第4話
前回の前書きで書き終わって無いと書いたな、あれは嘘だ。
投稿予約していたら書き終わりました。
明日に二話投稿したら、本当に書き溜め分が無くなるので、しばらく時間を置きます。
18日の12時と18時に投稿予約しておきます。
明日以降は本当にしばらく先の投稿になります。
作者、嘘つかない。
日本はマランギ王国との接触以降もマランギ王国の主張する領土以外の調査を続け、マランギ王国の北にあるケンベルク帝国とも接触に成功していた。
ケンベルク帝国はマランギ王国の北方に位置しており、土地は痩せているが、鉄や金銀といった鉱物資源が豊富に採掘される資源国である。豊富に採れる質の良い鉄をふんだんに使った重装歩兵の軍事力と金山、銀山の底知れない資金力を誇る。食料生産力は貧弱であるため、食料供給はマランギ王国頼り、人口、北国という過酷な地で経済活動で劣っているため、総合的な国力ではマランギ王国の方が圧倒している。
ケンベルク帝国はマランギ王国と建国以来続く同盟関係にあり、同じ人類側として共に戦っていたが、ケンベルク帝国の先帝による親征の大敗で帝国内が大きく割れて内戦状態に突入したのだった。親征に先帝と皇太子、国内の有力貴族の当主と皇族の有力者の多くが参加し戦死したことで、帝国中の貴族家で跡目争いが発生して、帝室も跡目争いに道具にされて各地で自称皇帝が擁立されていった。
混乱状態にあったケンベルク帝国は同盟国で、人類の盟主でもあるマランギ王国に内戦終結の仲介を要請した。マランギ王国は要請に応じて介入するも内戦終結の仲介には消極的で、同盟国で仲介者という名目でケンベルク帝国の資源や利権の確保に勤しみ、内戦終結の助けとはならなかった。それどころか、マランギ王国という外部勢力の介入は内戦の激化に繋がった。
フレデリック・フェルナンド・ケンベルク、戦死した先帝の孫、皇太子の長子であり、本来ならば帝国の主になるはずの人物であった。
国内の有力勢力と誼を結び、皇帝に即位したフレデリックは10年以上の年月をかけて内戦を終結に導き、帝位を己の物にした。
幼少時は人質としてマランギ王国に預けられ、血で血を洗う内戦を経験したフレデリックは極度の人間不信に陥っていた。
ケンベルク帝国は皇帝と中央の権力の強い構造だったが、フレデリックが内戦中に敵対した勢力を容赦なく一族まとめて処刑していき、得られた利益をフレデリック側に付いた味方に分配していった。内戦を制して以降は内戦中の味方を様々な理由を付けて引退に追い込んだり、謀殺したり、謀反人として処罰していった。
こうして皇帝と中央権力の強化と掌握を行ったフレデリックは法が支配する法治国家と専門性の強い官僚制度へと舵を取っていった。編成した官僚機構と法秩序の頂点に皇帝が君臨するのがフレデリックのケンベルク帝国の姿である。
人間不信に陥っていたフレデリックは政軍両面に優れた才能を持っていたがために己が万能であり、国家運営の全てを掌握しようとして、官僚機構に政務を任せようとはしなかった。
在位20年目の節目の年、フレデリックの権勢は絶頂を迎えており、それを天下に知らしめるべく大規模な巡幸を行い、港町ゲレに訪れていた。
まさにそのタイミングで、マランギ王国から北上していた護衛艦『いずも』を旗艦とする統合任務部隊とファーストコンタクトを果たしたのだった。
その時のケンベルク帝国の混乱はウェストフォーレンのそれとは比較にならず、皇帝に疑われることを恐れてゲレの行政長官、ならびに、巡幸を取り仕切っている典礼省の大臣が自害したほどであった。フレデリックも近衛兵に守られつつゲレから離れたが、幾日経っても襲ってくる気配を見せないことから冷静さを取り戻せた。
ここからはウェストフォーレン会談の焼き直しに近く、日本国に対する大使の派遣が実現された。ウェストフォーレン会談との大きな違いは大使の派遣が即座だったことと最高決定力を持つ皇帝との交渉だった点だ。
ケンベルク帝国大使は『いずも』に乗船して、異世界初の訪日となった。
