第332話『絆』
桜香が行ったのは魔力の集中、というのは魔導における基本的な技術である。
意識を集中させた部分に力を凝縮して、必要な力を捻出する技術。
別段、桜香だけに許された技ではなく、それこそ健輔や優香だけでなく瑞穂や大輔のような一般的な魔導師でも使っている技術だった。
基本的な技術であり、同時に奥義でもある技術。
ごく自然と披露された技は健輔との差を如実に見せ付ける。
『漆黒』の魔力の性質と相まって、まさしく魔導師殺しの力となっていた。
額に浮かぶ汗を自覚しながら、焦りも露わに健輔は陽炎に問いかける。
「魔力の性質も洒落にならんが、あれはありえんだろう! クソ、陽炎、探知の方は?」
『無理です。おそらくですが、こちらの抵抗力も無視して体の中に叩き込むことも出来るでしょう。それをしないのは……』
「目的がある、からか……」
優香と桜香の戦いを見ながら、健輔は必死に考える。
後衛として戦闘を行うことで多少の余裕が生まれた。
貴重な時間で、なんとかする方法が思いつかねば、この戦いの末路は目に見えている。
「桜香さんは、何をしようと……」
頭はかつてないほど高速で回転している。
しているが、ここまでの戦いのように都合の良い解決策は降りてこない。
それもそうだろう。
健輔にとって、この戦いは初めての経験ばかりの戦いだった。
――いや、正確には世界大会の中盤から健輔はらしくないことばかりをしている。
彼にもほんの少しだが、自覚はあった。
「……何をしようとしている、か。それは……俺の方の話か」
違和感は最初から、より言うならばこの試合の前から彼の心の中にあった。
ヴァルキュリア戦で決定的に外れて、パーマネンス戦で晒してしまった心の動き。
そもそもの大前提として、佐藤健輔はこのような状況で敵と相対する魔導師だっただろうか。
健輔の役割はエースキラーである。
能力的に有用であろうと、中盤で使い切る方法が最も賢い使い方のはずだった。
事実、シューティングスターズとの戦いではまだ己の役割に徹することが出来ている。
健輔の戦い方は現実を積み重ねたものであり、桜香や優香のように都合の良い覚醒は存在しない。
言い方は悪いが輝く才能に、天に愛されている桜香や優香とはそもそものタイプが違う。
皇帝のように愚直に積み重ねた道でもなく、小細工に小細工を重ねるのが彼の在り方なのだ。
悪いことではない。事実、健輔はそのやり方で国内では桜香を仕留めた。
フィーネとの戦い、ヴァルキュリア戦においても自らの仕事を完遂し、彼女の矜持を突く形での勝利とはいえ、確かに勝利を勝ち取っていた。
『マスター?』
「……待っている。桜香さんは……いや、俺はそもそも――どうして、こんな戦いを……」
道を外れた時、決定的に選択を違えたのは間違いなくパーマネンス戦である。
自分が最後に決着を付ける形での戦いなど、彼の領分からはみ出すレベルの話ではない。
しかも、優香を排除するというおまけ付きである。
なるほど、確かに優香の能力は皇帝と比べれば矮小であろう。
しかし、健輔とは比較にならないし、より言うならば圭吾も同様である。
彼女を外して、わざわざ入れるための理由が弱い。
桜香に能力を隠すなど、そもそも隠したところで大して機能などしないだろうし、実際にしなかった。
健輔は、それら全てを分かった上で、優香や真由美に提案を行ったのだ。
真由美が何故それを受け入れたのか、優香が受け入れたのかはわからないが、健輔はあの戦いを背負い、そして当たり前のように負けそうになった。
奇跡で勝ちを拾ったが、あれはそれまでの健輔にはあり得ない戦いである。
負けるかもしれない戦いを、自分の可能性で切り拓くのは、エースキラーではなくエースの仕事だった。
――そう、健輔は自分の能力を弁えて、堅実に積み重ねた道を、気が付いた時には己の意思で外れてしまったのである。
