わかりやすいイキりポイントを与えることで、さらに調子に乗らせることに成功!!

 更に!!

 大きな集団にすることで、自分への反対意見を排除する機構を組み込むことにも成功していた!

 偉大なる指導者にして、集団を導くスキルイノシシ先生の意見に反対するものは、すぐに発見されてつるし上げられる!!

 反対意見を持つものを公開リンチすることで、集団の熱を上げるとともに!

 逆らおうという気持ちを折ることにもつながる!!

 さらに!

 そういった「裏切り者」を密告したものに特典を与えることで、より密告しやすい環境を整備!

 異種族ばかりでまとめるのが難しいはずの集団に、規律を生んだのである!!


 なぜ、こんなことをするのか!

 一体何が目的なのか!!

 そう!

 スキルイノシシの目的は、一つである!!


「諸君。いよいよ、私の待望を果たす準備が整った。諸君らの正義が、実を結ぶ時だ。諸君は知っているだろうか! 人間の村を! あの、なんか、芋ばっか作ってる村を!!」


 シャーチク村のことである!!!


「あの連中が我が物顔で居座っている場所は! 本来我々の祖先が伸び伸びと生きていた場所だ!!」


 三百年ぐらい遡れば多分その通りなのである!!!


「それを連中は奪い取り! 木を切り倒し! 外来種である芋をメタくそ植えまくっている!!!」


 野菜類は結構外来種が多いのである!!!


「こんなことが許されるだろうかいいや許されるはずもない!! こんな邪悪を我らが許していいのだろうかそんなはずがない!!! この邪悪をどうすべきか!!!」


「「「滅ぼせ! 滅ぼせ!! 滅ぼせ!!!」」」


「そう! 滅ぼすしかない!! 悪と対立するこの戦いは、正義の聖戦となるだろう!! 正義の戦いに赴く諸君らは、正義の使徒である!!! そして!!!」


 集団が固唾を飲んで、次の言葉を待つ!!


「今は丁度収穫時期である!! 連中の畑の作物は栄養満点! 食えば食っただけ身体がでかくなる! 美味くて健康に良いのだ!! しかも、食えば食っただけモテるわけである!!!」


「「「おお……!!」」」


 感嘆である!!

 この場合、同じ読みの「簡単」でも良しとしよう!

 ドン引きするほど簡単に誤魔化せる的な意味合いである!!!


「悪を倒そう!」


「「「悪を倒そう!!!」」」


「我々は正義だ!!」


「「「我々は正義だ!!!」」」


「モテよう!!!」


「「「わぁあああああああああああああああ!!!!!」」」


 集団のテンションは!

 MAXまで跳ね上がったのである!!


 かくしてスキルイノシシがまとめ上げたアニマル・ソルジャー達は!

 収穫を直前に控えたシャーチク村の畑へと!!

 突撃を開始したのである!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] イノシシ肉ー!タンパク源ー! 運命の神のせいでかわいそーと思ってたけど、自分非モテでもひっそり世間様に迷惑かけず生きてきたのに、非モテ全体のイメージを悪くする行動を起こしたイノシシにもう慈…
[一言] >>三匹はなんとなくその木になってきちゃっていたのである!! 精霊に転生するフラグですね、わかります><
[良い点] 収穫祭のお肉が自分からやってくる。 [気になる点] でもイノシシさんは美味しく無い……… [一言] イノシシさんがフィーバーしてらっしゃる。 舎弟達もヒャッハーしてらっしゃる。 ああ、村…
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