内戦を終えたケンベルク帝国はマランギ王国に国力で大きく引き離され、内戦中にマランギ王国が裏工作を働いていた濃密な疑いと内戦中の火事場泥棒的な行為もあり同盟関係にひびが入っていた。
このため、内戦の真っ最中からフレデリックはマランギ王国との関係を見直し、新たな外交関係を模索している。新たな外交関係には人類以外の異種族との講和という選択肢も含まれており、表向きは聖戦の継続を発表するも至高教との距離を置きつつ、内密に異種族国家とのパイプを探している。
マランギ王国どころか、世界のどの大国でも真似できない巨船を派遣できる日本という国との関係はフレデリックとケンベルク帝国にとって大きな意味を持っている。マランギ王国に頼らない外交関係の樹立にも大きな助けとなり得るが、世界のどの大国でも真似できないことを実現する超大国との関係は安全保障の要である。一歩間違えれば、マランギ王国の影響を排除できたが、それを遥かに超える超大国の植民地になりました、ということになりかねないのだ。
日本がケンベルク帝国に野心を持たないように、舐められないように、かつ、友好関係を築けるのが理想だ。
フレデリックは大使の一挙手一投足に至るまで掌握するべき重要案件、日本は世界と接触をしたばかりという状況で二番手以下になるのは千載一遇の機会を逃すと判断を下した。
日本としても一刻も早い国交の樹立は願ったり叶ったりだ。
足りない資源の輸入が優先目的だが、他国との仲介や国際情勢の入手など資源国でなくても国交樹立がもたらす利益が大きく無視できない。異世界の国際情勢によっては国交樹立は敵対国の不快感を招く恐れがあるが、どの国がどの国と敵対しているのか、そもそもどんな国がどこにあるのか、といった情報を知らなければ避けることも対処することも出来ない。
この時点の日本が把握している限りの国際情勢はマランギ王国、ケンベルク帝国、アテトリ王国の三国であり、アテトリ王国はマランギ王国の属国、ケンベルク帝国は同盟国であり、同一宗教を国教としているため三国間の関係は敵対的でないということであった。だからこそ、日本は南下せずに、北上して調査を続けたのだった。
ケンベルク帝国大使との迅速な会談に喜び勇んで臨んだ外務省だったが、喜びが落胆に代わるのに時間はかからなかった。彼らは皇帝であるフレデリックと日本との伝言メモ以上の働きを見せなかったのだ。
フレデリックが大使一行に事の重要性を念を押して伝え、文字通り大使の一挙手一投足まで管理したために日本から何を言われてもフレデリックを通さないと答えることが出来なかった。大使一行は誰もが不機嫌になっていく日本と非効率さを理解していたが、勝手に動いて謀反の疑いを抱かれて粛清の憂き目にあいたくはなかった。
フレデリックに疑われることは処罰に直結するということを骨身に染みて理解しているため、日本に持ち込んだ長距離通信を実現する魔道具で本土にいるフレデリックのお伺いを立てていた。
当初の思惑通りいかなかった日本だが、得られるものが無かったわけではなかった。
まずは言語理解に必要な言語データの収集、翻訳魔術への理解、可能な限りで聞き出した異世界の知識は異世界理解への大きな助けであった。特に、雑談などで得られた基礎的な知識や常識は大いに価値がある情報であった。
また、異世界には長距離通信手段が存在しているという事実も重要であった。
長距離通信手段についてはケンベルク帝国大使が度々フレデリックに通信を行っていたことで、どの程度の性能があるのか推測できるくらいの情報が集まっていたため、遅々として進まない会談にも一定の成果はあった。
一定の成果を出したからといっても、悠長に外交をやっているほど時間的猶予が無いのが日本であり、そうこうしているうちにマランギ王国からの使節団の来日日を迎えた。
東京赤坂迎賓館
紀州藩藩邸跡地に東宮御所として建設され、戦後になり皇室から国に移管され国会図書館などの用途に使用され、現在では外国からの賓客をもてなす迎賓館として使用されている。