「そうか……。桜香さんに、苛々したのは、あの人の在り方が……」
――健輔の考える、エースの在り方なのだ。
怒りを抱くのも当然だろう。
佐藤健輔は徹頭徹尾、どこにでも転がっている男子高校生なのだ。
大いにみっともないことだが、一言で言えば『嫉妬』だった。
自分の大好きなことで、1番やりたいことをしている人間に、ただ嫉妬していただけの単純な話である。
「く、クク、くはははっ、は、はは……! 単純だな、俺って奴は! そして――」
気付いてしまえば、何やらよくわからない熱でここまで来た理由がよくわかる。
舞い上がっていたのだ。
自分が憧れる魔導師たちと、同じ視線で会話したような気分になるのが。
無論、健輔はアホであるからこそ、そんな裏の想いなど関係なく戦ってきた。
戦ってきたが、やはり似合わないことはするべきではなかったのだ。
行動の端々に、エースに――主役になりたがる心の動きが現れている。
桜香が1人のエースとして、君臨するのも当然だろう。
誰よりも健輔を見つめていたからこそ、同時に近くにいなかったからこそ、彼の心の動きに気付いた。
「俺に勝つ、か。……そっか、あなたはそういうやり方で、俺を認めてくれたのか」
だからこそ、桜香は敵として健輔の前に立ち塞がる。
エースに成りたがっている後輩の前に、かつての健輔の敗れた者として、かつて以上の力で超えられない壁となってくれたのだ。
それは桜香自身のためであり、同時にチームのためであり、健輔のためであり、優香のためでもあった。
不器用な彼女なりの、解答がそれだったのだ。
この試合を通して、桜香はただ強い王者としての在り方を見せている。
皇帝がその背中で魔導を牽引したように、彼女は彼女の在り方で頂点としての全ての魔導師を照らす。
そうやって、循環することで魔導はここまで来たのだ。
きっと、クリストファーや、フィーネも誰かから託されたモノを次に託している。
「自覚が随分と遅かったが、俺もしっかりとやらないとな」
笑みは今までの無理矢理引き出した好戦的な笑みではない。
戦いは好きだが、それは相手を叩き潰すからではなく、相手と高め合うからである。
命を賭けずに、誇りを賭ける闘争。
格好をつけたがる者ばかりが揃った競技、そんな競技に健輔は惚れたのだ。
これからエースになろうと、今までの道を捨てる大バカとしては、せめて外見くらいはらしくしたかった。
いろいろと気付いたことはあるが、現実は何も変わっていないのだ。
心持ち1つで変わるのは、周囲の風景程度である。
その程度でも何もないよりはマシとはいえ、油断などは出来ないのだ。
油断という贅沢は出来なくとも、浮かれるという失態は普通に起こしていた身である。
この戦いは、真由美に――チームだけでなく、多くの人に託されたものなのだ。
はい、厳しいです、と勝利を諦める訳にはいかない。
「よし、気合が入った!」
頬を自分で思いっきり叩くと痛みで目が覚める。
モヤモヤとしたものは、もう心の中にはない。
自覚した。憧れた。やりたいと思った。
理由はなんでもいいが、どうやら健輔は仕事人では満足できないらしい。
道を切り拓き、背中で誰かに付いて来い、とそう言えるような人間になりたいようだった。
真由美のように――敵だった多くの魔導師たちのように、なりたいのだ。
「やるしかない! いや、最初から選択肢なんてなかったな! 勝てばいいッ!」
『なんだが、マスター、明るくなりましたね』
「空元気も、元気ってな! 暗くなる必要もないだろうさ! あんな凄い奴に勝てれば、きっと楽しいぞ!」
口から飛び出すのは変わらぬ言葉。
それでも、相棒である陽炎だけは僅かな変化を感じていた。
機械故に、まだ人の機微を全ては理解していない。
理解はしていないが、それで見えるものも世の中には存在していた。
