17.臨時拠点
「あ、地面が変わった」
黒く斑に染まり、ネチャネチャと歩きづらかった大地から、一筆で線を描いたように区切られて草原が現れる。
徐々に変わるでも、山や川に遮られている訳でもないのに急に景色が切り替わる様子はいつ見ても違和感が凄い。
「チュートリアルと同じだね」
「あの機兵たちに汚染されているのをクリスタルが抑えているみたいだから」
「細かい設定とか分かんないや」
もうちょっと細かい設定とか調べるべきだったかなぁとは思いつつも、どうせナナがしっかりと把握してくれてるから良いかなとも怠惰な事を考えたり。
「……今回は良いけれど、ちゃんと自分たちでも調べなさいよ? 個別クエストでも困るわよ?」
「うっ、わかった……」
「何処で調べれば良いんだ?」
「私は考察クランの【天文台】という場所を尋ねたわ」
考察クランの【天文台】は各プレイヤーから個別クエストの詳細を尋ねて回ったり、世界クエストで起きた出来事を全て記録したりして、このゲーム世界の歴史や真実といったものを研究しているプレイヤー達の集まりらしい。
ナナが尋ねた時はまだ一回も世界クエストに挑戦さていなかった為、あまり詳しい事は教えられなかったらしいが、それでも基本的な設定や世界観は聞く事が出来たと。
「一番多くの考察を的中させ、ほぼ全ての情報を把握しているマスターは居なかったけれど、だいたいの事は聞けたわ」
「後で尋ねてみるかぁ」
「私ももう一度尋ねてみるつもりよ」
「そん時は一緒に行こうぜ」
「予定が合えばね」
道中でナナにこの世界の基本的な設定――クリスタルが人々に力を与え、環境の汚染を食い止めていること、そして機兵はそのクリスタルが邪魔で破壊しようと行動している事などを教えて貰う。
自我を獲得した機兵は自らを新たな人類であると名乗り、旧人類の絶滅を為す事で唯一の人類に成り代わろうとしている事や、単純に機兵と人間では生きやすい環境が違うこと、機兵の活動の結果として環境が汚染されている事などを聞く。
「SF?」
「その要素はあるでしょうね。ちなみにC.Cは水晶暦の事で、滅びの危機に瀕した人類にクリスタルタワーが降臨した日から数えているそうよ」
「はぇ〜」
じゃあもう、この世界の人類が追い詰められて数千年は経過しているんだ。
ジワジワと滅びに向かっているみたいで何だか嫌な感じだな。未だに持ち堪えているとも言えるけど。
「……あら、天幕ね」
「人が居るのかな」
このクエストでの第一村人発見! と一人ではしゃいで二人に呆れられながら近寄ってみる。
「おや? 君たちは……そっちから来たという事は森に飛ばされたんだね」
「あれ、オーガスタスじゃねぇか」
なんと天幕には【True・end】のマスターのオーガスタスが居た。というか私たちよりも遅くクエストに挑戦したのは確実な筈なのに、何故先を越されているのだ。いやまぁ、当たり前か。
「ここは?」
「ここは攻略プレイヤー達の拠点さ。最初の方は帝国も降臨者を警戒して都市の内部には入れてくれないし、プレイヤーの降臨地点はPKギルドの奴らも現れるから中間地点に集まるのさ」
「なるほどね」
都市に入れて貰えないんじゃ仕方ないし、敵対者がいつ現れるか分からない場所で落ち着ける筈もないしね。
それにプレイヤーの降臨地点がバラバラだから、中間地点に拠点を構えるのは理にかなっていると思う。
多くのプレイヤーが集まればPKギルドもおいそれと手は出せないだろうし。
「にしても君たちは初心者だと聞いたけれど、ウタカタの森を抜けて来たのか」
「名前は知らないけど、確かに森ではあったな」
「あそこは初心者にとっては鬼門なんだよ」
「なんで?」
「みんな空飛ぶ敵と戦った事ないからね」
ワールドクエストに初挑戦する初心者のレベルは2が平均で、脅威度が星三つの偵察機に地力で下回っている。
その上現実で空飛ぶ敵と戦った経験のある現代人なんて居ないから、例えゲームだとしても正しい対処法なんて知らずに一方的にやられるらしい。
そのため偵察機が比較的多く出没し、初心者がよく躓くウタカタの森は最初の洗礼とも呼ばれているという。
「ハルカが盾になって、ナナが落として、私が一発ズドンですよ」
「ははっ、凄いね」
本当に凄いと思われているのだろうか。
「良かったら君たちも【True・end】に入らないか?」
「私たちが?」
「ウタカタの森を初回で抜け出して来るなんて将来有望だからね、もちろん強要はしないよ」
ハルカとナナの二人と顔を見合わせ、少しばかり相談する。
「どうする? PKギルドよりもマシそうだけど」
「まぁ、利点はあるのでしょうけど、集団に属するという事は必ず制約も付いてくるものよ」
「今ここで決める必要はねぇんじゃねぇかな」
まぁ、ハルカの言う通りだろう。
「そうだね、このワールドクエストを一通りやってから判断しても遅くはないと思う」
「そうね……それで良いかしら?」
横で私たちの返答を待っていたオーガスタスは苦笑しつつも頷いてくれた。
「もちろん構わないよ。君たちが僕らの仲間に成る事を願っている」
一先ず保留という事で話が纏まりかけた時、後ろから声を掛けられた。
「そんなギルドに入る必要はない。お前たちは我がギルドに加わるべきだ」
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†闇の焔†から申請が届きました
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Yes/No
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あー、そりゃコイツらも現れるよね。
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