日本政府はサラディオ・マランギ・ゴーベル王太子を例外的な処置として公賓として遇し、日本有数の老舗ホテルであるホテル大倉を宿泊場所として提供した。
肝心な外交交渉の場として用意されたのが赤坂迎賓館であり、日本国、アメリカ合衆国、ロシア連邦の地球側3ヵ国、マランギ王国、至高教、そして、ケンベルク帝国の異世界2か国、1団体の六者会談の場として利用された。
遅々として進まない会談に変化が訪れることを期待した六者会談だった。
六者会談に先立って行われたマランギ王国と至高教との顔合わせを兼ねた三者会談で日本はケンベルク帝国との会談で得られた情報を駆使したブラフ戦術を見せた。
ウェストフォーレン会談でのやられた翻訳魔術の不備を指摘して欲しかったと笑い話にしつつも釘を刺した。それ以外にもケンベルク帝国経由で得られた、長距離通信といった魔術知識、異世界における国際情勢といった世間話の話題として出すことで、日本がどの程度まで知識を得たのかという点で疑心暗鬼を生じさせ、知識不足を利用した一手への牽制に使った。
マランギ王国は隠していたストロングフォートの陥落と獣人・ドワーフ連合の王国東部への侵攻、先日行われた会戦の大敗といった情報まで出されたため、日本は持っているカードを全て使い切っていたが、マランギ王国は日本がまだカードを持っているのか、持っていないのか判別がつかないでいた。
先立って行われた会談でまだ拙いながらも異世界語、マランギ王国を中心に使われている人類圏の共通公用語を終始使った会談だったために余計に判別困難になっていた。
判別させる最も簡単な方法はケンベルク帝国に問い合わせればいいのだが、現皇帝フレデリックはマランギ王国に不信感を募らせており、問い合わせに素直に応じるとは思われなかった。また、ケンベルク帝国大使に直接問い合わせようにも、日本は宿泊するホテルをわざわざ引き離し、両者だけでの会談をあれこれ理由を付けて突っぱねていた。
ケンベルク帝国でも会談にライバルとなるマランギ王国と至高教が入ってきたということで、フレデリックから、無能判定を受けつつも、大使に全権が委ねられた。
赤坂迎賓館で行われている会談とは別に日本政府は外交上の大きな悩みを抱えていた。
悩みとは外務省に届けられた各国大使館連名の要望書であった。
要望内容は現在行われている六者会談に関する全情報の開示、会談への参加を認めること、会談による成果を各国に平等に開放することを確約することなどといったことであった。
普段なら、日本お得意の前向きだがどうとでも取れる何も約束していない定型文の回答を渡すだけだったが、今回ばかりは総理に相談してからと回答して山之内へと報告と指示を求めに走った。
「総理、各国大使館連名の要望書が届きました。要望は六者会談への参加要求とそれによる成果の解放を確約することです」
慌てる外相に山之内はいずれ来ると思っていたから特に驚きもせず、淡々と返事した。
「六者会談による成果は各国にも正当に開放されると回答してください。あと、アメリカとロシアにも今回の要望書について情報共有を行うようにしてください」
外相は何もわかっていない山之内に内心の苛立ちをぶつけるように、言い募った。
「そんな回答で解決できる問題ではないんです。今回の要望書は米露を含めた154ヵ国、日本に大使館を置いている全ての国の連名ですよ」
目を見開き、驚愕しつつも、信じられないとばかりに詰問するように問う。
「それは何かの間違いでは無いのですか?どうして米露まで、いえ、154ヵ国もの国が纏まって要求するなんて、どうして外務省に事前に気付かれずにまとまれたというのですか」
「何度も確認して、各国大使館にも直接問い合わせましたが、154ヵ国全ての大使館から同じ回答を得られました。これは悪夢のような現実ですが、154ヵ国も外務省の目を掻い潜って団結したというのは事実でしかありません。総理、今後の方針について総理の方針を教えてください」