『迷いが晴れましたか? いいえ、違いますね。決まりましたか?』
「――おうよ! 俺は、エースになる! 誰もが、認めるような、立派なエースにな!」
頭に過るのはここまで全ての戦いと、1年間の魔導師としての日々だった。
記憶の中には拭えない悔しさもあるし、泣きたくなるほど情けない日も確かに存在している。
100点とは言い難い日々――それでも健輔は楽しかった。
真剣に物事に打ち込んだことがなかったからこそ、子どものように無邪気な心でこの競技を全力で遊んだのだ。
『では、ご随意に。あなたの願望をお手伝いするのが、私の生まれた理由です』
「ああ、勿論な!」
自分の心について理解して、桜香の心を想い、優香の献身に支えられた。
全てを正確に理解している。
その上で、このまま戦っても勝てないこともなんとなくだが、理解してしまった。
準備はほとんどない。
当然だろう、エースとは不利な状況でも必ず覆すもの。
入念な準備を行い、相手を嵌める者ではない。
健輔に向いているのは、後者であり、前者ではないのだ。
未知の戦場で、どうやれば最強の敵を倒せるのか。
そんなものは事前に考えることであり、今、戦いながら考えることがではない。
エースとして戦いなど、健輔には何もわからない。
わからないから、健輔は自分らしく――少なくとも、この1年、そう在れるように心掛けてきたことに全てを託すことにした。
「悪いな、陽炎。アホな主に最後まで付き合ってくれ!」
もし、『彼女』に表情を作る機能があれば、呆れたように溜息を吐いて、それから笑ったのだろうか。
『今更です。何より、マスター風に言うなら、私に降りる、などいう選択肢はないです』
「ははっ、なるほど、違いない! 似た者主従だな」
『それも、今更ですよ』
心強い相棒を握りしめて、健輔は今までの自分に感謝を告げる。
「サンキュー、今までの俺たちよ。でも、悪いな。俺はバカだから」
確実に大成する道よりも、もっと困難な道の方が良いのだ。
陳腐な言い方だが、弱いと言ってきた自分を卒業する。
弱さを言い訳にして、生き残ることを諦めるのはもう選べない。
倒した魔導師たちの分まで、強い魔導師として健輔はエースになる。
「陽炎!」
『トランスモードを破棄。フュージョンモードに移行します』
よく言えば、合理的に。
悪く言うならば、臆病に。
安全が確認された中での無茶。
そんなものは無茶とは言わないだろう。
本番で、練習以上の力を発揮しようとしないのは、賢い選択だが同時に堅実でしかなかった。
飛び切りのバカが揃っているのが、魔導の最上位である。
ならば、健輔も飛び切りのバカになるしかない。
実力を遥かに超えた領域に手を伸ばすぐらいは、やってみせる必要があった。
彼に足りないのは、気構えではなく純然たる実力である。
地力で桜香に喰らい付く、ぐらいのものは持ってしかるべきだった。
「待たせたな!」
『御覚悟を、不滅の太陽』
優香との連携を放棄しての猪突。
突然の前衛の復帰は、傍から見れば狂気の行動だった。
正気とは思えない、意味のない攻撃。
常識で判断すればそれは間違っていない。
――ならば、それを満面の笑みで受け止める方は何と言うべきだろうか。
「――ふふ、ああ、嬉しいです。私は、そうまでして倒したい存在ですか?」
「勿論だ! そうさ、いつまでも俺は弱くない! 俺を倒したいと思う奴のためにも、弱いままではいられない!」
「そうです。私はあなたを研究しました。全部、全部、何もかも見たつもりです。分析して、最善のタイミングで自分を捨てる。確かにその戦法は強いでしょう。時に格上のエースさえも倒す可能性があります。でも――」
――同時にそれはエースの戦い方ではない。
己のチームの部品と割り切っているからこその潔さがそこにある。
健輔が弱かったころならば、その選択肢は仕方がないだろう。
