ゾンビ軍団一過2
ダケヤマの動揺に、さすがのダイナゴンも慎重に言葉を選ぶように話し掛けてきた。
「……ダケヤマさん、落ち着いて聞いて下さい。カヤタニさんですが……」
「カヤタニに何が起こったんや? ええから早う教えてくれ!」
勿体ぶった言い方は、ダケヤマには逆効果だった。そう理解したアビシャグは、現状を包み隠さず伝える事に決めたのだ。
「ここからは、この分野においての専門家でもある私からお話ししますので……!」
真剣な眼差しで向き合う魔法使いに、唇を噛み締めたダケヤマは冷静になるよう、自らを促しているようにも見えた。
「いいですか? カヤタニさんは……ネクロマンサー・ヘカテの呪いにより、言葉を失ってしまったのです」
「何やて!? そりゃあ一体、どういうこっちゃねん?」
まるで家族の不幸のごとく心配するダケヤマの反応に、思わずアビシャグは心を痛めた。だが、ありのままに説明する意思を固めたばかりだ。
「つまり……カヤタニさんは一切、喋る事ができなくなってしまったのです。ヘカテが掛けた失語魔法は強力で、読み書きはおろか、自分の意思を言葉で伝える事は不可能になったと言えるでしょう」
「うっわ~、マジか〜! ……て、いうことは……オイ! ひょっとしてカヤタニは……二度と……話す事も……?」
「もうダケヤマさんと会話する事は、できなくなったでしょうね」
「そんなアホな……! 喋らず無言のままで、お笑い芸人なんかできる訳ないやん!? いやパントマイムとかあるけど、『スカンピン』の真骨頂は、男女の掛け合いの面白さにあるというのに……喋くりもなしで、ネタが伝わるはずもないし!」
「ダケヤマさん……」
「何ちゅうこっちゃ!! ……お笑いコンビ『スカンピン』はもう死んでしもうたんか! 俺はカヤタニ以外を相方にする気なんか全くないで! ピン芸人になる気も最初っからないし……!」
「……ダケヤマさん、お気持ちは、痛いほど分かりますが……!」
「これが落ち着いていられるかいな! コンビ解散の危機やねんで!? ああ~、もうどうしたらええんやあああ~!!」
取り乱すダケヤマに、慰めの言葉など見付からなかった。辛うじてアビシャグが伝えられた事は……言葉を失っただけで、他は全く障害が残ってない事。外傷もなく健康体そのものであるという事だけだった。
「そ、そうや! あっちゃん!」
「は、はいいっ!?」
「魔法で呪いを掛けられたんやったら、あっちゃんの力で解除できひんのか?!」
「それができたら苦労しませんよ。お亡くなりになられた宮廷魔道師の舞鶴ジャクソン様でも無理だったかもしれません。失語魔法を無効化するには、呪いを掛けた術者であるヘカテ本人に頼むしか……それは限りなく無理な話でしょうね……あるいは……」
「あるいは……何やねん!? 他に呪いを解く手立てはないんかいな……?!」
「あるとすれば、ネクロマンサー・ヘカテが死亡した時だけですね……」




