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第十八段、『餓鬼』

 薬草採取を終えたアウルはその足で餓鬼ゴブリン討伐任務に来ていた。餓鬼という種族は薄暗い森や洞窟を好む習性があり、アウルはそれを頼りに餓鬼がいそうな場所を魔力探知で探る。


 シズは隣でアウルが何かしているとしか分からず魔力探知の知識はなかった。元々魔力探知という魔法は無属性に分類され、魔法を覚えるときの初歩的なものでそこまで鍛えている人間などいない。


 そもそも体内にある魔力を探知する魔法をこんな形で外へ放出し何かを探すなんて方法は常識から外れており知っているはずがない。


 どんな魔法でも応用次第で利用価値のあるものになる。これは生前ユリアがアウルに教えたことの一つで大昔の人たちはそう言う風に狩りをやっていたと教わったことがあった。


 探すこと数分。


 アウルは餓鬼の巣窟を発見すると同時にシズに誰が襲われている可能性があることを示唆した。


「なんだって!」


「可能性があるだけ……餓鬼の反応とは別に人間のような反応がある。罠の可能性もある」


「それでも!!」


 シズは餓鬼の巣窟に躊躇うことになく侵入した。


「……仕方ない」


 アウルは冷めた口調でシズの後を追って餓鬼の巣窟に侵入するとそこで見た光景はあまりにも悲惨なものだった。


 死体から発せられている腐敗臭や、何とも言えない匂いが漂っており中には冒険者らしき女性とそこの近くで横たわっている男の死体があった。


「ひっ!」


 餓鬼に装備という装備を全て奪われ抵抗することが出来なくなっている女性で遊ぶ餓鬼たちにシズは剣を抜き攻撃する。


「ガギギギ」


「くっ……餓鬼……違う。これは」


 そこにいたのは餓鬼種の武器を使った攻撃を得意とするゴブリンソルジャーと呼ばれる餓鬼の上位種にあたる種だった。


 餓鬼も単体ではFランクと大して強くはないが、その上位種であるゴブリンソルジャーは単体でDもくしはCになる。それが視界に入るだけで十に届くかはいる。


 良くてCランクの依頼に下手をしたらBランクまで跳ね上がる。シズは恐怖に支配される。


「……」


 アウルは特に攻撃するわけでもなく刀の鍔にトントンを指で触れ、リズムを取る。


 ───コルトハード流剣術、椿姫。


 アウルは鍔を弾き音を出す。その音は常人には聞こえず魔力保有度が一定以上の物に対してのみ効果を有する拘束術。


 アウルは餓鬼の動きを封じると、刀から手を放し外套の中にある短剣を手に取ると短剣に魔力を込める。


 ───コルトハード流剣術、爆。


 短剣をゴブリンソルジャーに向けて投擲。動けなくっているゴブリンソルジャーはただの的に過ぎず、アウルの攻撃に成す術もなくアウルによって命を奪われる。


「呆気ないな」


 アウルはつまらなそうに投げた短剣を回収する。その様子にシズは唖然とする。


「どうした?まだ敵はいるぞ」


「それは魔法なのか?」


「いや、純粋な剣術だ」


 アウルは短剣を器用に回すと目の前にいるゴブリンソルジャーに対し威嚇する。単に剣を向けただけで何とかなるはずもないが、アウルはシズに指示を出す。


「……その人を連れてここから脱出しろ」


「待て!」


「こいつらを殲滅してから行くから。それに俺の魔法は広範囲殲滅魔法」


 広範囲殲滅魔法は軍の条約で使用を制限されているのにシズは気付いたが争っている場合でもなく、シズは女性を救助して脱出する。

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