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ソラモヨウ  作者: SIN


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58片

 毛むくじゃらと休みが重なった日の事。俺達は兼ねてから行きたかったアクアショップに向けて自転車を走らせていた。

 大きな家電量販店を曲がって真っ直ぐに行けばその店がある……筈だった。

 何日も前から店の場所を確認し、グーグルマップで何度もルートの確認もして、迷わないように道を覚えていた筈だったのだ。

 出発したのは午前中で、途中でリサイクルショップに立ち寄った。

 リサイクルショップでは随分と前から店に陳列されてはいたが値段の付いていなかったコーヒーミルが、ハンドルなしの状態で300円の値が付いているではないか!しかし、その横に陳列されていたコーヒーセットのスプーンとしてハンドルが置かれているのを見た時は、思わず本体とハンドルを手にニマニマしてしまった。

 「怪しいわー、離れて歩いて」

 と、毛むくじゃらに揶揄される程。

 良い買い物が出来た後はアクアショップ捜索の続き。

 大きな家電量販店はスグに見つかり、そこを曲がって真っ直ぐ……後は店が見えてくるまで直進するだけ。

 なのだが、行けども行けども店がない。それどころか辺りは徐々に田舎の風景へ。

 「え?こんな所にホンマに店あるん?」

 と、毛むくじゃらから不安げな声が聞こえてくる。

 「あるって見たで」

 確かに見たが、聊か遠くまで来過ぎてないか?地図で見た時は、もっと家電量販店の近くにあった筈なのに、既に家電量販店も見えない距離まで来てしまった。

 そして、山が近い。

 「店なくなってるとかちゃう?」

 一旦自転車を止めた俺の隣に来た毛むくじゃらが、来た道を振り返っている。

 「行った人のレビューまであったのに……」

 とは言っても、いつに書かれたレビューなのかまでは見ていない。

 進むか、戻るかの選択を迫られた俺はここで根を上げた。

 「……スマホで調べてみて……」

 こうして近くにあった自動販売機前まで移動し、コーヒーを飲みながら地図確認。

 「この近くに熱帯魚屋なんかないで?」

 どうやら「熱帯魚屋」と検索したらしいので、俺は画面を覗き込んでちょいちょいと現在地点から家電量販店までの道を辿ってみた。しかし、目当てのアクアショップの名前はどこにもない。

 「あれ?」

 溜息1つ吐いてスマホ操作をする毛むくじゃらは、買った缶コーヒーが半分程になる頃、

 「アクアショップ○○って所なら家電量販店の近くにあるわ」

 と。

 「そこ!それ!」

 「……大分通り過ぎてるし、これ、左に曲がらなあかんやん」

 「あれ?」

 来た道を、今度は毛むくじゃらを先頭にして戻っていくと、恐ろしい事に「熱帯魚」「金魚」の昇り旗が道にたっていたのだった。

 「来る時なんで気付かんかったん!?」

 「ホンマそれ!」

 左に曲がれば、予想していたよりもズット小さな店がそこにあった。

 駐輪する場所もなく、自動ドアでもない店の扉は非常に開け辛く、自転車を置く場所がない事を理由に帰ろうかな?と、そう思った時だった。

 ガララ。

 店の中から、オバちゃんが出てきて、

 「見てく?」

 と。

 すると毛むくじゃらは、

 「自転車は何処に停めたら良いですか?」

 と質問をし、オバちゃんは店の隣を指差し、

 「その辺に停めたら良いよ。ここナナメになってるから、自転車倒れんように」

 と、かなり親切に言ってくれた。

 自転車を停めて店内に入ると、思ったよりも狭い。しかし今まで見たどの店よりも魚は生き生きしているように見えたし、なによりベタが沢山いた。

 ベタを見ている俺の後ろでは、

 「何か飼ってるの?」

 と、オバちゃんが毛むくじゃらに尋ねている。

 「はい、ベタを……」

 飼っているのは俺だが。

 それを聞いたオバちゃんは、

 「あー、ベタは水温が高くないとねぇ」

 と。

 「ヒーター入れてますよー」

 そう、ヒーターを入れて常に26度にしてる。

 「どんな感じで飼ってるの?こんな水槽で?」

 「えっと、30cmの水槽と、もう1つは20cm位の水槽ですね」

 「ん?」

 「あ、オスとメス1匹ずついるんですよ。でもオスが全然泡を出さないんですよー」

 あ、うん。その通りなんだけど、良く知ってるな!

 「オスの水槽の中に、容器に入れたメスをドボンって入れといたらえぇんよ。泡を作り始めたらメスを容器から出して一緒に泳がせたらえぇわ」

 物凄く耳寄りな情報を毛むくじゃらに熱弁しているオバちゃん。

 「あ、でも1回泡を作って、その時に繁殖用の水槽に移したんですけど、それから全く作らなくなったんですよ」

 そして事細かく色々と把握している毛むくじゃら。

 「あー、それはアカンわ。水質変わってまうもん」

 「あぁー……そうですね……」

 水質が変わらないよう元の水槽の飼育水をそのまま移したけど、それだけでは足りなかったので水を足した。劇的ではないにしろ、確かに水質は変わっただろう。

 まさか、そんなちょっとの事で泡巣を作らなくなるなんて。

 オバちゃんと毛むくじゃらの会話はその後も続き、俺は黙々と店内を見てまわる。そして、水槽を傷つけない苔取りスポンジ取っ手付き。を見つけた。

 それまでは水槽面に付着した苔を、水槽に手を入れて布でふき取っていた。でも取っ手付きなら水槽の中に手を入れなくてもよくなる。

 これは良い物を見つけた!

 ブラシを手に取ろうとした所で毛むくじゃらが急に、

 「アナカリス(水草)はありますか?」

 と、オバちゃんに尋ねた。

 「あるよー」

 オバちゃんは水草水槽の中から2束のアナカリスを取り出して見せてきた。

 1束は少し短くて、もう1束は物凄く長い。

 「国産ですか?」

 「うんうん国産」

 国産かぁ。と、何気なく見た値段は破格の200円。

 「買おか」

 と、毛むくじゃら。

 「うん」

 と、俺。

 オバちゃんは長いアナカリスを袋に入れてくれて、俺は追加で苔取りブラシも購入。すると毛むくじゃらが横に置いてあった水槽を眺めながら、

 「水草って、ライトで育ちますか?」

 との質問を投げかけた。

 「育つよー」

 「これと同じサイズのライトがあって……あ、これLEDなんですね」

 「そうそう、これもLED。3種の光がスイッチで1つづつ点けられる」

 と、オバちゃんは赤、青、白のスイッチを順に押して説明してくれた。

 「んー……ライトは少し考えます」

 「はーい。また来てねー」

 こうして良い買い物が出来た帰り道、毛むくじゃらはライトについて意見を求めてきたので、

 「LEDって水草にえぇの?」

 と、軽く質問してみたのだが、

 「LEDには赤色の光がないから蛍光灯の方がえぇって見たんやけど、今見たん赤色の光あったし。それに、○○ってメーカーやから、えぇやつやで。もう1つあったんも○○って有名なメーカーのライト。でもなぁLEDライトって電球切れても交換できんから使い捨てやん。今使ってるのは蛍光灯やから100均でも買えるで」

 思った以上の情報量に圧倒された俺は、やんわりとお勧めされているであろう言葉を言うしかない。

 「今のままでえぇか」

 と。

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