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79話「堕ちた聖女は、憎悪に飲まれ」

 俺の目の前で、悪神は死んだ。


 いや、殺された。仲間だと思っていた、魔族(イリュー)の手によって。


「……イ、リュー?」

「はい、何でしょうか」


 血濡れた聖女は、神を殺した十字架を手に嗤っている。


 その瞳は妖しく、悲しく光っていて。


「勇者では無くなった、カールさん?」


 彼女は似合ってもない傲慢な態度で、その場に君臨していた。


















「……どういう、事だ? お前はイリュー……なのか?」

「そうですよ、カールさん」

「魔王? 魔王って何だ? 何で、どうして女神様を……?」


 俺は自分の手が、震えているのがわかった。


 起きてはならないことが起きてしまった、そんな実感があった。


「俺達を、裏切ったのか? いや、騙していたのか!? イリュー……!」

「そう、ですね。私は最初から、貴方を殺すために近付きました」


 くすり、とイリューは妖艶な笑みを浮かべた。


 いや。彼女の名乗ったとおり、魔王ユリィと呼ぶべきなのだろうか。


「改めて、こんにちは元勇者パーティーの皆さん。私は今代の『魔王』、そして邪悪なる龍の力を継ぎし堕ちた勇者」

「……お前っ」

「そのイリュー、と言うのは私の仮の名前です。本名とはいえ勇者(ユリィ)と名乗ったら、色々とうるさい人が多いから」


 すっ、と。


 魔王ユリィが十字架を振ると、彼女の服が新品のごとく洗浄された。


 損傷すら修復している? 時間に干渉しているのだろうか。


 ……だとすれば、現代では再現できそうにない魔術だ。イリューはその複雑な術式を、詠唱すらせず起動して見せた。


「うん、魔術が使えるようになっています。私の封印は、ほぼ解除されたみたい」

「……封印?」

「ええ。実は私、力の殆どを封じられていたんです。……憎き人間に、ね」


 改めて、イリュー────魔王ユリィと相対して気付いた。


 恐ろしい魔力量だ。彼女の内面に、凄まじい魔力が内包されている。


「ひっ!?」

「ど、どうしたのイリーネ」

「何ですの、これは。精霊が……、イリューを狂信していますわ……」


 彼女の周囲に魔力が漏れでたその瞬間、この聖堂に町中の精霊が集い始めた。


 集まってきた精霊のその数は、アルデバランの比ではない。魔王を名乗るだけあって、イリューは次元が違う。


 今よりずっと魔術が発展していた古代の勇者、その魔力は絶大の言葉に尽きる。



 ────測りきれない。俺の精霊に愛された目を持ってしても、彼女の魔力が膨大すぎてどれ程なのか分からない。



「……何でだ、イリュー。お前、ずっと俺達を騙してたのか?」

「ええ」

「一緒に飯食って笑いあってた時間、あれは全部嘘だったってのかよ!?」

「……ええ」


 やがて。


 カールは少しずつ激昂し、イリュー……魔王ユリィへと詰め寄った。


「俺は、俺は……。お前を信じて……っ!!! ちくしょう!」

「私もですよ、カールさん」


 今のカールは、勇者ではない。


 勇者としての力を失った、ただの冒険者だ。そんな彼が不用意に魔王に近付いたら、殺されても不思議ではない。



 ────しかし。ユリィはカールに胸ぐらを捕まれてなお、抵抗すらせず。


「……っ!」

「私だって貴方を、信じてみたかった……」


 魔王は険しい表情のまま、ポロポロと泣いていた。




「……ねぇ、カールさん。勇者とは、どんな存在か知っていますか?」


 やがて、ユリィは静かに語り出した。



「へ?」

「人類にとって勇者とは、何なのでしょう。それを考えたことはありますか?」


 女神を殺し、勇者の力を強奪した魔王。


 しかし何故なのだろう。今の彼女の目は、


「少し、昔話をしましょう。カールさん」


 どうして、あんなにも悲しげなのだろうか。
















