第十段、『禁忌魔法』
「……断罪のロザリオ」
少年がそう呟くと無数の棺桶が出現し、盗賊を一人一人棺桶の中に拘束していく。
「断罪のロザリオ……攻撃形態、モード【鋼鉄処女】」
「何だ……この魔法は」
盗賊の誰かが少年の発動した地獄を見て、そう言った。その光景はあまりにも子供に見せられるものではなく、現に少年の後方にいる女性は自身の子供の目を覆っている。
「……答える義理はない。一つだけ教えておいてやるとすれば、これは禁忌魔法」
まだ生き残っている盗賊はそれを聞いて青ざめるが、正直少年にはそんなことどうでもよかった。少年にとって盗賊を殺すこと、人間を殺すことは大した問題ではなく、大切なものを奪った、ただの敵という認識でしかなかった。
敵は殺す。それがここ数か月で少年が学んだことでもあった。
「……その年での禁忌魔法。お前は一体何を犠牲にしているんだ」
禁忌魔法というのは名前の通り、あまりにも非道な実験や効力からその使用を禁止された忌み嫌われた魔法の総称であり、本来使用する人間は何かしらの代償を払わないといけない。
「バッツ。そいつはお前に任せる……前回見たいに遊んで負けそうになるなよ」
「分かっている。それに今回は遊んでいる余裕はなさそうだ……。禁忌魔法を平然と使用する人間を人間だとは思わないさ。化け物を狩るのに手加減なんてことは出来ない」
それを聞いた少年は不敵に笑う。
「本気で来い。お前がユリアさんを殺したというのであればお前にはここで死んでもらわないと困る」
少年は後ろに控えている人間なぞお構いなしに少年は、左腕を摩るような動作をする。少年が思考を行う癖であり同時にこの行動を行った少年は全てを最適化して行動できる。
余分な感情も全て、戦闘に邪魔になるものを全て削ぎ取ることのできる術。
「……自律行動」
◇◇◇◇
「ローラと同じ年で……何を犠牲にして生きればあんなことが出来るの」
ローラの母親は魔法を行使する少年の姿を見て、畏怖の感情を抱く。
「……怖いの」
「怖いわ。盗賊よりもずっと……彼の人生がどんなに壮絶なものだったかは分からないけれど、ただ壮絶なだけでは罪悪感もなしに同族を殺すことは出来ない」
ローラには母の言っていることが理解出来なかった。もちろん人間を殺したことがないということもあるが、それ以上にローラは母が何故自分たちを助けてくれている人間に対し、恐怖を抱いているのかが理解できなかった。
ローラは自分を守護する結界内で結界の外で戦う少年に目を向け、少年がウッドと呼ばれる男の心臓を握りつぶしているところを見た。
「……泣いているの?」
心臓を握りつぶした際に大量の返り血で少年の顔は赤く染まっていてよく見えないがローラには彼が泣いているように見えた。
自分よりも強い彼が何故泣いているように見えたのかローラは不思議に思った。
それから数十分すると、少年はローラたち親子に掛けた結界を解いた。
「ありがとう」
ローラは助けてくれてありがとうと少年の目を見て言った。
◇◇◇◇
「ありがとう」
少年……アウルは自分が何故お礼を言われているのか、そして何故自分は血まれなのか、状況を理解するのに少し時間を要した。
今がどういう状況なのか理解すると、
「……使わないようにしてはいたけど」
アウルは自分が禁忌魔法を使用して、盗賊団を殲滅したことを知ると反省の色を示す。その様子を見ていた少女の母親が困惑したような様子を見せる。
「困惑しても可笑しくはない……ん?」
アウルは周囲に敵が残っていないか調べるために、索敵すると一つの反応があった。