何をやろうにも、実行するための力がないのだ。
それを補おうと思えば、その場にあるものを全て活用するしかなかった。
「――それも、ここで終わりです。あなたは強くなった。白い輝きで多くの者を惹きつけた!」
「だからこそ、俺には責任がある! 華麗である必要も、圧倒的である必要もないが、1つだけは認めるべきだ!」
漆黒の斬撃が空間を塗りつぶしながら迫る。
圧倒的な力で問いかける桜香の刃。
下らぬ答えならば、ここで終わらせるという気迫が籠められていた。
桜香の催促に健輔は笑みを浮かべた。
懐が深く、穏やかにように見えてその実、彼女は苛烈な性を隠している。
傍らで無言で剣を振るう相棒とは、本当に似てないようで、似ている姉妹だった。
返礼するように、健輔は真紅と、白と『蒼』の斬撃を送り返す。
返事は丁寧に、しかし、情熱的に行うべきだろう。
「俺は――」
「あなたは――」
桜香と健輔の声が重なる。
『強い!』
格下の如き振る舞いで戦うことはもうやめよう。
常に自分に言い聞かせてきた、己は弱いという言い訳もいい加減にやめるべきだった。
機を見つければ自爆も辞さない。
この覚悟も悪くはないが、そろそろ自覚を持つべきである。
佐藤健輔は、クォークオブフェイトの次の柱なのだ。
真由美が去り、葵が立つ。
新たなリーダーを支える大切な柱の1つは、間違いなく健輔なのである。
気軽な1年生はもう終わり、必然として変化は訪れて、健輔は生き残る戦いを――エースの戦いをしないといけない。
心構えを含めて、真実、対等の相手として健輔が前に立ち塞がるのを桜香は待っていたのだ。
「いきますッ!」
籠められた気迫は静かだが強い。
桜香の強さ。
かつて彼女が国内で最強と呼ばれたのは単純な1つの動作が圧倒的だったからだ。
今の桜香は健輔を参考にした多様性によって、かつてのようなわかりやすい強さは幾分減じている。
何かを得るために、何かを失う必要があった。
桜香もこの原則からは外れていない。
真実、エースとして、国内――いや、世界最強の魔導師に相応しい存在になるために、桜香はかつての自分を捨てて、新しい道を選んだ。
力は落ちても、その気高さは以前とは比べ物にならない。
熱が無かった以前よりも、今の桜香は遥かに手強く、同時にしぶとい存在だった。
「はは、急場しのぎじゃ、限界があるか!」
真由美の強さをそのままに万能性を使おうとしたが、話は簡単には進まない。
本来ならば、健輔がその領域に辿り着くのは先の話なのである。
こうして桜香と撃ち合っているだけでも奇跡なのは忘れてはいけない。
何より、真由美のパワーを借りても『漆黒』の魔力の性質はどうにも出来ないのだ。
ステージで負けている以上、素直に正面から戦っても負ける。
この原則からは逃れられない。
皇帝との戦いに勝利したのは、ラッキーヒットに過ぎず、王者の懐の深さがあっての勝利である。
桜香にそれに期待することは出来ない。
彼女は勝利に餓えている。
健輔に勝利して、初めて飢えを満たせる彼女は王者であると同時に挑戦者なのだ。
姿勢にも差は存在しない。
「ウオオオおッ!」
「はあああああッ!」
漆黒が、白と真紅を叩き潰す。
クォークオブフェイトを象徴する色が手も足も出ない。
この戦いが、仮に健輔だけであれば決着はここで付いていた。
エースとして、チームを背負う者として、自分で敗北も勝利も引き受ける覚悟をした以上は、その果てにある結末を受け止める義務がある。
――健輔が自分で戦うことを選んだ時、この結末は定まっていた。
事実として、健輔の独力では絶対に桜香には勝てない。
エースの道は、まだ健輔の道にはなっていない。
敵として、同じ道を先行して進んでいる桜香に勝てるだけの要素など存在していなかった。
必定の運命を覆すためには、外からの要因が必要となる。