 ────約400年前、第2次魔族決戦。それはイリューがユリィと名乗り、勇者として戦っていた時代の話だ。


 彼女は勇者のみで構成されたパーティー内で、後方支援に徹する地味な役割の勇者だった。



『威龍が出たぞ! 魔王軍の幹部だ!!』

『すぐ援護します、皆さん頑張ってください!』



 当時の勇者達は、誰をとっても現代の勇者(カール)なんかより遥かに強力であった。


 昔は女神の存在が身近で、人々の信仰心も強く、大地に魔力が飽和していたからである。


 そんな時代でユリィは、間違いなく当時最高の『支援魔術師』であった。


『よし、頚を落としたぞ!』

『よっしゃ! 威龍討伐だぜ!!』


 王国軍が束になってもかなわず、長きにわたり火山都市を苦しめていた災厄『威龍』。


 魔王軍幹部でもあったその龍は、勇者達の強襲によりあっさり撃破されてしまう。


 この戦いをきっかけに、勇者たちはその実力を知らしめ祭り上げられていくことになるのだが……。


『……きゃっ!?』

『どうした、ユリィ!?』



 威龍を討伐したその際。


 ユリィだけが、龍が死ぬ直前にその呪いを受けた。



『あれ? 何ともありません』

『……何だったんだ?』

『イタチの最後っ屁だろ』



 不幸にも、ユリィはその呪いを受けた直後、自らの異変に気付けなかった。


 彼女が自らの身に起きた悲劇を知るのは、何年か経ってからである。










 やがてユリィは、勇者としての役割を無事全うした。


 彼女は長い戦いの果て、仲間と共に当時の魔王軍を撃退して魔王討伐に成功した。


『……』

『ど、どうですか?』


 大戦果を上げた勇者一行は国を上げて歓待され、それぞれ貴族として優雅に暮らしていた。


 しかし、ユリィは何故か成長が止まり、どれだけ食べても太らず、何日食べずともへっちゃらであった。


 最初はそう言う体質かと考えていたユリィも、うっかり指を切った時に自然に再生したのを見て流石に異常だと気付いた。


 そしてユリィは、当時の仲間だった回復術師に相談した。


『……ユリィ。お前、龍になってるぞ』

『……え?』


 回復術師に告げられた異常の名は、邪龍の呪い。


 それは、自らを殺した相手に取り憑き体を奪い取る能力であった。


『ぐ、すまん。オレでは、この呪いは解除できそうにない』

『……』

『だが、このまま放っておけば……。ユリィ、お前は身体を龍に乗っ取られる』










 その話を聞いた彼女は、各地を奔走して呪いを解く手段を探し求めた。


 しかし、解呪する方法は何処にも見つからなかった。


『ユリィ、まだ大丈夫なのか?』

『ええ。もうほとんど、呪いは進行していません』


 しかし解呪できずとも、ユリィは龍の呪いの進行をほぼ完ぺきに抑えていた。


 呪いを抑える様な解呪魔法こそ、彼女の本領だ。


 ユリィは独力のみで、龍の呪いを克服しつつあった。



『……龍の寿命と再生力を持ちながら、心は人間のまま』



 結局、当時の技術をもってしても邪龍の呪いを解く手段はなかった。


 その結果、ユリィは不老不死の『魔族の身体を持つ人間』として生き続ける羽目となった。




『……なぁユリィ。こう言う事をお前に頼むのは酷なんだが』

『はい』

『この国を、オレ達の血族を、人類を。どうか、守ってくれ』




 数十年後。


 魔王を撃退し、世界を守った勇者は皆息を引き取った。


 それぞれが大往生で、幸せな人生を歩んでいた。



『はい。どうか、お任せください……』




 しかし、ユリィは。


 呪われた修道女だけは、死ぬことを許されず一人取り残された。


『みんなが取り戻した平和は、私が守り抜いて見せます』


 共に魔族と戦った仲間の遺言を律儀に守り、ユリィは国のために働き続ける事を決めた。










 勇者の生き残り。


 生きた伝説。


 魔族決戦から100年後。ユリィは、当時の国家の最高権力者の一人であった。


『恵まれぬ子の為に、修道院を。信仰を広めるために、聖堂を』


