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婚約破棄された異世界の魔女【連載版】  作者: 純太
第4章

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時が過ぎるのは早いですね。

また、週が過ぎるのも早いですね。

―――先週、投稿するのを忘れてました!すみません!!

運動不足ってわけじゃないと思うんだ。運動は苦手だけど。

討伐隊の作戦にも参加するし、出退勤は基本徒歩だし、職場も階段使ってるし、並みの現代日本人よりも運動してると思う。

それでも、慣れないことを緊張の中やるのってさ、いつもと違う筋肉やら神経やらを使ってすごく疲れるのだということを知ってしまった。


「ニーナ、疲れた?」


会場ではなくバルコニーの手すりに凭れ掛かり、私はゲッソリしていた。

もう、ゲッソリよ。夜会開始すぐにゲッソリよ。

フェルーク様が心配そうに顔を覗き込んでくる。


「明後日、筋肉痛になりそうです。」

「明後日?」


そこで首を傾げるフェルーク様。私の心を抉るので止めてください。この年になると筋肉痛は翌日ではなく二日後に来るんです。

結局、私は踊った。

今回はさすがにダンスを回避するのは無理だということになり、踊ることになった。

メルリーサ様からダンスの極意『全て相手のリードに任せる』を教わった。私のダンスの腕前を見て、その極意を教えてくれた時のメルリーサ様の苦い顔を忘れない。

フェルーク様が左に動けば、ステップはさておき私も左へ進み、フェルーク様が右へステップを踏めば

私もとにかく右へ進む。

あまりの拙さに、フェルーク様が踊りの途中で笑いを堪えているのが視界に入りましたよ。

ぐぬぬ。

まあ、ということで、私は緊張の中、慣れない(というかできない)ダンスをし、意識しまくってる異性と密着状態になり、衆目を集めるファーストダンスに参加させられて、無理やりダンスで変な筋肉使ったし、体も精神もヘトヘトなのだ。

ちなみに、今回も私のドレスを見て隣のフェルーク様を見て、生暖か~い目で見られました。はい。


「ここで暫く休憩してようか。」


そう言ってフェルーク様は手に持っていたお酒の入ったグラスを私に渡してきた。


「ありがとうございます。」


アルコールが染み渡ります。


「こうやって二人で呑むのは久しぶりな感じだね」

「そうですかね?」


今回の任務についてからずっと一緒だったから、あんまりそんな気はしないけど、言われてみれば、いつもの酒場みたいに二人で呑むのは久しぶりかもしれない。


ん?二人で?こ、これって……!


私はふいに気づいてしまったことへの衝撃を紛らわせるように、グッとお酒を一気に飲み干した。


「おお、やるねぇ。」


そう言うとフェルーク様もグラスのお酒を飲み干すと、新しいものを採りに行った。

その背中を横目に見送り、私は夜の景色へと目を向けた。


いま二人ってことは、これって、もしかして絶好の機会なのでは?

もしかして、メルリーサ様が作ってくれた機会が今なのか!?

チラリと会場を振り返るが、ダメだ、メルリーサ様が見えない。確認のしようがない。

踊って高揚した精神に、お酒で頬度よく麻痺した脳。次へのステップに気持ちが高まるばかり。

あ、何かダメな方向に思考が進んでる気がする。コレジャナイ感がすごい。

お、落ち着くんだ、私。とりあえず落ち着こう。

アドレナリンが出まくって熱った体には、少し冷えた夜風が丁度いい。

風を感じ、私はゆっくりと、深呼吸をするように息を吐いた。

テラスからは海が一望でき、月に照らされた海が綺麗だった。

波に揺れる月の光が、夜空に瞬く星にも見えた。

この世界でも海が見れるとは思いもしなかった。

日本に比べて交通機関が発達していないこの世界のこの国は、王都から海がある場所までは、気軽に行き来できるような距離ではなく冒険と言って過言ではない。

馬車や馬を乗り継いだって、それなりに金額もかかるし、平民の中には一生海を見ることがない人もいる。

海がこんなに遠い存在だったとは、思いもしなかった。

彼だって、本当は遠い存在なのだが、歩み寄ってくれるからそんなに距離を感じたことはなかった。

私が一方的に線引きしたって、何だかんだ言ったって意外と近くにいた気がする。

だからだろう。彼と過ごした学生時代は、そんなに悪くなかった。まあ、覚えていることも少ないが。誰が老化だ。

そんな彼との時間は、昔から嫌いじゃない。むしろ、好き、だった。


「おまたせ。」


フェルーク様が新しいグラスを手に戻ってきた。

優し気に、でもお酒を片手に嬉しそうに少し微笑んだ顔は、よく酒場で見る顔だ。

私だけに見せる顔。


「あの、フェルーク様。」

「ん?」

「伝えたいことがあるんです。」


あんなに緊張していたのに、私の口は自然と言葉を紡ぎだした。

私の台詞に、彼は数回瞬きをすると、小首を傾げて先を促した。

高鳴り跳ねる胸に手を添え、私は一呼吸置いた。


「あの、私、―――!」

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