女流騎士大納言4
カヤタニとダイナゴンは、互いにガンを飛ばし合って火花を散らし、今にも取っ組み合いのキャットファイトを始めそうな勢いだ。
騎士が本気を出せば、カヤタニは瞬殺されるだろう。だが、女芸人は譲るどころか一歩も引かない。
手に汗握る膠着状態を破って先に口を開いたのは、ダイナゴンの方だった。
「ダ、ダケヤマさん、私は女子力も強いのですよ! 料理とか自分で作る事もあります」
ダイナゴンは市場の人々に、野菜とまな板を貸してくれるように頼んだ。するとファンの男達からタマネギが4個投げて寄こされた。
「さあ、見ていて下さい!」
何をするかと思えば、両手でタマネギを天高くボールのように放り投げたのだ。同時に野次馬どもは直感的に危険を感じ取ったのだろうか、後ずさりを始める。
「ヴァーチカル&ホリゾンタル――スラッシュ!」
ダイナゴンは腰に吊った剣を瞬間的に抜刀すると、若干の魔法力を上乗せしながら猛烈な勢いで野菜に向かってアタックをかける。
スカートがふわりと、花びらのように風をはらんだ。
「おお~っ! すげぇ~」
周囲のどよめきが収まる前に、微塵切りとなったタマネギの塊が空から降ってきた。それを見逃さず、ダイナゴンは的確に動くと、片手で残らず俎上にキャッチしたのだ。
「ダケヤマさん! これからハンバーグを作っちゃいますよ! 次は肉を……」
元気な台詞を言い終わるかどうかの所で、ダイナゴンは大粒の涙を流し始めた。まな板の上で微塵切りとなったタマネギの山が、猛烈に両目を刺激してきたのである。
「いや~ん、目に染みる~!」
古典的な料理あるあるに、思わずカヤタニは絶句してしまった。それは皆も同じだったようである。
張り詰めた空気が若干緩んだ所に、更なる緊張の源となるような人物が割り込んできた。
その男は異質なオーラを醸しだし、決して群衆の中に埋もれる事のない存在感を、これでもかと放っていたのである。
「いつまで遊んでいる気だ? ダイナゴン……」
集まっていた人々が振り向いた瞬間、驚きとも恐怖とも付かない変な声が上がり、人混みが割れた。
それもそのはず、赤い胸当ての颯爽とした騎士、穴金虎馬が呆れた表情で状況を伺っていたからだ。本日2人目となる円卓の騎士の登場で、広場に集まっていた人々は大いに沸いた。
「な、何の用件ですか穴金さん? 今、私は決闘中で忙しいのですが!」
「け、決闘だったのか!?」
唖然としたカヤタニは、事の重大さに改めて周囲を見渡した。もはや騒ぎは、収まりが付かないほどに発展していたのだ。騒然とした中でも穴金の声は、鋭い矢のように突き進む。
「ダイナゴン、城内にてゼノビア王女様がお待ちかねだ……。すぐさま騒ぎを収め、客人達を城までお連れしろ!」