 仲間の死後もユリィは、セファ教団のトップ、教皇として国政に携わり続けた。


 彼女の政策は、常に弱い民を守るための方策ばかりであった。


 魔族との戦争の無くなった世界で、軍事費は不要。一人でも餓死する民を減らすべきだと、ユリィは民の慰廡を主張し続けた。



 事実、周辺に戦争を起こしそうな国は居なかった。何せ現役の勇者ユリィを擁する当時の帝国ペディアこそ、最強の国とみなされていたからだ。


 ただしぺディアで、帝国貴族の内輪もめは絶えなかった。この国で軍備が必要とすれば、それは国外ではなく国内の敵に対してのもの。


 ぺディアは強大な国家であるがゆえに、権力闘争も激しかった。ユリィは、それが不満で悩みの種であった。




 ある日、ユリィはある権力者の貴族の邸宅に呼ばれた。


 それは、当時の枢機卿────つまりユリィの腹心に当たる貴族であった。


『ユリィ様、内密にご報告と提案があるのです』


 枢機卿のその真剣な顔に、何か大事でもあったのかとユリィは身構えた。


 しかし、彼が続けた言葉はユリィにとって耳を疑う内容であった。




『ユリィ様。どうか貴女に、教皇の位を退いていただきたい』




 ユリィの政策は、確かに民衆の助けになった。彼女の、民からの支持はすさまじいモノが有った。


 しかし、実際に国政を回すのは貴族だ。いくら民衆に慕われても、権力には結びつかない。


『貴女の政策は、教団にとって癌なのです』


 民に利益を還元するのは、単なる無駄遣いだ。


 いかに自分達の権勢を高め、軍事力を強めるかが貴族にとって何より重要。


 枢機卿の意見をまとめると、そう言うことであった。


『何をバカな! 民に尽くしてこその、施政でしょう!!』

『民が国に尽くすのですよ。ユリィ様の功績は素晴らしいですが、流石に無駄金が多すぎる』


 その枢機卿には野望があった。


 いずれ、国家の王位を簒奪して覇者とならんとする欲があった。


『ユリィ様。貴女が居ては、私は王になれないのです』




 この日、セファ教団のクーデターによりユリィは捕らえられた。


 彼女は元より攻撃魔法、体術の類は使えない。後方支援を専門とする、仲間と共に戦ってこその勇者なのだ。



『離してください!! 貴方達、何をしているか分かっているのですか!!』

『ええ、承知しておりますよユリィ様』



 そしてユリィは、教団によって魔術を封印され、地下牢に幽閉された。


 これが、長い長いユリィの絶望の始まりであった。






 ユリィは対外的に、龍の呪いを克服し天に帰ったという事になった。


 セファ教団の枢機卿がそう発表したので、誰もそれを疑わなかった。


 民衆は悲しみつつも、偉大な勇者だったユリィの死を悼んだ。



『……やめて、ください』



 しかし、現実は奴隷であった。


 ユリィ本人はその能力の殆どを封じられ、教会の地下牢で虐げられ続けた。



『もう解放してください……』



 ユリィは、何をしても死なない。


 食事を与えずとも生き続け、激しく傷つけても勝手に再生し、何時まで経っても老いることなく美しくあり続ける『聖女』。


 そんな便利な彼女は、長きに渡り屈辱的な扱いを受け続ける羽目になった。



『まさか、あのユリィ様がこんな所におられたとは。本当に何をしても構わないので?』

『ええ。ご自由に、お楽しみください』


 彼女の肉体は、主に教団から貴族への接待に使われた。


 面白半分に、普通の娼婦ではとても耐えきれないような要求を実行され続けた。


 しかしユリィは、自らの呪いのせいで決して死ぬことはなかった。


『素晴らしい、実に良いモノだこれは』


 やがて枢機卿だった男は成り上がり、王座こそ得られなかったがこの国最高位の貴族爵位を得て。


『代々子孫に受け継がせよう。この、最高の接待道具を』


 メンテナンスの要らない壊れぬペット(ユリィ)を、いつまでも地下に幽閉し続けた。