この場で、それを満たすのただ1人。
戦いの主役を奪われた形になるが、穏やかに健輔を見つめる彼女だけである。
「……やっぱり、健輔さんはそちらの方がお似合いですよ」
真由美が、葵が託して去った。
それはきっと、2人も健輔のことを信じていたからだろう。
もしくは、健輔ならば仮に負けても仕方ないと思えるからかもしれない。
あれだけ我武者羅に全力でやって、届かないのならば、それはきっと仕方がないと思える。
次に、頑張ろうと奮起することが出来るだろう。
他ならぬ、彼女がそんな健輔の姿が大好きだった。
「私は、姉さんに成りたかった。でも、今は違います」
姉のように1人で強くある姿に憧れないと言えば、それは嘘になる。
優香はあの姿が魂に焼き付き、能力になってしまうほどに焦がれたのだ。
健輔よりも桜香に対する想いは強い。
桜香に憧れる彼女も間違いなく彼女だった。
しかし、
「――健輔さんと、一緒にいるのはとても楽しかったから」
それ以上に大切なものが今の彼女にはある。
焦がれる心に焼き尽くされるよりも、必死に前進する背中を支えたい、と彼女は強く思ったのだ。
優香よりもその身に力はなく、才能も存在していない。
それでも、懸命に走り続けて肩を並べる場所にまで来たのだ。
きっと、それは小さくとも奇跡であろう。
あの日、健輔が桜香を倒した時から彼女の心は隣を走る少年を見続けている。
「……それが、あなたの選択ならば」
――私はそれを支える翼となろう。
想いは言葉にせず、魔力に乗せる。
健輔が届かぬと言うならば、翼を与えればよいのだ。
優香にはそれを成せる能力がある。
同じステージにさえいけば、後は正真正銘、正面からの決着しかなかった。
「雪風、いいですね」
『……ふ、不服ですよ! でも、マスターが望むなら……そうします』
「ありがとう。……ごめんね、不出来なマスターで」
『そんなことないです! そもそも、マスターに任せるって言ったのに、あいつが出しゃばるから!』
雪風の言うことには一理ある。
燃え尽きただの、桜香の相手は優香だの、始まる前はいろいろ言っていた男は最後は自分で戦いに行ってしまった。
投げっぱなしよりもある意味でたちが悪い。
それでも、優香に恨む気持ちなど欠片も存在いていなかった。
この行動の裏に、確かに優香を想う気持ちがあるのだから。
「あなたにも、その内わかりますよ。殿方というものは素直じゃないから、理由が必要なんです。その理由が、私だと言うならば……それは、嬉しいです」
穏やかな表情で、目を閉じる。
優香に任せる道もあったのだ。
健輔が衝動でエースの道を選んだ理由には、間違いなく優香に敗北の責任を負わせないというものがある。
敗北まで含めてエースの責任だと、きっと嘯くだろう姿が彼女には簡単に想像することが出来た。
男の気持ちを想い、彼女は彼の翼をイメージする。
心の中にあるのは、桜香に負けない輝き。
白い輝きを1番近くで見続けた彼女に、それをイメージするのは容易だった。
彼女にとって、健輔は最初から空を駆ける英雄だったのだから。
「術式、発動」
『イマジネーション・バースト』
健輔に捧げる乙女の献身。
蒼い力が周囲に弾け、黒い残光を取り込み、彼女も天に還る。
健輔が扱えるように、遥かな高みに至れるように、優香だけが出来る方法で彼女は試合に貢献した。
それは奇しくも、健輔が決別した在り方と同じものだった。
『蒼』の力を受けて、『真紅』と『白』は『純白』へと生まれ変わる。
チーム全てを束ねても届かなかったが、健輔のためだけに用意された力が彼を遥かな高みに誘う。
ついに、次のステージにいる魔導師がぶつかり合う時が来た。
両者の行動は素早く、一切の齟齬はない。
開幕は絢爛に、最後の戦いを彩るに相応しいお互いの最大の術式を以って、ド派手に告げられるのだった。