放心した山之内に今後の方針を問い合わせる。
「・・・・・・まずは、情報収集を。各国にはトップレベルでの協議中だと答えて時間を稼いでください。少々の譲歩は無条件で呑んでも構わないのでアメリカとロシアを引き離せないか試してください。それと154ヵ国の団結を崩して、いくつかのグループに分かれさせることが出来ないかも試してください」
「分かりました」
「それから、各国がマランギ王国とケンベルク帝国、至高教の使節団と接触することは無いように監視するようにしてください。会談で各国大使館間でこんな動きがあるということも悟られないように」
翌日、目の下にクマを作った外相は昼夜を問わず駆け回り、何が起きたのか情報を掴み総理のもとに急いだ。
「総理、各国大使館が連携した原因が分かりました。竹島問題です」
「・・・・・・なるほど。不信感が限界点を超えたということですか」
外相は山之内がしばし考えてから出した答えにその通りとばかりに頷く。
「竹島は失策でした。転移後の待遇は日本も事態を把握できておらず混乱していたため、主要国以外への対応までは手が回らなかったで理解を得られますが、冷遇されるかもという不安感は生じていました。そこに隣国韓国に対する竹島問題への対応が、各国に自国民も同じ対応を受けるのではという不安を強く煽ってしまったようです」
「冷静、かつ、論理的に考えれば、日本は各国を無視できないという回答を出すはずですが、その回答に反するような対応を日本がしてしまった。あの時の責任者に責任を取らせて納得しませんか」
総理の案に首を横に振って答える。
「無理です。私や総理が今辞任するわけにはいきませんし、日本政府内にそういった各国と論理を共有していない一派がいるということが不安感を煽っているのですから、誰が責任を取って辞任しても意味はありません」
日本は突然異世界に飛ばされたが、どうして飛ばされたかという原因や原理、そもそもどういった現象だったのかという点についても未だに何一つ分かっていなかった。
突然飛ばされたように、また突然地球に帰るのでは、地球から別の国家や地域が異世界に転移してくるのでは、という予想は無視できなかった。
転移した後でも日本国内には外国人や外国企業はそのまま残っていることも大きい。外国人の割合は少なくても、絶対数で200万人以上いるのだ。それに対して警察職員の総数は30万人もいないのだ。自衛隊を足してもまるで足りず、外国企業の日本経済への影響力も無視できない。
このため本国が消えて公館しか無い外国の待遇は悪くはなっても、完全に無視することは出来ないでいた。
もしも外国本国がこの異世界に転移してきたなら、その国も混乱するだろうし、そこへ先に転移してきた国家として協力するという恩を売れば大使への冷遇も誤魔化しようがある。だが、もしも日本が地球に帰還したとなれば、過度の冷遇は本国との関係悪化に繋がる。日本からすれば地球に帰還する可能性が残る限り、外国公館は完全に無視することも出来なかった。
外国公館は本国が消えても日本に在留中の自国民は変わらずに日本に滞在中だった。だったら、大使、そして、大使館の役割は自国と自国民の安全と利益の追求である。今のところは日本は外国人に対しても変わらない保護を与えているが、この保護がどこまで続くかという懸念があった。
外国公館側も日本は諸外国を無視できないはずだという考えを共有していたが、もしかしたらという可能性も検討していた。もしかしたらへの警戒心は各国によって現実的と考える国から非現実的と大して考慮しない国まで温度差が激しかった。
しかし、竹島での対応が各国の懸念を現実的、かつ、深刻なものにした。
隣国韓国でもあの冷遇に、紛争地に滞在していたとはいえ民間人に対する兵糧攻めといえる対応で応じた日本は竹島問題の解決には全く見合わない各国からの不信感という対価を支払うことになった。