 微笑みの聖女と呼ばれ、民衆に慕われた過去。


 呪いにより修復され、休む暇なく体を弄ばれ続ける日々。


 ユリィの心が壊れるまで、そう長い時間はかからなかった。



『……これは、一体。何故、私は捕らえられている』



 ユリィが囚われてから、数十年後。


 彼女の頭に、聞きなれぬ声が響いてきた。


『おい、貴様。お前は何故捕まっている?』

『……』


 最初ユリィは、自分の気が狂ったのだと思った。


 とうとう幻聴が聞こえ始めたかと、自嘲した。


 しかし、


『やっと、貴様の身体を奪ってやろうと復活したというに……』

『……ああ、貴方でしたか』


 その響いてくる声の正体を、ユリィはやがて察した。


 魔力が使えなくなったせいで、龍の呪いへの対抗魔法なんぞ数十年もメンテナンスしていない。


 この声は、邪龍の声だ。どうやら、威龍の封印が自壊してしまったらしい。


『奪いたいならどうぞ奪ってください。私の代わりに、苦しみを味わってください』

『あん?』


 どうでもいい、些末な事だとユリィは思った。


 自らの肉体を乗っ取りたいなら、どうぞ乗っ取ればいい。


『私も貴方も、囚われの奴隷なんですから』


 やがて龍も、自らが抜け出せぬ永遠の牢獄に囚われていることを知った。















 人間とは、ここまで残虐になれるのか。


 人間とは、ここまで非道に落ちられるのか。


『ゴブリンの生き残りを見つけてきたぞ。アレと交配させてみよう』

『聖女は子供を産むのだろうか』


 好奇心混じりに、ユリィは魔族と子を作らされた。


 抵抗も出来ぬまま、彼女はゴブリンを出産した。


『産んだ産んだ』

『どれほどの体格差まで、子供が産めるのだろう』

『試してみよう』


 その時々の貴族の当主によって、ユリィの扱いは大きく変わった。


 ひたすらに凌辱するもの。面白半分に実験を繰り返す者。


 恐ろしい怪物として虐待する者、積極的に関わってこない者。


『……おお、ユリィの腹が割けたわ。でかすぎると入らぬのだな』


 だがどんな当主であろうと、ユリィに取っては地獄だった。


 何せ彼女の世話役として任命された使用人は、皆彼女で『楽しみ続けた』のだから。







 何十年の時が経っただろう。


 何百年が、過ぎ去っただろう。


 ユリィが民衆に慕われ、勇者として生きていた時代はいつだっただろう。



『どうして誰も、助けに来てくれないのですか』



 心が壊れてなお、ユリィはずっと助けを待ち続けた。


 いつか心ある人が彼女の窮地に気付いて、助けに来てくれると信じていた。



 ────二百年ほど経って、ユリィがとある人物の相手をさせられるまでは。



『王よ、こちらでございます』

『ほほう!!本当に、彼女があの伝説の勇者か』


 王と呼ばれた男が、ある日ユリィの部屋に入って来た。


 なるほど、その男は豪勢な衣装に身を包んだ『いかにも王様』な男だった。


『……封印は絶対なのだろうな』

『無論でございます』

『では、私も少し楽しませてもらおうか。父から話を聞いて、いつか手籠めにしてみたいと思っていたのだ』



 ……国王。


 その下卑た顔をしている男は、そう名乗った。


『にしても無様な女よ。余計な事をせず、静かに暮らしていれば良かったものの』

『ははは』


 何故国の王が、ここにいるのか。


 何故、王様は自分を助けてくれないのか。


 ユリィは久しぶりに口を開き、その男に助けを乞うてみた。


『ははは、何を戯けたことを』

『たす、けて……』

『貴女は国にとって重たすぎるのだ。だから代々、我が王家は貴女の存在を黙認してきた』

『え、あ……』

『魔王のいない世界で、勇者は無用の長物。……さぁ股を開け、元勇者の性奴隷よ』


 ユリィの存在は、国家公認だった。


 国王のその言葉で、彼女は何時まで経っても助けが来ることが無いと知った。















 囚われのユリィは、ある日久しぶりに良い知らせを聞いた。


