ネクロマンサーの顕現5
あれほど饒舌だったカヤタニも、草刈り機を抱えたまま沈黙してしまった。もはや追い詰められた、末期的症状である。
「……え~、理解が追い付かんわ……。何? ゲーム? やっぱ悪い夢でも見てんのかな~」
茫然自失となったカヤタニの事が心配になったのか、アビシャグが必死にフォローする。
「しっかりして下さい! ディアブルーンがゲーム世界だって事、まだ伝えていませんでしたっけ? いや、すぐ帰ってもらう予定でしたから、あえて伝えてなかったとも言いますが」
「……あっちゃん?」
「……はいいっ?!」
「あんたもゲームなん?」
「いや、私自身はゲームじゃないですけど、プレイヤーでもAIでもありません」
「じゃあ、何なん?」
「それは…………」
一方ダケヤマの方は、すぐに吹っ切れた。さすが本物のアホは迷いもなく、羨ましくなるほどに物事を深く考えないようだ。いや、むしろ現実逃避の投げやりな暴走状態と言っていい。
「うひょおおお! アスカロン、やったぜ! ゲームの中に入れるなんて、正に子供の頃からの夢が実現した瞬間……なんやろか?」
「でも舐めて掛かると、本当に死んでゾンビになるぞ」
「いや……こんな訳の分からんとこで死んでたまるか! 俺達スカンピンは、まだ夢の半ばなんや。早く元の世界に戻って、プロのお笑い芸人としてデビューせなあかんねん。暗い世の中をお笑いで明るくしたいっちゅう夢があるんやわ。その前に……!」
「その前に?」
リフトの屋根から舞い降りた三人……アスカロンとカゲマルとのべ太は耳を傾けた。
「こっちの世界も明るくしたい……けど、どうもお笑いの力では無理そうやな」
「そうだな。街の人はともかく、ヘカテが笑うのは人間が死に絶えた瞬間だろうな、まずはどうする?」
「とりあえず目の前のゾンビ軍団をしばき倒して、この世界の人らを救いたい。俺はラノベの主人公やないし、不死身でもないけど、あんたらの手助けくらいはできるで」
「よく言った。共にネクロマンサー・ヘカテを倒し、ディアブルーンの世界を救おうぞ!」
「あんたら、現実世界では普通の人なんやろ? 何でいつも芝居がかったクサい台詞なん? いくら何でもゲームに影響されすぎやで」
「それを言われちゃあ、全く照れちまうな」
ダケヤマはしばらく談笑した後、アスカロンのみを屋根に乗せ、フォークリフトでの突撃を再開した。目指すは敵将、ネクロマンサー・ヘカテのみだ。残されたカヤタニは、ようやく我に返った。
「あ、相方をほったらかして、一人で行く気か?! 止めとかんかい!」




