シュナミティズム
夜明け前であるが、ダケヤマは琵琶湖のように深い眠りから今、目覚めようとしている。
何だか妙に心地よく、いつまでも目を閉じたまま夢と現の狭間を漂っていたかった。
徐々に意識が覚醒してゆくにつれ、ディアブルーンと呼ばれる異世界での活躍が思い起こされてくる。
ゾンビだらけの悪夢のような現実、というか現実のような悪夢。
ゲームの中の世界というのは夢なのか、はたまた現実なのか、境界が非常に曖昧である。
ただ一つ、身をもって納得したのは現実世界以上に、生き残る事がハードな世界であるという事だ……。
『う~ん、もう朝なんや……。何か悪い夢を見ていた気がするって……目ぇ開けたら平和な日本の日常に戻ってたら、どんなに楽な事か……』
デカいベッドの中で寝返りをうつと、違和感に衝撃が走った。何と自分以外にもう一人、ベッドの中で寝ている奴がいる。左腕が温かな体に、やんわり触れた。その柔らかさから、一緒にいるのは女性である事が瞬時に分かった。
『うげっ! 誰やねん、隣で寝とるんは……?』
まだ暗い寝室なので何も見えない。目を閉じたまま左手でまさぐると……何という事でしょう! 触った所が偶然にも胸の膨らみで、それらは可愛らしい寝息と共に上下していたのです! しかも一糸纏わず、素っ裸なのはなぜ? 手の平に収まるサイズの恥ずかしげな丘は、高級食パンのような弾力で、あらゆる下着から解放されている事実を、生意気にもアピールしてくるのであった。
『この胸の大きさからして……カヤタニやないで。……じゃあ、一体誰や? ひょっとして、ダイナさん? ダイナゴンさんなのか? いやいや……彼女も確か、もっと大きかった……はず』
ダケヤマは一気に目が覚めて、心臓の高鳴りが止まらなくなってきた。
「ん~…………いやあああ!」
ダケヤマの心臓が口から飛び出しそうになったのは言うまでもない。添い寝中の彼女はシーツを巻き取りながら、半回転し、真っ白な背中を見せてしまった。
「えええ~……あの~……すんません、どちら様でしょうか?」
夜明けと共に、寝室にも陽の光が差してきた。それで分かったことは、隣の彼女はずいぶんと小さいという事だった。小柄な女性というよりは、体のラインが大人びていないというか、まだ幼いというか……。
「や――! 黙って勝手に触れたでしょ!? 信じらんない! エッチ! スケベ! 変態! 油断も隙もあったもんじゃない! ないわ~! これは、ちょっとあり得ない!」
ぎゃん泣きする顔を確認しようとすると、頭から枕に埋もれてしまった。だが、この声には聞き覚えがある。そう、あの人で間違いない。
――て言うか、自分もパンツさえ穿いておらず全裸で寝ていた事に、今になってようやく気が付いた。