 実は、不老不死と思われていた彼女とて、永遠に死なない訳ではなかったのだ。


 1万年とも言われる龍の寿命を全うすれば、呪いは消えて天に帰ることが出来る。


『それは、本当なのですか』

『無論だ、元勇者の女よ』


 それは、檻の中で威龍から聞かされたことだった。


 何時までも終わらぬ苦痛に果てがあると知って、ユリィは嬉し涙を流した。


 それが1万年という途方もない年月であったとしても、『ゴールがあること』は彼女を勇気づけた。


『……私が貴女に取り憑いたばかりに、すまぬ』

『……いえ。悪いのは貴方なんかより人類の方です』


 脳に響くその声は、よくよくユリィを慰めた。


『貴女以外に取り憑くことが出来れば……』

『それは、無理なのでしょう?』

『ああ、私が誰かに乗り移れるのは死んだ時だけだ』


 百年以上を共に過ごし、威龍とユリィは友人となっていた。


 虐げられ、弄ばれ続けたユリィにとって威龍との会話は唯一の癒しであった。


『……ユリィ、貴女の凄まじい魔力を得たことで私は実質的に不死となった』

『そうですか』

『そのせいで、もう私は死ねん。……すまないねぇ』


 そして威龍もまた、深くユリィに同情した。


 かつて自分を滅ぼした勇者の一行であるユリィと、無二の親友であるかのような関係になっていた。









『……ねぇ、威龍。貴方だけでも、外に出てみませんか』


 ユリィはある日、龍にそう提案した。


『いったいどうやって。そんなことが出来るのかい』

『ええ。放出された男性の精には、かすかに魔力が宿ってるんです。それを、バレないようにちょっとずつ溜め続けてきましたから』


 それは、百年かけてコツコツと魔力をへそくりしてきたユリィの、最後の手段であった。


『威龍さん。貴方は、私の使い魔になってもらいます。そうすれば、貴女は私と魔術的に繋がったまま他の誰かに取り憑けるようになる』

『……分かった、受けよう。これより貴女は私の主だ、ユリィ』

『ありがとう。ふふふ、私は攻撃魔法は苦手ですけど……』



 呪いの移譲。魔力操作。


 そういった魔法のエキスパートであるユリィだからこそ、出来たその神業。


『呪術は、ある意味で私もエキスパートなんです』




 その夜。


 いつものようにユリィを弄びに来た男の一人に、ユリィは威龍を取り憑かせた。



『ん? なんだ、変な違和感が』

『やりすぎて病気貰ったんじゃねぇの』


 その男は、半年もしないうちに威龍に精神を乗っ取られる事になった。


 男の肉体を乗っ取った威龍は、そのままユリィの為に各地を奔走する事になる。


『さようなら、私の半身』


 こうして、長い時を一緒に在った『威龍』はユリィと別れた。


 威龍はいつかユリィを救い出すことを誓って。


 ユリィは、そんな威龍にとある命令を授けて。









『人類に、災厄を。思いつく限りの非道を以て、人を殺して回ってください』







 その命令は、とっくに正気を失っていた聖女の呪詛であった。


 この頃のユリィは、既に人類に対する憎悪以外何も感じられなくなっていた。


『復讐を。勇者を使い捨てにして、暴虐の限りを尽くす人類に天罰を』


 威龍はその言葉を忠実に守り、いつかユリィを奪還できるだけの戦力をかき集めながら、史上最悪の盗賊団『悪党族』を組織して人類に牙を剥くことになる。




『人類を滅ぼしてしまえ────』





 こうして。


 いつしかユリィは魔王になった。





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― 新着の感想 ―
加害側の人類は滅ぼして良いと思いますわー
人間の子供も沢山産んでそうだけど、どうなんだろう?
[一言] TSサブヒロインをまだ読んでないので、他の人の感想について行けない。 しかし・・・酷すぎる話だ。
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