新パーティー結成3
ここは広大な城の最下層。明け方近くの救護室であるが、看護に明け暮れる人々にとっては、交代で仕事を続ける正に戦場とも言える場所だ。
出入り口近くに設置されている粗末な長椅子には、一人の騎士が数名の部下と共に仮眠していた。
「――誰だ!?」
長身の野性味溢れる騎士、トムヤム君は一時も警戒を怠らない。そうやってディアブルーンの戦場を駆け抜けてきたのだ。眠い目を擦りながら視界が戻るまでの間に、腰の短剣を引き抜いた。
「さすがやな、円卓の騎士さん。俺ですよ……」
「何だ、脅かすなよ。ダケヤマ殿か」
短剣をしまいながらトムヤム君は周囲を見回した。
「早朝からスンマセンでした。私財を投げ打ってまで救護活動に精を出している、っちゅう噂はホンマやったんですね」
「まあ、王国に仕える騎士として、当然の行為だな」
「そのワイルドな御顔に似合わず、品行方正なこって」
「何だと! わざわざ茶化しに、ここまで来たというのか!」
「まあまあ、やっぱ俺が見込んだ男やわ。実はアンタにお願いがあってな……」
イラつくトムヤム君を前に、ダケヤマは相手の性根を試すような言葉を並べる。
「知ってるで。カヤタニに、ずいぶんお熱やそうやな。自分は隠してるつもりでも、結構バレバレやで」
「ぐぬぬ……」
「負傷者の面倒を積極的に請け負っているのは、ちょっとでも相方に近付くためなんちゃうか?」
「何だと! いい加減にしろ! 貴様!」
「おおっと! そんな大声出したら皆起きてしまうで」
ダケヤマは救護室の片隅で寝ているであろう、カヤタニの様子を伺おうとした。
「ダケヤマ殿! 貴公の連れは、いつ終わるとも知れぬ四六時中の看護に疲れ果てて、今しがた眠ったばかりであるぞ! 何の用事かは知らぬが、少しは気を遣ったらどうなのだ?」
「そうか……そうなんや。で、本題に入ろか……」
「全く何なのだ。私を怒らせに来たのか?」
「ハハハ、ちゃうちゃう。 実はな……俺は暫くこの城を空ける予定なんやわ」
「ええっ? どこへ行くつもりなのだ?!」
「まあ、ええから。そこでだ……もし、もしかしてやで……俺が消えたまま、もう城に戻らんような事があったらな……」
「戻らない事があれば……?」
「俺の相方を……カヤタニの生活を、アンタが見てやってくれへんか」
「……!! どういう事だ? 一体何をするつもりだ?」
「詳しくは言えんが、この通りや! 頼む! ……いや、お願いします」
土下座する勢いで、騎士の前で両手両足を揃えて頭を垂れた。
普段は中々見せる事のない、ダケヤマの真面目くさった表情と態度。そして彼からの急な申し出に、トムヤム君は大いに動揺した。
正にその時である。二人の視界外から人影が、ユラユラと音も立てずに近寄ってきた。




