敵陣殴り込み4
門番を務める巨漢のペアは悪名高い狂戦士の兄弟であった。
筋肉の鎧で覆われた己の肉体を誇示するためなのか、まともな防具らしき物は身に付けていない。野蛮そのものを具現化したような戦士が、ダケヤマ達の行く手を阻むのだ。……頭から被った羆の毛皮と巨大な斧状の両刃武器を除いては、正に阿吽の呼吸で有名な金剛力士像を思わせるような出で立ちである。
「ソロムコよォ……いきなり出てきた見た事もねぇ奴らが、見た事もねぇ乗り物で突進してきたぞ」
「兄者よ、どんな奴でもこの門は通しちゃいけねぇと、ヘカテ様から仰せつかってるぜ」
「ヘカテ様かァ……あの綺麗な人形みてェな体を、いつか壊れるくらいに弄んでやりてェな……」
「ばっか野郎! そんな話がちょっとでもヘカテ様の耳に届けば、半殺しにされっど!」
「でもよォ……お前だって、あの柔らかそうな乳と尻を見れば、むしゃぶりつきたくなるだろうに」
「見た目に騙されちゃ駄目だ。怒らせたら魔法で八つ裂きにされるどころか、一番苦痛が続く方法で殺されるそうだぜぇ」
「俺が聞いたのは数千匹のゴキブリとサソリと大量のウジ虫で満たされた棺に全裸で突っ込まれて、そのまま生き埋めにされるって……」
「まあ、俺ならその虫を腹一杯食って、十分に体力を付けてから脱出できるけどな」
「さすが我が弟のソロムコである!」
エンジンの唸り声を響かせるフォークリフトの突撃にも、狂戦士の兄弟は余裕綽々な態度のままだった。その嘲笑うような表情に、仏心をなくしたダケヤマは奮起した。
「ええ根性しとるやんけ! 俺のリフトで蹴散らしたる~!」
右側の手前にあるレバーを操作してフォークの高さを目線にまで上げると、ダケヤマは闘牛士に突っ込む猛牛のように真っ向勝負に出た。
「兄者! オレンジ色の化物に乗った侵入者を止めろ!」
「よっっっしゃああああああ! かかってこい!」
「オラオラ~! どかんかったら、串刺しにしたるゥゥゥ〜!」
猛スピードで狂戦士に突っ込む瞬間だった。武器の斧を捨てた二人は、鋼鉄製の二本のフォークを素手で、それぞれ万力のように上下から挟んだ。
『兄弟協力技、ダブル真剣白刃取りィィィ!』
「すげぇぇぇ! でも何で、そんな和風の技を知ってるんや?」
狂戦士が二人がかりで突進を受け止めた結果、フォークリフトにガクンと急ブレーキが掛かった。そして足裏が深々と地面をえぐり、四本の溝を掘り刻んだ。
「やったぜ、ソロムコ! 完全に動きを止めたぞ!」
「さすがは兄者。俺達の力を合わせれば、何でもできる!」
その時だった。アスカロンが放つ最高レベルの斬撃が、並んだ狂戦士の体を電光石火で真っ二つにした。
「――両手が塞がっていては、防御がガラ空きだぞ」
仁王を思わせる兄弟の肉体は、一瞬のうちに無数のポリゴン片と化し、無数の煌めきとなって四散したのだ。
「すげえ……どう見ても手強そうな敵を、こうもアッサリと……」
「よく見ろ、ダケヤマ殿! ゴブリン軍団に周りを囲まれたぞ!」
その時アビシャグは俯く顔を上げ、大きな眼を更に見開くと、天空に向かって魔法の杖を掲げた。
嵌め込まれた魔石に光が宿る……。正に呪文の詠唱が、ようやく完成した合図である。それは同時に衝撃魔法の発動を意味し、フォークリフトを中心とする半径数百メートルに渡る敵が、微塵に粉砕される瞬間でもあったのだ。
ゴブリンと人狼が緑色の血煙となって渦巻くと、星屑のような最後の光芒となって消えてゆく。