日本政府は竹島での対応について謝罪と釈明を行っていたが、各国は一度生じた日本への不信感をぬぐい去ることは出来ないでいた。
結果論だが、日本が韓国に支援の手を差し伸べていたら、陣営を超えて纏まれるくらいに日本政府への不信感は強まらず、このタイミングでの介入も起きなかった。介入が起きなかったら、いずれは外国人や公館は徐々に日本に帰化していき、公館は機能を縮小して日本の省庁と一体化しただろう。
日本を信頼できなくなった外国公館は自国民保護のためにも日本以外に生前可能な土地を獲得するべく動き出し、アメリカとロシアを担ぎ上げて動いたのだ。
各国からしたらここが分岐点であり、ここで動かなければ全てが終わると不退転の覚悟で要求を突き付けた。
「アメリカとロシアが協力したのも不安感からでしょうね。とはいえ、六者会談に米露を除いても152ヵ国も追加するわけにはいきませんよ」
「それなのですが、アメリカから提案が打診されました。国連憲章外の特例として臨時の国連を設置して、国連を会談に参加させるという案です。実は総理にお話しした各国の内情もアメリカから提供されたもので、アメリカ案に各国も承知済みで交渉を一任されているとのことです」
山之内は始まりから終わりまで準備万端に整っている状況に思わず苦笑交じりになる。
「手回しが良いことで。そこまで整っていると交渉の余地も用意されているのでしょうね。アメリカには提案への感謝と、閣議を通してから正式にお願いすると伝えてください」
「用意してくれていますよ。非公式にでしたが、安保理は設置しないことも検討できると伝えられました。正直、アメリカやロシアはともかく、中国やイギリス、フランスに強権を委ねたままという状況は避けたかったですからありがたい限りです」
「そのくらいは日本に花を持たせてくれるというアメリカからの贈り物ですから、喜んで受け取っておきましょう」
要求を断固無視すべきという強固な反対意見もあったが、国連憲章外の特例として日本国内に常設の臨時国連総会と臨時事務局の設置、並びに、国連の六者会談への参加容認という米国案は閣議を通過した。
日本の強い反対と各国内でも反対意見があり、国連安全保障理事会は臨時でも設置しないことになり、安保理が担っていた機能は基本的に臨時国連総会が引き継ぐこととなった。
常任理事国に実質的に世界唯一の国家となった日本に対抗することが出来なくなった以上は、大国離脱の防止と実行力の付与を目的とした拒否権と5大国の地位は意味を持たなくなった。離脱防止と実行力の付与に欠かせない日本に国連設置という要求を呑ませるための対価として差し出されたのが安保理の廃止だった。
日本国内向けには国連の設置は国連外交の継続による平和国家路線を維持することの決意表明、安保理の廃止は日本の交渉による成果として発表された。
日本とアメリカ、ロシアの三国の決定が国連の決定となるほど強い影響力を持ち、外交問題でも国連ではなく三国間の協議が決定権を有する構造は変わらなかったが、日本、アメリカ、ロシアの三国以外も限定的でも国連を通して関与できる形が出来上がったのは大きな変化であった。
152ヵ国の参加要求というトラブルに見舞われ、国連の途中参加ということになった六者会談、改め、七者会談は日本の望む方向に順調に進んでいた。
しかし、上手くいくと思われた会談の影に隠れて日本も、マランギ王国も、ケンベルク帝国も知らなかったパンドラの箱が開こうとしていた。
まず最初に異常に気付いたのがマランギ王国使節団の人数が減っていることに気付いた使節団を監視していた公安だった。
外務省がそのことを何気ない日常会話に含ませて情報を引き出そうとしたことでマランギ王国も自分たちの使節団の人数が減っていることに気付いた。
ウェストフォーレンで雇った人夫だっとことでマランギ王国側は気づくのが遅れ、自分たちの知らないことだったから素直な反応を見せたが、これを日本は使節団にも内密に送られたマランギ王国本国からのスパイだと考えた。
