闇からの使者2
城の地下牢まではカゲマルが先導してくれた。立派な装飾品が並ぶ通路で、ゼノビア姫の侍女とすれ違う。
「あら、あなたは、ダケヤマさんじゃなくて?」
「どうも〜、お城が珍しいので散策してます〜」
階下に降りるに従い、すれ違う人が増えてきた。最下層の救護スペースでは……。
「あーっ! お兄ちゃん! 私だよ、ダフニーだよ!」
「おぉ〜! ダフニーちゃんか。よかった、何とか無事やったんやな」
すっかり芸人ダケヤマのファンになった幼い少女が飛び付いてきたので、髪留め付きの頭を撫でてやる。
「でもサインは、また今度な!」
さすがに夕暮れの城外は人が多く、有名人になったダケヤマはあちこちから声を掛けられた。今は避難民も受けれているので尚更だ。だが大勢の中に紛れるには具合がいい。
問題はここからだ。地下牢へと続く道は、城内の者でさえ近寄らないような場所であったが、カゲマルは誰にも姿を見られないように用意周到にルートを決めていたようだ。
「おい、所々で倒れている衛兵は死んでないんやろな?」
「当たり前だ。眠り薬入りの酒を振る舞っただけだ」
「こりゃ、騒ぎになる前に急がんとヤバいで」
外壁に面した櫓の一角に地下牢へと続く階段がある。すでに見張り小屋は、ハーフエルフの騎士と黒セーラー服の魔法使いが制圧を完了していた。
「のべ太君と……あっちゃん?! あんたらも誘われたん?」
のべ太は澄ました顔で、優男らしく答えた。
「当たり前だろう、僕はアスカロンとずっと組んでいるんだぜ」
「わ、私はアスカロンもそうだけど、お師匠様の救出に協力して欲しいと頼まれたから……」
少し顔を赤らめたアビシャグは、ダケヤマと視線を合わせないようにそっぽを向いた。ダケヤマは照れ隠しに頭をボリボリと掻いてカゲマルに言う。
「監視はユルユルやないかい。まるで逃げ出してもいいみたいやん」
「まあ、ほぼ自主的というか、周りに示しを付けるために牢屋に入ってる感じだから」
地下までの階段を降りると鉄格子の嵌まった広い部屋が現れた。レンガ数個分の小さな窓は、城壁に繋がり、本棚を始め、机や椅子が一通り揃った牢屋は、ちょっとした執務室のようでもあった。
燭台の仄かな明かりを頼りに、浮かない顔のアスカロンが姿を見せる。
「……ここは体が鈍って困る。読書漬けにも飽きてきたところだ……」
「アスカロン! あんた、何してんねん!?」
ダケヤマの声に安心したのか、アスカロンは眉毛を下げて、おどけたような素振りで皆を迎えたのだ。




