お笑いの行方
お笑い芸人のスカンピン側が若干有利になったとはいえ、情勢は膠着状態に陥ったのは否めない。意味不明のマウントの取り合いに終始して、肝心の事を忘れているような気がする。
この袋小路な成り行きに、いち早く気付いたのは、やはりカヤタニだった。
下着姿の自分を冷静に見てみる。
パンツとブラを丸出しにして、テーブル上で一体何をやっているのだろう……。
「おい、ダケヤマ。裸になったのはいいが、これからどないすんねん? 助平親父を喜ばせただけで、誰も笑ってないような……」
「う~む、おかしいなぁ。すごいウケて、皆で大笑いのはずなんやけど」
「おかしいのは、アンタの頭の中身やないかい!」
その時、カヤタニはテーブル上に一匹の黒い虫が這い回っているのに気付いた。
「ぎゃっ! こんな時に! 異世界にもゴキブリが存在するのか、……はっ!」
この永遠とも思える、のっぴきならぬ状況を打破するアイデアが、まるで稲妻のようにカヤタニの脳内に浮かんだ。正に神が与えたもうた、千載一遇のチャンスなのかもしれない。
彼女も婦女子らしくゴキブリの類いが大嫌いだったが、極限状態に置かれた人間には四の五の言ってられない。超常的な潜在能力を発揮して、黒光りする虫を素手でサッと捕らえたのだ。
「……ダケヤマあああ~」
「何やねん!? 今忙しいんやけど」
「私を裸にして、皆の前で恥をかかせた罰を受けてもらうでえ~」
「え~?! 今はちょっとなあ。もう少し後にしてもらえへんやろか?」
「アカン! 駄目やで。今すぐでないとなあああっ」
カヤタニは後ろからダケヤマのブリーフのウエストを引っ張ると、中に活きのいいゴキブリを落とし込んでパチンと締めた。
「…………?! オイ! カヤタニ! 俺のケツに何入れたねん?!」
パンツの中の異常事態をいち早く察知したダケヤマではあるが、もう手遅れだ。
「なっ、何やコレ?!」
彼が焦れば焦るほど、黒い虫は敏捷性を増して尻の上をくまなく移動し、触角をフリフリした。
「うわあああ~っ!!」
その気持ち悪さ、くすぐったさ、僅かな快感に刺激されてダケヤマは悶絶しながら奇妙な動作を始める。
「わはは! 踊れ、踊れ~、ダケヤマあああっ!」
ゴキブリは狭い場所が大好きで、そのためか平べったい形をしている。
そして太古から姿を変えていないという昆虫は、ついに見付けてしまった。
ダケヤマの尻の割れ目を。
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ~っ!! そっそこは……ら、らめえええええええええええええええええええええええええええええええええ~っ!!」