単なるスパイだと考えられていたこの一件が、異世界の動乱に日本も巻き込む災いの種だった。
されども、七者会談そのものは極めて順風満帆に進み、日本国、アメリカ合衆国、ロシア連邦、マランギ王国、ケンベルク帝国、国際連合、至高教の5か国、2機関による国交締結の友好条約と、細かい規定については後回しになったが、通商条約の二条約が調印された。
通商条約には自由貿易を目指す方向性で交渉を続けていくと定められ、マランギ王国とケンベルク帝国内での資源開発についての基本原則も定められたことで、資源確保への道筋確保という目標を完遂することができた。
マランギ王国、ケンベルク帝国の双方が魔道具を使い、本国に条約文書を伝達し、批准の為に条約原本の送付している間に友好条約に従い、駐日大使館の設置と対日外交団から駐日全権大使へとなる信任状捧呈式が行われた。同条約では至高教は都内に日本大聖堂を設置し、そこを大使館と定められ、布教と信仰の拠点として利用されることとなった。
日本からも両国に向けて批准書を携えた特命全権大使が派遣され、日本が切望した異世界との国交が開かれた。
そこからは連日のようにマランギ王国、ケンベルク帝国の大使館に日本を代表する資源開発企業や日本に進出していた世界的な大企業が外務省や経産省の官僚、各国の大使を引き連れて訪ねては実務的な会談から接待や挨拶と休む間も無かった。
何が何でも資源を確保しろというお上からの至上命令もあり、各企業は青天井の接待交際費を計上していた。
後に、駐日大使は国王以上の富を得るとまで言われる接待攻勢の始まりだった。
一カ月で受け取った金塊の体積が人一人分よりも大きかった、大使が欲しいと呟いたものは一時間もあれば大使の手元に数えられないくらいあるという逸話まで残っているほどだ。
通商条約締結に七者会談中から上昇していた資源関連株に買い注文が殺到しストップ高を記録し、日経平均全体も転移以来の伸び率を記録した。
株式市場は早期の資源供給再開の見込みに期待感を持って応え、実体経済でも操業再開した企業数が休業した企業数を上回るなど期待感に満ちていた。
資源開発企業は政府の計画に従い資源開発に必要な物品に発注などの準備を行っていたが、通商条約締結でより本格的に動き出し、受注に向けて企業連合を結成するなどの動きを見せた。また、資源開発に必要だからと建設会社や運送会社から重機やトレーラーを人員ごと政府が借り上げるなどの動きもあった。
日本中が転移直後から続いていた停滞から抜け出そうとしている時、日本中がひっくり返る重大発表がロシア大使館から発表された。
ロシアはアテトリ王国メトリリオ王太子を保護しており、アテトリ王国の安定化と王権の奪還に尽力するというものだった。
そのために必要な処置としてロシア軍のアテトリ王国への派兵が発表された。
同盟関係≠対等。
ケンベルク帝国とマランギ王国の関係は日本とアメリカみたいな関係です。
作者は韓国が嫌いということはありません。邪魔だったからご退場してもらったのですけど、やり方が失敗しただけのことです。
そろそれ資源を確保させてあげないと日本が詰むので、石油を確保させてあげることにしました。
世界最大のガワール油田クラスの油田がアテトリ王国からマランギ王国に跨って存在しているという設定になっています。
基本的にロシア軍の活躍は書きません。
『ロシア軍が勝って占領しました』程度で終わります。
メインは日本と異世界なので、書くとしても在日米軍くらいですかね。
次からは燃料不足の自衛隊のPKO派遣がメインになります。
ブタは不潔のように扱われていますが、実は綺麗好きという話は有名だと思います。
RPGだと雑魚モンスターの代名詞で、不潔の象徴に扱われるゴブリン。
この作品でも暗い穴倉に住んでいますが、実は彼らは不潔な環境を好んでいます。
思いついたから設定してみた設定です。
次回のサブタイトルは『リザードマンのミンチ肉100gの単価はおいくらですか?』です。




