モテ期到来
野次馬どもが蜘蛛の子を散らすように広場から去る頃、穴金の先導でスカンピンのコンビとダイナゴンは城への帰路を急いだ。
今度は一体何が起こるのか……。ダケヤマは、そわそわして落ち着かない様子だ。意を決して無口な騎士に声を掛けた。
「あ、あの~、タマキンさん……」
「……俺の名はアナキンだ」
「俺達はこれからどうなるんですか?」
「……どうなるも、姫君からの挨拶があるだけだ。もっとも公式な物でなく、大がかりな式典の予定もないから安心しろ」
ぶっきらぼうな穴金の言葉を補うように、後ろを歩くダイナゴンが続けた。
「あくまで姫様は、お忍びで2人に会いたいそうですよ。心配しないで下さい、何があっても騎士である私が守って差し上げますから!」
ダケヤマとカヤタニの間を割るようにダイナゴンが、ずいっと入ってきた。
「こ、こら。相方は私やって、ず〜っと言うとるやないかい」
「恋愛方面のパートナーは、この私です」
「厚かましすぎるわ。ダケヤマから離れろ!」
「もう、貴女は邪魔しないで下さい!」
「邪魔してるのは、どっちやねん!」
ダケヤマを巡って再び女の戦いが再燃した。あまりの剣幕に、当の本人はなだめる事もできず、青ざめて困惑するだけだ。
「ダケヤマさん、髪を引っ張られそうです!」
「うわわ……」
ダイナゴンは彼を盾に反対側へ回ると、左腕に抱き付いて、ぐいぐい胸を押し付けてきた。
「だから、そんなに相方に引っ付くなって!」
「もう、貴女はそっち側でいいでしょう!」
普段のカヤタニなら有り得ない事であるが、ダケヤマの右腕に巻き付くように絡んできた。
「なあ~、お前まで何やねん……」
男なら誰でも嬉しいはずの両手に花の状態であるが、決してそうでもなかった。左右から引っ張られ、せめぎ合い、プレッシャーに押し潰されそうになる。
吊り橋を渡ると城の衛兵達は目を丸くし、すれ違う城内の人々は、まるで見世物のように面白がっていた。さすがのダケヤマも、この状況には赤面するしかなかったのだ。
先を行く穴金も関わり合いたくないのか、他人の振りをしてズンズン進んでいく。
「アナキンさん! 何とかして下さい! 助けて下さいよ」
溜め息を漏らした赤騎士は、あくまで同じ態度だった。
「……自分で何とかしろよ」
やがて多くの煌びやかな近衛兵や、紫の服を纏った侍従に囲まれた一団に遭遇する。これは、わざわざ城の外にまで出迎えにきた王女様……、ゼノビア姫と家臣達に違いなかった。
ようやく騎士らしく、キリッとしたダイナゴンから、ダケヤマは解放されたのだ。




